小学生5人に1人は恋人アリ? 小中学生の「付き合ってる♡」の実態を専門家が解説
ソーシャルワーカー・鴻巣麻里香さんに聞く「小中学生の恋愛バウンダリー」【1/4】~小中学生恋愛のリアル~
2025.01.15
精神保健福祉士・スクールソーシャルワーカー:鴻巣 麻里香
大人が想像する「交際」ではない
「確かに、『彼氏(彼女)いる』とか『付き合ってる』などと言う小中学生はたくさんいます。ただ、『付き合うって、具体的にどんなことをしてるの?』と聞くと、一緒に帰るくらいで、実際は何もしていないんですよ。
ただ一応、形式としては『告白する』などのプロセスは経てはいます。そこからお互いの関係に『彼氏・彼女』というラベルを付けて、周りからもそう認知されている、という位置づけです。ただ中身は、大人が想像してしまうような恋人関係では全然ないんですね」(鴻巣さん、以下同)
以前だったら「異性の仲のよい友だち」くらいの関係性。そこに、「付き合う=彼氏・彼女・恋人」という名前をつけなければならないという圧力を、子どもたちの日常から感じるそうです。
「圧力をかけているのは、私たち大人。よく子どもたちが『何々ちゃんは、リア充でいいな』って言うんですが、“リア充=彼氏・彼女がいる”をさしているんです。そのメッセージをどこから汲み取っているのかというと、いろんなコンテンツやSNS、小学生が読む雑誌などから。
少女向けの漫画や雑誌では、モテとかモテメイク、モテファッション、モテるための仕草といった特集が組まれているんですよね。それを見た子どもたちは、『恋人がいたほうがいい』『いるのが当然なんだ』と考えるようになり、以前は友だちだった異性の存在に、“付き合う”というラベルを貼っていくんです」
「恋愛リア充の呪い」をかけないように注意!
近年の子どもたちの交友関係を見ていると、ポジティブな変化も感じられると鴻巣さん。
「私たちの子ども時代は同性同士で遊びがちでしたが、今は男女の垣根があまりないですね。同じ趣味や好きな漫画、アニメ、曲などの共通項を通じて、ボーダレスに性別を超えた交流があるんです。
オンラインゲームなどでも、男女分け隔てなくいろんなやりとりをしている。そうして男女間の友情が生まれ、そこに彼氏・彼女というラベルを貼っていく流れなんですね」
ラベルは貼っているけれど、そこに「密接な交際」が伴っているケースはまれだといいます。小学生の娘や息子から「彼氏・彼女ができた」と聞いても、驚いたり過剰に反対したりする必要はなさそうです。
「『早すぎる!』などとびっくりする前に、『そっかそっか、それってどういうことなの?』『何をするのが彼氏・彼女なの?』と、コミュニケーションの入り口として話してみるといいでしょう。
逆に、子どもに浮いた話がないからといって、『何であなたには彼女がいないの?』などと、恋愛リア充の呪いをかけるのは避けてくださいね」
「彼氏・彼女」の既成ルートに流されると本音が置き去りに
中学生になると少し事情が異なります。「彼氏と彼女とは、どんなことをする存在なのか」という知識がついてくるため、友だちの延長線上から外れていきがちだからです。
「恋人同士なら手をつなぐ、触れ合う、キスをする、その先、という既定路線みたいなものがありますよね。そこで『付き合ってるならそっちに行かなければならないのかな』『恋人同士だったら、こうするのが当然なのかな』という流れで、本当は望んでいなくても、関係が進んでいってしまう。
『自分がこの人と、どんな関係を作りたいんだろう』などと、自分の体や心としっかりと対話する前に関係が進んでしまうんです。その結果、『本当にこれでよかったのかな』と苦しむ子どもも少なくありません」
その大半は女の子ながら、「積極的な彼女に押されて、望まない関係に悩む」という男の子もいるそうです。