トイレットラーニング環境の整え方
次に環境の整え方についてお伝えします。
最初はぜひおまるを使って下さい。モンテッソーリ園では必ずおまるを使います。その理由は2つあります。
ひとつは足が床につくことが重要であること、もうひとつは、子どもが自分のしたいときにひとりでできるようにするためです。
後始末が楽という大人にとっての利便性を優先する補助便座では、ひとりで上るのが大変だったり、間に合わなかったりして、うまくいかない原因になることが多いのです。
また、大人のトイレでは踏ん張り切れないことが多く、おしっこはともかく、うんちがしにくいのです。
特に男の子の場合は、おしっこができるようになっても、うんちだけがなかなかできないことがよくあります。
補助便座を使う場合には、踏み台なども併用するといいでしょう。
おまるはトイレの中ではなく、生活している場所に置きましょう。「したくなったら、ここでしていいよ」と気軽な場所として準備できるからよいのです。
トイレは、幼い子どもにとっては、大きく重いドアで隔たっていますし、大人のようにすっと歩いていける場所ではないということを理解してあげて下さい。できるようになれば、トイレで補助便座を使う方法に移行しても構いません。
おまるのほかにも準備しておいた方がいいものが3つあります。
①汚れたパンツを入れる容器
バケツでもポットタイプでも構いませんが、蓋つきで子どもが自分で開閉できるものであることが大切です。
②腰かけられる椅子やベンチ
座面が床から15cmから17cmくらいが、一番子どもが座りやすい高さです。
写真は立派なベンチですが、ご家庭でしたら、牛乳パックなどで作っても構いません。中に新聞紙詰め込むとかなりの強度になります。それをいくつも作りテープで貼り合わせて上に座布団などを固定してあげれば、適当なサイズのものが簡単にできます。
③きれいなパンツが入っている籠
蓋付きや引き出しではなく、子どもにも見えるように自分で取れるようにしておくことが大切です。足りなくならないよう、多めに入れておきましょう。
また前後を間違えないよう、子どもにわかるような印を付けておくといいですね。
写真にはありませんが、床の状況によっては、ビニールシートを敷いておいたほうが安心できます。
子どもが自分で感覚を学ぶ余裕
環境を整えたら、子どもの様子を見ながら誘いましょう。
よく観察していると、もじもじしたり、顔が赤くなってきたりして、排泄のタイミングがわかるようになります。出た記録を取っておくと、だんだん良いタイミングがわかってきます。
大人はどうしても漏らされるのが嫌で、過剰にトイレに誘ってしまう傾向があります。
もちろん最初は声かけして連れて行きますが、いつも声かけしていると、子どもは不安になってしまいます。
また、漏らした時にも「してない」と言い張るようになりますから、子どもが自分で感覚を学ぶ余裕を与えてあげてください。
誘っても「いかない」「ない」という子どもは無理強いしないでください。「今度行きたくなったら教えてね」と言っておきましょう。
その結果、間に合わなくなって漏らしたときも、大人は往々にして「ほら、だから言ったでしょう」とか「今度は早めにいくのよ」などと言ってしまいがちです。
でも、それを本人が自覚することが学びですので、余計なことは言わずに「出たね」「替えようね」と淡々と対応することが重要です。
昼のトイレと夜のおねしょはまったく別のものです。昼は意識の問題ですが、夜は体の問題です。
もちろん昼間に溜める習慣がついていれば、夜も比較的スムーズですが、おねしょが毎晩のように続くならば、おむつでも構いません。
体の成長とともに膀胱が大きくなり、溜める力ができます。そうしたら自然に濡らさなくなり、パンツで寝られるようになります。
「いつかきっとできる」と信じて見守ってあげること
「おむつなし育児」については、実践した卒業生のレポートの一部を紹介します。
「長女は自宅出産で、生後0日目からチャンバーポットといわれる陶器製のおまるを使い始めました。
おむつなし、というと全くおむつを準備しない、というイメージがあるかもしれませんが、そんなことはありません。必要な時は使い、おむつなしの時間を作る、排泄したそうな時や、タイミングを見計らって、おまるやトイレで出来るだけさせてあげる方法です。
最初のキャッチ(排泄をおまるですること)は胎便で、黒いうんちをキャッチしたときは感動しました。新生児は、泣いたら授乳と排泄なので、とても分かりやすく、おまるの上におしりを載せると何回もキャッチできました」
「4、5ヵ月頃までは、とてもやりやすく、おむつを数枚しか濡らさない日もありました。おまるでさせるため、上体を起こすことが多かったせいか、首のすわりや腰がしっかりするのも早かったと思います(トイレですることもできました)」
「寝返り、はいはい、つかまり立ちをするようになると、周りのことに気をとられるせいか、おむつにすることも増え、おまるに座らせても嫌がることもありました。そんな時は、トイレで補助便座を使ったりもしました。
本人がしたそうな時やタイミングをみてトイレに連れていき、1歳半頃からはトレーニングパンツやパンツをはく時間を増やしていきました。本人もおむつよりパンツを選びました。
1歳8ヵ月には、自分でパンツとズボンを脱いで、補助便座を取ってのせ、座ってしていてびっくりしました。
遊びなどに夢中になっているとおもらしをすることもありましたが、「ちっち」と教えたり、自分でトイレに行くことが増えていきました。こんな感じで自然に移行していき、2歳になる頃には昼間も完全にパンツになっていました」
大切なのは、無理強いせず、排尿の感覚を子どもは学んでいくものだということを理解し、ひとりでしやすい環境を整えてあげること、「いつかきっとできる」と信じて見守ってあげることです。
大人の対応や環境が変われば、すんなり進むものですから、あきらめずに良き援助をしていきましょう。
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田中 昌子
上智大学文学部卒。2女の母。日本航空株式会社勤務後、日本モンテッソーリ教育綜合研究所教師養成通信教育講座卒。同研究所認定資格取得。東京国際モンテッソーリ教師トレーニングセンター卒。国際モンテッソーリ教師ディプロマ取得。2003年よりIT勉強会「てんしのおうち」主宰。著書に『モンテッソーリで解決! 子育ての悩みに今すぐ役立つQ&A68』(講談社)、モンテッソーリ教育の第一人者、相良敦子氏との共著に『お母さんの工夫モンテッソーリ教育を手がかりとして』(文藝春秋)など多数。
上智大学文学部卒。2女の母。日本航空株式会社勤務後、日本モンテッソーリ教育綜合研究所教師養成通信教育講座卒。同研究所認定資格取得。東京国際モンテッソーリ教師トレーニングセンター卒。国際モンテッソーリ教師ディプロマ取得。2003年よりIT勉強会「てんしのおうち」主宰。著書に『モンテッソーリで解決! 子育ての悩みに今すぐ役立つQ&A68』(講談社)、モンテッソーリ教育の第一人者、相良敦子氏との共著に『お母さんの工夫モンテッソーリ教育を手がかりとして』(文藝春秋)など多数。