フランス最古のモンテッソーリ幼稚園に学ぶ「子どもの好奇心の高め方」
#3 子どもの好奇心を理解するために大人が観たい映画 世界的メソッド『モンテッソーリ 子どもの家』
2021.07.29
映画評論家:前田 有一
子どもの好奇心の奥深さについて学べる映画を映画評論家・前田有一さんがピックアップ。第3回は、世界で認められる幼児教育メソッドの全貌を知ることができるフランスのドキュメンタリー作品『モンテッソーリ 子どもの家』について解説してもらいました。
フランス最古のモンテッソーリ幼稚園に密着!
フランス最古のモンテッソーリ学校の幼稚園クラスを、2年3ヵ月にわたって密着取材。自主性を尊重する先生の指導のもと、夢中で“お仕事”に取り組む子どもたち。成長の過程で訪れる魔法のような瞬間を通して、子どもの無限の可能性と教育の大切さを再発見できるドキュメンタリー。20世紀初頭にイタリアの教育者マリア・モンテッソーリが考案し、世界140ヵ国以上に普及している教育メソッドの真髄とは。
1907年、ローマの貧しい地区に“子どもの家”を開設し、3歳から6歳までの子どもたち約50名を受け入れたマリア・モンテッソーリ。彼女は子どもたちの集中力に着目し、革新的な教育法を提唱。1世紀以上が過ぎた今も、彼女の教育哲学は人々に大きな影響を与えています。
「幼児教育に興味のある方なら誰でも一度は耳にする“モンテッソーリ教育”が具体的に何をしているのか、映画を観れば一通り分かります。この映画では、実際にフランスにあるモンテッソーリ学校の幼稚園クラスに通う、2歳半〜6歳までの子どもたち28人を、2年3ヵ月にわたり追いかけています。子どもたちは教室で花の茎をハサミで切ったり、料理やアイロンがけをしたりと、やりたいことにとことんのめり込んでいます。そんな子どもたちの日常の中に、好奇心が生まれる瞬間や、何かに夢中になっていく過程を目撃することができるはずです」
ポイント1 徹底的な仕掛けづくりが好奇心を生み出す
「この作品は、子どもの好奇心がどんなときに芽生えて、どういう行動につながっていくのかを知りたいと思っているお父さん、お母さんさんにぴったりです。
モンテッソーリ教育は、子どもたちの主体的な学びが中心にあって、それをどうサポートするかということに心血が注がれています。何を学ぶかは自分次第。ただし興味を持たせるための仕掛けは徹底して考え尽くされています。
例えば、オリジナルの知育玩具がいたるところにあり、それぞれ子どもがおもしろがる工夫が凝らされているんです。そして先生は見守り役に徹して、危ないことをしていないかをチェック。決して押し付けることはせずに、やりたいことに集中できるように、さりげなくアドバイスしたりフォローしたりします。
ひたすらアイロンがけをする子や、リンゴを切り続ける子など、興味関心が向く方向はさまざま。好奇心とは、集中できる環境があってこそ発揮できるということに気づかされます」
ポイント2 好奇心を高めるには整理整頓が大事
「モンテッソーリ教育では、部屋がちゃんと整理整頓されていることが重要だとされています。むしろこの作品を観て、整理整頓こそモンテッソーリ教育の真髄なのではないかと思うほどです。
なぜそこまで整理整頓を大事にするかというと、そこには深いわけが。まずモンテッソーリ教育には、『整理整頓なくして好奇心を高めることはできない』という哲学があります。えっ! ごちゃごちゃした部屋のほうが、おもしろいものを見つけようとワクワクするのでは? と思いますよね。
でも、そうではなく、ものが溢れすぎていると、逆に子どもは気が散ってしまうというのがモンテッソーリ教育の考え方。実際に幼稚園では、オープンラックに玩具や道具が並べられているのですが、とても美しく整理整頓されています。きれいに片付けられていると、好奇心の矛先がはっきりするというわけです。
この幼稚園はとにかく徹底していて、コップの位置から椅子の位置まで、1センチ単位で決められています。先生たちが登園前に徹底的に整理整頓したところで、子どもたちを招き入れると、みんな目を輝かせてアイテムを選びます。このように好奇心を高めるための工夫は、親にとってすごく参考になるはずです」