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『あらしのよるに』【全7巻 全ページ試し読み】380万部の国民的ベストセラー 20年ぶり“奇跡“の新シリーズが3月12日スタート! 『くものきれまに』を全ページ無料公開!
「あらしのよるに」シリーズより『くものきれまに』を全ページ無料公開!
2025.02.24
「あんな やつと なかよくしたい やつなんて、だれも いませんよね。」
うしろから タプを にらみつけていた ガブは、ついに たちあがった。
そして、するどい きばを きらめかせ、おそろしい くちを おおきく あけた。
『あぶない。』
メイは、おもわず タプの からだに おおいかぶさった。
「お、おい。メイ、どうしたんだ、きゅうに。」
タプが おどろいて こえを あげる。
そんな メイの すがたを みて、ガブは、ウオオ~ンと ひとこえ ほえた。
ガブは、なきながら はやしの なかに とびこんでいった。
「ひえーっ。」
すぐ ちかくで きこえた オオカミの こえに、
タプは いちもくさんに にげだした。
タプの すがたが とうげから きえたのを みとどけると、
メイも はやしに とびこんだ。
ヒマラヤスギの ねもとに、ガブが ぽつんと たたずんでいる。
「やっと、わたしたちだけに なりましたね。」
メイが かけよると、ガブは くるりっと せなかを むけた。
「どうしたんです?」
「だって……、やっぱり あんたらから みたら、おいらって、ひどい やつなんすよね。」
「どうせ、おいら、めが つりあがってて、くちが げひんで、はなが ぶさいくでやんすよ。」
「そ、そんなこと。」
「いくら こうして あってても、どうしようもないことなんすよね……。」
「だから、わたしたち、ひみつの ともだちなんじゃないですか。」
「ひみつの ともだち?」
「ええ。」
「なんか、それって、ドキドキする ことばっすよね。
じゃあ、おいらたち、また あえるでやんすか?」
「もちろんですよ。」
「おいらが オオカミでも?」
「そっちこそ、わたしのような ヤギでも?」
「もちろんすよ。だって、“ひみつの ともだち”でやんすから。」
「ああ、もう、ひが くれてきましたよ。」
「え? ほんとだ。もう、かえる じかんでやんすね。」
「さよなら、ひみつの ともだち。」
「さいならー。」
くものきれまから かおを だした ゆうひが、二ひきを てらしだした。
ゆうひの なかを、なんどもなんども ふりかえりながら かえっていく ガブを、
メイは いつまでも、てを ふって みおくった。
とうげを かけおりてきた タプが、ふりむいて、おどろきの こえを あげた。
「ま、まさか、あの メイが……。」
タプは 二ひきを みて、こう おもった。
『メイが こぶしを ふりあげて、オオカミが にげていく。
ハハハ、オオカミの やつ、くやしそうに なんども ふりかえってら。
うーむ、メイの やつ、すごい やつだったんだ。』
やがて、ガブの すがたが、やまかげに きえた。
……『大型版 あらしのよるにシリーズ(4) きりのなかで』へと続きます!