「子どもインタビュー」でわが子の内面を記録 人気児童書作家が解く素敵な効果

シリーズ「子どもの声をきく」#2‐1 児童書作家・杉山亮さん~“子どもインタビュー”のおもしろさ~

児童書作家・ストーリーテラー:杉山 亮

「子どもの声をきくっていうのは、僕の中では日常の延長で、ごく自然なこと。何をみんな改まって考えているんだろう、と思いますね」と杉山さん。  写真:桜田容子

インタビューは「心の内側」まで記録できる

記録というと、運動会をビデオカメラやカメラで撮る親御さんは多いでしょう。動画や静止画は「外から見たもの」を正しく残す分には貴重な記録です。

他方でインタビューは、「心の内側」を残す。そのときの子どもの気持ちや考えを残そうとする。それは、子どもの成長を見るという意味では、とてもすぐれたやり方だと思うんです。

今は、SNSで子どもとの記録を残す人も増えました。もちろん、子どもが話した言葉を写真付きで残すことは悪くない。でも僕だったら、わざわざ全体公開はしないかな。

インターネットに載せたことで、もし子ども自身が誤解されたら、そしてそれが広まってしまったら、その誤解は解きようがないから。

それは多かれ少なかれ、子どもが傷つく可能性をはらんでいると思うんです。

僕自身、“子どもインタビュー”は紙の本で一般公開しています。ただし、その過程で、本人が傷つかないよう何重にもチェックする機会を設けていました。

連載の執筆段階では、読者のウケを狙って隆の話を誇張することは決してしなかったし、最初の単行本が出る時点でも、校正段階で、本人があとからこれを読んで腹を立てたり傷ついたりしないように、改めてチェックしました。

当時10歳だった本人にもこの内容で出版してもいいか、ゲラ(印刷前の校正刷り)を見てもらって許可を得ました。

親子だから、たいていのことは許される? それは親の甘えでしょう。相手の言葉を世間に公開するなら、本人が不快にならないように配慮するのは当然の仁義だと思うんです。

今回(2度目の文庫化)も含め、書き下ろしたあとがきには隆本人に目を通してもらいましたよ。「おもしろいね」とか「こんなことを言ってたんだ」といった感想は一切なく「はい、OK」とあっさりしたもんでした。

楽しい時間はたくさんあったほうがいい

話がそれましたが、子どもインタビューは単純におもしろい。そしておもしろい時間はたくさんあったほうがいいから、やってみたら? ということですね。

子どもとペチャクチャおしゃべりするのって、楽しいじゃないですか。

え、疲れる? もちろん質問攻撃が続いた時期は「うるさーい!」という気持ちになることはありましたけど、インタビュー中の小一時間くらいは、いいんじゃないでしょうか。

ん? 自分は会話が少ない親子だから、続くかわからない? 5分で終わったっていいじゃないですか。「うちはうまくいかなかった」なら、なぜうまくいかなかったのか、考えてみればいい。

でも、会話が続くには、コツもあるんですよ。次回、詳しくお話ししますね。

2022年11月に文庫化され再発売となった『子どものことを子どもにきく 「うちの子」へのインタビュー 8年間の記録』(ちくま文庫)

杉山亮(すぎやま・あきら)
1954年東京生まれ。離島などでの保父を務めた後、埼玉県でおもちゃ作家として、手作りのおもちゃ屋「なぞなぞ工房」を主宰。現在は山梨県北杜市の小淵沢に住み、児童書作家兼ストーリーテラーとして活動中。『もしかしたら名探偵』『いつのまにか名探偵』など23冊に及ぶ「あなたも名探偵」シリーズ、『ばけねこ』(原作・ポプラ社)などのおばけ話絵本シリーズなど、数多くの児童書を執筆している。ストーリーテラーとして、全国各地の小学校などを廻り、話をする「物語ライブ」も行っている。2022年11月に、かつての単行本を文庫化した『子どものことを子どもにきく 「うちの子」へのインタビュー 8年間の記録』(ちくま文庫)が発売。

取材・文/桜田容子

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すぎやま あきら

杉山 亮

Akira Sugiyama
児童書作家・ストーリーテラー

1954年東京生まれ。離島などでの保父を務めた後、埼玉県でおもちゃ作家として、手作りのおもちゃ屋「なぞなぞ工房」を主宰。現在は山梨県北杜市の小淵沢に住み、児童書作家兼ストーリーテラーとして活動中。 『もしかしたら名探偵』『いつのまにか名探偵』など23冊に及ぶ「あなたも名探偵」シリーズ、『ばけねこ』(原作・ポプラ社)などのおばけ話絵本シリーズなど、数多くの児童書を執筆。ストーリーテラーとして、全国各地の小学校などを廻り、話をする「物語ライブ」も行っている。 2022年11月に、かつての単行本を文庫化した『子どものことを子どもにきく 「うちの子」へのインタビュー 8年間の記録』(ちくま文庫)と、本人のTwitter発のメッセージ集『児童書作家の思いつき: 子どもと子どもの本のためのヒント集』(仮説社)が発売。

1954年東京生まれ。離島などでの保父を務めた後、埼玉県でおもちゃ作家として、手作りのおもちゃ屋「なぞなぞ工房」を主宰。現在は山梨県北杜市の小淵沢に住み、児童書作家兼ストーリーテラーとして活動中。 『もしかしたら名探偵』『いつのまにか名探偵』など23冊に及ぶ「あなたも名探偵」シリーズ、『ばけねこ』(原作・ポプラ社)などのおばけ話絵本シリーズなど、数多くの児童書を執筆。ストーリーテラーとして、全国各地の小学校などを廻り、話をする「物語ライブ」も行っている。 2022年11月に、かつての単行本を文庫化した『子どものことを子どもにきく 「うちの子」へのインタビュー 8年間の記録』(ちくま文庫)と、本人のTwitter発のメッセージ集『児童書作家の思いつき: 子どもと子どもの本のためのヒント集』(仮説社)が発売。

さくらだ ようこ

桜田 容子

ライター

ライター。主に女性誌やウェブメディアで、女性の生き方、子育て、マネー分野などの取材・執筆を行う。2014年生まれの男児のママ。息子に揚げ足を取られてばかりの日々で、子育て・仕事・家事と、力戦奮闘している。

ライター。主に女性誌やウェブメディアで、女性の生き方、子育て、マネー分野などの取材・執筆を行う。2014年生まれの男児のママ。息子に揚げ足を取られてばかりの日々で、子育て・仕事・家事と、力戦奮闘している。