突然やってくる「管理入院」に動揺しないために
多胎妊娠でよく聞くのが「管理入院」という言葉です。子宮頸管長が短くなる等で、早産の恐れがある妊婦が入院して安静にするのが「管理入院」ですが、多胎の場合、おなかに子どもを2人以上抱えているため、その可能性がより高くなります。入院の際は、どんな準備が必要なのでしょうか?
工藤さん 「妻が29週目に入ったとき、管理入院になったのですが、それは本当に突然、言い渡されました。妻がいなくなっても困らないように、ある程度の家事や、上の子2人の世話は僕に移行されつつあったのですが、それでも少し動揺しました。
一番気になったのは、いきなりお母さんがいなくなってしまう2人の息子の気持ちや生活のこと。“どう伝えよう?”、“どんな影響が出るだろう?”と考えましたが、普段から妻と子どもだけ、僕と子どもだけで出かけることも多かった息子たちは、思ったより状況を理解してくれたので助かりました。
管理入院は本当に突然やってきます。なので、それまでに妻がいなくなっても困らないよう、何がどこにあるかなどは把握して、上の子どもがいるなら送り迎えの手順を整えておくこと。あと、おじいちゃんおばあちゃんや友達、ご近所さんに何かとお手伝いしてもらえるよう、事前に“何かあったら、お願いします”と伝えておくことも大事ですね」
管理入院のためのママの持ち物などは病院から細かく指示されますが、パパの準備については教えてもらえません。しかし、その日は突然やってくると覚悟して、できる限りいつもと変わらず生活ができるように準備しておきましょう。
パパが積極的に動いてくれるとママも安心
子育て経験があっても不安になる多胎育児ですが、初めての妊娠が多胎だったらその不安はなおさらに大きくなります。病院選び、子育てスキルの習得以外にパパができることはどんなことがあるのでしょうか?
工藤さん 「僕は、おなかの子が双子だと知って最初にしたことは、とりあえず多胎家庭や双子の知り合いを探したことですね。“どんな感じなの? 何が大変だった?”と話が聞きたくて。各家庭に差はありますが話を聞いて、インターネット等で情報収集もしました。そして、多胎家庭にまつわる情報がとても少ないことも知ったのです。だから僕自身の双子の妊娠から出産、育児までの経験を本にしました(笑)。
いまいち想像がつかないというパパも、多胎育児のイメージができるくらいまで、自分でさまざまな情報を集めておくのがよいと思います」
市倉さん 「多胎家庭は40年前に比べて、2倍になったといわれています。しかしそれでもまだ少数派であるゆえ、多胎妊娠の当事者となったお母さんはとても戸惑います。だからこそ、お父さんには近くにいて1番の支えになってほしいのです。
外出するべき用事はできる限りお父さんが担当する、会社に多胎だと伝えて育休を取る等々。まだ子どもたちが生まれる前だからと雑務をお母さんにまかせたり、何かと指示待ち状態でいるのではなく、自ら育児にまつわる制度を調べたり、お父さんも主体性を持って育児しようとすること。その姿勢がお母さんの不安や戸惑いをやわらげると思います。例え、育休が取れなくても、育休を取ろうとする姿勢を見せることが大切なのです」
妊娠中はパパにとって、いまいち実感がわきにくい時期かもしれませんが、妊娠中から夫婦間でのコミュニケーションを意識し、一緒に考え、パパがどんどん動くこと。これがママの不安をやわらげ、うまく過ごすためのカギになりそうです。
ママの体調の変化に常に気を配りつつ、情報収集と環境作り、心の準備は初めておきましょう。各家庭の事情で、できることとできないことの差はありますが、工藤さんと市倉さんのお話をもとに、自分たちなりにできることを考え、動いてみる。そうしてママとパパ、お互いが抱える不安が少しでも解消することをめざしましょう。
松倉 和華子
編集プロダクション勤務を経て、2017年にフリーランス・編集ライターとして独立。 雑誌、ウェブメディア、オウンドメディアなどを中心に取材記事やインタビュー原稿を執筆。2歳の双子女児の母。
編集プロダクション勤務を経て、2017年にフリーランス・編集ライターとして独立。 雑誌、ウェブメディア、オウンドメディアなどを中心に取材記事やインタビュー原稿を執筆。2歳の双子女児の母。