【子どもの発達障害】「障害者手帳」で変わる「もらえるお金・減らせる支出」 取得方法を専門家がわかりやすく解説
発達障害「もらえるお金・減らせる支出」①~基礎知識編~
2025.02.03
診断書が必要 医師に困りごとを正しく理解してもらおう
──手帳を取るにはどうすればいいのですか?
青木教授:一番最初のポイントは「診断書」です。「障害者手帳」の申請には医師(主に精神科医)の診断書が必要になります。
手帳の審査は、医師の「診断書」を判定の資料としているため、とても重要です。
──診断書を書いてもらうときに気を付けるべきことはありますか?
青木教授:医師に適切な診断書を書いてもらうためには、「普段からきちんと診察を受けておく」「こまめに医師へ症状を伝える」ことの2つが大切です。
どれほどの名医であっても知らない患者の診断書は書けませんし、短時間の診察だけで患者の困りごとがすべて分かるわけではありません。ですから、継続して診察を受けて、その都度ていねいに症状を伝えることが重要なのです。
青木教授:発達障害は、見た目からは障害が伝わりにくいので、「調子が良い・悪い」などの大雑把な伝え方では不十分です。
たとえば、「日中はずっと頭が重い」「料理の手順を思い出せない」「お風呂に入る気力がない」など、生活場面での困りごとを具体的に伝えることが欠かせません。
また、もらった診断書は封を切って読んでも大丈夫です。ぜひ、提出前に読んでコピーを取っておくことをお勧めします。
何らかの事情でその後に診断書が必要になったとき、コピーが役立つことがあります。自分の病状を把握するためにも、私は診断書を確認することを勧めています。
所得控除で節税! 支援は原則「申請主義」
──減らせる支出(所得控除など)や、もらえるお金(各種手当)の例を教えてください。
青木教授:所得控除とは、収入から控除分の金額を引くことで、税金が安くなる仕組みです。「障害者控除」や「基礎控除」「扶養控除」「医療費控除」などがあり、申告することで税金が安くなるので、ぜひ忘れずに手続きをしてください。
青木教授:一方で手当の代表例としては、家族がもらえる「特別児童扶養手当」や本人がもらえる「障害児福祉手当(20歳未満の子)」「特別障害者手当(20歳以上で在宅の人)」などがあります。
これらは国から支給される手当ですが、これ以外にも自治体が独自に手当を支給していることもあります。
自治体によってさまざまなので、「子どもが障害者手帳を持っています。申請できる手当を教えてください」と直接、問い合わせるのが確実です。
どの支援についても言えることですが、さまざまな支援は原則として「申請主義」です。つまり、本人または家族が「使いたい」と申し出なければ使えません。
待っていても経済的支援は始まらないことは、ぜひとも知っておいてください。
──手帳を取ることに対して、心理的なハードルを感じる人も多そうです。
青木教授:確かに昔よりは減りましたが、障害を受け入れることができずに手帳の取得をためらう人は今でも少なくありません。しかし、手帳はある意味で「道具」ですから、取得しておいて必要な支援だけを活用すればいいと私は考えています。
ママやパパにとって重要なことは「子どもに障害があるかどうか」ではありません。そうではなく、障害があってもなくても「子どもが楽しそうに生きているかどうか」です。
さまざまな支援が、発達障害の子どもの生きづらさを解消し、安心して社会で暮らせる手助けになるならば、迷っている人はぜひとも取得を検討してほしいと思います。
──まとめ──
発達障害の人を支えるための、さまざまな経済的支援があります。こうした支援を使うことは、生きづらさを解消して自立した社会生活を送るために、心強い味方になります。
青木聖久教授に教えていただく【発達障害の子どもと家族が「もらえるお金」と「減らせる支出」】連載は全3回。次の第2回では、発達障害の人が直面する、医療費の負担を軽くするための制度について紹介します。最後の第3回では「障害年金」についてお聞きします。
本書では精神疾患・発達障害を抱えつつもがんばって生きている22歳くらいまでの子とその家族なら受けられる可能性のある経済的支援制度の「仕組み」や「申請方法」を紹介します。
当事者だけでなく、ソーシャルワーカー、相談員、支援員、そして医療従事者など、支援者として関わる方々にもおすすめです!
