小学生5人に1人は恋人アリ? 小中学生の「付き合ってる♡」の実態を専門家が解説

ソーシャルワーカー・鴻巣麻里香さんに聞く「小中学生の恋愛バウンダリー」【1/4】~小中学生恋愛のリアル~

精神保健福祉士・スクールソーシャルワーカー:鴻巣 麻里香

「男の子のコミュニティには、『性的なスキンシップを早く経験すると、ちょっと進んでてエライ』みたいな雰囲気がまだまだあるんですよ。

例えば男の子が『彼女が積極的で、この間キスしちゃったんだよね』と言ったら、仲間の男の子たちに『いいじゃん!』ってうらやましがられる、みたいなね。そういう空気の中で、本当は嫌なのに、嫌だと言う口をふさがれている男の子もいるんです」

「付き合ってるなら、当然こうするべき」という既成概念が優位になる子どもの恋愛。そうなると「この人とどういう関係を作るのが、自分にとって心地がよいのかな」、「自分や相手は、この関係をどうしていきたいのかな」という感情が、置き去りにされがちなのです。

「交際」は人を大切に扱うコミュニケーションを学ぶ絶好のチャンス

「彼氏・彼女なんだから、このぐらい当然」と望まないスキンシップをとることは、その後成長して異性と交際をする際にも、「NO」と言えなくなったり、お互いに同意を取るプロセスを抜かしてしまったりするリスクにもなり得るそうです。

「性行為がからんでくると、女の子のほうが圧倒的にリスクが高く、デメリットの最初の芽がまかれかねません。日本では包括的な性教育が遅れていることもあって、かたよった情報が子どもたちに入ってしまっている。

だからこそ、子どもが苦しいときに『お母さん、ちょっとわからないんだけど』『お父さん。ちょっとこれ苦しいんだけど、どうしたらいいの』と言える関係性があったらいいなと思います。もちろん、親には恥ずかしくて言えないこともあるので、学校の先生やスクールカウンセラーなど、周りにいる大人がそんな存在になれるといいですよね。こうした関係性は、その次に続くトラブルから子どもたちを守ることにつながると思います」

では、小中学生が恋愛をするメリットは、どこにあるのでしょう?

「『誰かを好きになって、大切にするってどういうことなんだろうね』と、周りの大人たちと会話をして、深めていく機会になると思います。

『どんな関係を作るのが、お互いにとって心地がいいかな』『どうやってコミュニケーションをとれば、自分や相手を大切にすることにつながるのかな』と、子どもと一緒に考えてあげるといいですね」

そうすると性教育の面でも、いい影響があるといいます。内容を単に情報としてではなく、「今後もしかしたら、そういうことになるかもしれない」と、自分ごととして考えるようになるのです。「いつかその場面が来たら、絶対にお互いの同意が必要」など、大切なことを学ぶきっかけになるでしょう。

──次回は、親が子どもに伝えるべき恋愛のバウンダリーについて伺います──

取材・文/萩原はるな

10代の生きづらさとその解決策をリアルなエピソードとともに紹介した『わたしはわたし。あなたじゃない。10代の心を守る境界線「バウンダリー」』(出版:リトルモア)。2024年9月発売から1ヵ月弱で重版に。
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こうのす まりか

鴻巣 麻里香

Marika Kohnosu
精神保健福祉士、スクールソーシャルワーカー

KAKECOMI代表、精神保健福祉士、スクールソーシャルワーカー。 1979年生まれ。子ども時代には外国にルーツがあることを理由に差別やいじめを経験する。ソーシャルワーカーとして精神科医療機関に勤務し、東日本大震災の被災者・避難者支援を経て、2015年非営利団体KAKECOMIを立ち上げ、こども食堂とシェアハウス(シェルター)を運営している。著作に『思春期のしんどさってなんだろう? あなたと考えたいあなたを苦しめる社会の問題』(2023年、平凡社)、共編著に『ソーシャルアクション! あなたが社会を変えよう!』(2019年、ミネルヴァ書房)、『わたしはわたし。あなたじゃない。 10代の心を守る境界線「バウンダリー」の引き方』(リトル・モア)がある。

KAKECOMI代表、精神保健福祉士、スクールソーシャルワーカー。 1979年生まれ。子ども時代には外国にルーツがあることを理由に差別やいじめを経験する。ソーシャルワーカーとして精神科医療機関に勤務し、東日本大震災の被災者・避難者支援を経て、2015年非営利団体KAKECOMIを立ち上げ、こども食堂とシェアハウス(シェルター)を運営している。著作に『思春期のしんどさってなんだろう? あなたと考えたいあなたを苦しめる社会の問題』(2023年、平凡社)、共編著に『ソーシャルアクション! あなたが社会を変えよう!』(2019年、ミネルヴァ書房)、『わたしはわたし。あなたじゃない。 10代の心を守る境界線「バウンダリー」の引き方』(リトル・モア)がある。

はぎわら はるな

萩原 はるな

ライター

情報誌『TOKYO★1週間』の創刊スタッフとして参加後、フリーのエディター・ライターとなる。現在は書籍とムックの編集及び執筆、女性誌やグルメ誌などで、グルメ、恋愛&結婚、美容、生活実用、インタビュー記事のライティング、ノベライズなどを手がける。主な著作は『50回目のファーストキス』『ハピゴラッキョ!』など。長女(2009年生まれ)、長男(2012年生まれ)のママ。

情報誌『TOKYO★1週間』の創刊スタッフとして参加後、フリーのエディター・ライターとなる。現在は書籍とムックの編集及び執筆、女性誌やグルメ誌などで、グルメ、恋愛&結婚、美容、生活実用、インタビュー記事のライティング、ノベライズなどを手がける。主な著作は『50回目のファーストキス』『ハピゴラッキョ!』など。長女(2009年生まれ)、長男(2012年生まれ)のママ。