きのこ好きの親子にぴったりのイベント「きのこ展2024」が2024年10月20日(日)まで開催! 人気の秘密は「わかる、見られる、狩れる」
きのこ研究者・保坂健太郎先生が推す絵本「ほしじいたけ ほしばあたけ」も展示に貢献【後編】
2024.10.11
9月10日に発売された絵本「ほしじいたけ ほしばあたけ」シリーズ最新作『ほしじいたけ ほしばあたけ まぼろしのいずみ』の帯に、コメントを寄せている、国立科学博物館植物研究部菌類・藻類研究グループ・研究主幹の保坂健太郎先生のインタビューの【後編】。
専門家の保坂先生をうならせた絵本「ほしじいたけ ほしばあたけ」シリーズの表現。第1弾では、きのことなめくじの関係に続いて「キヌガサタケ」が話題に出ましたが、「キヌガサタケ」は風で胞子を飛ばさないことが発覚! 「じゃあどうやって増えるの?」という疑問に保坂先生が答えます。
目次
臭いにも毒にもワケがある! 【知られざるきのこの常識③】
保坂:キヌガサタケの胞子を含む塊を、専門用語で「グレバ」といいます。表面がネバネバしているだけでなく、かなり強い臭いを出してハエなどの虫を誘います。そして臭いに釣られてやってきた虫の体に胞子を付着させて、別の場所に運んでもらうというワケです。
──そうだったんですね。『ほしじいたけ ほしばあたけ おにたいじはいちだいじ?』で、きのこたちがかくれんぼをするシーンがあったのですが、「キヌガサタケはにおいでばれ」というくだりがありました。本当に描写が細やかです!
──ほかにも「ほしじいたけ ほしばあたけ」シリーズにはたくさんのきのこが登場しますが、保坂先生が一番気になるきのこはなんですか?
保坂:カエンタケです。インターネットで調べると「触るだけで皮膚がかぶれる」という記事がたくさん出てくる、有名なきのこです。本当に「触るだけで、皮膚がかぶれる」のかは、実証されていないんです。
保坂:僕の実体験としていうと、カエンタケの「表面」を触っただけでかぶれることはほとんどありません。でもカエンタケをギュッと絞った絞り汁を皮膚に入念になすりつけたら、かぶれるかもしれません。
ただし猛毒のきのこであることは間違いなく、食べたり、煮出した汁を飲んだり、お酒に漬けこんで飲んだりすると最悪の場合、死にいたるきのこです。
保坂:カエンタケは、食べなければそんなに怖がるほど悪いきのこではないんですよ。キノコの毒も、キヌガサタケの臭いと同じで、「いかに胞子をばらまくか」という生存戦略のひとつ。人間にとっては毒かもしれないけれど、特定の動物や虫にとっては「目印」になっているかもしれない。そこはまだ、解き明かされていない謎ですが、いつか解明できたらおもしろいなと思っています。
──触るといえば、「きのこ展2024」は生のきのこを触る展示もあるそうですね。カエンタケもありますか?
保坂:カエンタケは主に夏に生えるきのこなので、たぶんありません。実は「きのこ展2024」の展示きのこは、始まってみないとどのきのこが出るかわからないんです。
──ええっ、どういうことですか!?