〈本書で紹介する制度〉
●障害者手帳
●特別扶養手当
児童扶養手当
障害児福祉手当
特別障害者手当
自治体が独自に支給する手当
●障害者扶養共済制度
●障害年金
●高額療養費制度
子ども医療費助成
自立支援医療(精神通院医療)
自治体が独自に行っている医療費助成
●生活保護制度
横井 かずえ
医薬専門新聞『薬事日報社』で記者として13年間、医療現場や厚生労働省、日本医師会などを取材して歩く。2013年に独立。 現在は、フリーランスの医療ライターとして医師・看護師向け雑誌やウェブサイトから、一般向け健康記事まで、幅広く執筆。取材してきた医師、看護師、薬剤師は500人以上に上る。 共著:『在宅死のすすめ方 完全版 終末期医療の専門家22人に聞いてわかった痛くない、後悔しない最期』(世界文化社) URL: https://iryowriter.com/ Twitter:@yokoik2
医薬専門新聞『薬事日報社』で記者として13年間、医療現場や厚生労働省、日本医師会などを取材して歩く。2013年に独立。 現在は、フリーランスの医療ライターとして医師・看護師向け雑誌やウェブサイトから、一般向け健康記事まで、幅広く執筆。取材してきた医師、看護師、薬剤師は500人以上に上る。 共著:『在宅死のすすめ方 完全版 終末期医療の専門家22人に聞いてわかった痛くない、後悔しない最期』(世界文化社) URL: https://iryowriter.com/ Twitter:@yokoik2
青木 聖久
1965年、兵庫県淡路島生まれ。日本福祉大学社会福祉学部を卒業(1988年)後、精神保健福祉分野のソーシャルワーカーとして、精神科病院で約14年間勤務。その後、兵庫県内の小規模作業所の所長として、4年間勤務。2006年より現任校。その傍ら社会人学生として、2004年に京都府立大学大学院福祉社会学研究科修士課程修了、2012年に龍谷大学大学院社会学研究科博士後期課程修了。 【社会的活動】 全国精神保健福祉会連合会(家族会)理事、日本精神保健福祉学会理事。2015年2月から2016年2月まで、厚生労働省年金局「精神・知的障害に係る障害年金の認定の地域差に関する専門家検討会」の委員、2015年4月から2016年3月まで、兵庫県健康福祉部「兵庫県精神保健医療体制検討委員会」の委員、2019年11月~、愛知県一宮市「一宮市障害者基本計画等策定委員会」委員(委員長)等。 【著書】 ・単著 『発達障害・精神疾患がある子とその家族が もらえるお金・減らせる支出』講談社(2024年) ・監修 『すだちとともに』世音社(2023年) ・編著 『精神・発達障害がある人の経済的支援ガイドブック』中央法規出版(2022年) ・単著 『おかあちゃん、こんな僕やけど、産んでくれてありがとう ~精神障がいがある人の家族15の軌跡』 ペンコム(2022年) ・監修/解説 『障害のある人の支援の現場探訪記』学研教育みらい(2021年) ・共編著 『現代版 社会人のための精神保健福祉士』学文社(2020年) ・単著 『追体験 霧晴れる時 ~今及び未来を生きる精神障がいのある人の家族15のモノガタリ』ペンコム(2019年) ・単著 『第3版 精神保健福祉士の魅力と可能性』やどかり出版(2015年) ・単著 『精神障害者の生活支援』法律文化社(2013年)、ほか
1965年、兵庫県淡路島生まれ。日本福祉大学社会福祉学部を卒業(1988年)後、精神保健福祉分野のソーシャルワーカーとして、精神科病院で約14年間勤務。その後、兵庫県内の小規模作業所の所長として、4年間勤務。2006年より現任校。その傍ら社会人学生として、2004年に京都府立大学大学院福祉社会学研究科修士課程修了、2012年に龍谷大学大学院社会学研究科博士後期課程修了。 【社会的活動】 全国精神保健福祉会連合会(家族会)理事、日本精神保健福祉学会理事。2015年2月から2016年2月まで、厚生労働省年金局「精神・知的障害に係る障害年金の認定の地域差に関する専門家検討会」の委員、2015年4月から2016年3月まで、兵庫県健康福祉部「兵庫県精神保健医療体制検討委員会」の委員、2019年11月~、愛知県一宮市「一宮市障害者基本計画等策定委員会」委員(委員長)等。 【著書】 ・単著 『発達障害・精神疾患がある子とその家族が もらえるお金・減らせる支出』講談社(2024年) ・監修 『すだちとともに』世音社(2023年) ・編著 『精神・発達障害がある人の経済的支援ガイドブック』中央法規出版(2022年) ・単著 『おかあちゃん、こんな僕やけど、産んでくれてありがとう ~精神障がいがある人の家族15の軌跡』 ペンコム(2022年) ・監修/解説 『障害のある人の支援の現場探訪記』学研教育みらい(2021年) ・共編著 『現代版 社会人のための精神保健福祉士』学文社(2020年) ・単著 『追体験 霧晴れる時 ~今及び未来を生きる精神障がいのある人の家族15のモノガタリ』ペンコム(2019年) ・単著 『第3版 精神保健福祉士の魅力と可能性』やどかり出版(2015年) ・単著 『精神障害者の生活支援』法律文化社(2013年)、ほか