特別の免許状は必要なし、臨時的任用教員の割合も高い
現在、特別支援学級や通級による指導の教員には、特別の免許状は必要とされていません。
文部科学省によると、特別支援学級の担当教師の、特別支援学校教諭免許状の保有率は、31.1%となっています(令和3年度時点)。
(出典:「特別支援教育を担う教師の養成の在り方等に関する検討会議報告」(令和4年3月31日))
加えて、
「小・中学校の学級担任の雇用形態として、小学校の学級担任全体における臨時的任用教員の割合は 11.49%であるのに対し、特別支援学級の臨時的任用教員の割合は23.69%、中学校の学級担任全体における臨時的任用教員の割合は 9.27%であるのに対し、特別支援学級の臨時的任用教員の割合は 23.95%である」
と記載されています。
さらにこの調査では、
「特別支援教育に関わる教師が、他の教師と比べて、長期的な視野に立って計画的に育成・配置されているとは言い難い現状にある」
との指摘がなされています。
生徒の保護者という立場で展重さんが日頃感じていることは、調査結果でも裏付けられているのです。
このような現状を受け、検討会報告では、「教師の採用段階で特別支援教育に関わる経験等を考慮する」、「全ての新規採用職員が概ね 10 年以内に特別支援教育を複数年経験すること」などの点を挙げています。
生徒の増加に教員の配置が追い付いていない現状
他方、特別支援学級の教員はどのような課題を抱えているのでしょうか。
熊本県内の小学校で特別支援教育の担任をしている教員が行った調査(※)では、授業を展開する上での悩みとして「学習内容」、次いで「教員不足」を指摘する声が多かったようです。このことからも特別支援教育を受ける生徒の増加に教員の配置が追い付いていない現状が伺えます。
(※出典:未来の体育を構想するプロジェクト公式ウェブサイト より 「特別支援学級・特別支援学校の体育のこれから-竹尾浩輔氏-レポート」)
特別支援教育支援員として現場に関わっている筆者は、生徒との関わりへの戸惑いを担任の教室に伝えています。
その際、担任教師からは「ここにいてもらえるだけで助かっています」と言われ、複雑な思いを抱くことがあります。
近年、さまざまな特性をもつ児童に対する理解が社会で浸透してきましたが、特別支援教育に関わる教員の不足や質についてまでは、あまり知られていないように感じます。
特別支援教育を受ける生徒が不安なく過ごすためには、教育を提供する側の問題にも、目を向ける必要があるのではないでしょうか。
【小山朝子氏による「特別支援学級」についての連載は全3回。1回目では「発達障害と特別支援学級の基礎知識」として、特別な支援を必要とする児童の就学先について解説。2回目では、特別支援学級に通う児童と保護者を取材、「特別支援学級をめぐる現状」について解説します。最後の3回目では、インクルーシブ教育と特別支援学級について解説します。(3回目は3月中旬ごろに公開予定)】
小山 朝子
20代から始めた洋画家の祖母の介護をきっかけに介護ジャーナリストとして活動を展開。その間、高齢者・障害者・児童のケアを行う全国の宅老所なども精力的に取材。2013年より東京都福祉サービス第三者評価認証評価者として、障害者を対象とした「生活介護」、「就労継続支援A型・B型事業所」などで調査・評価活動を多数行ってきた。 著書『世の中の扉 介護というお仕事』(講談社)が2017年度厚生労働省社会保障審議会推薦児童福祉文化財に選ばれる。現在は執筆、講演、コメンテーターの傍ら、ボランティアとして地域の小学校の特別支援教育支援員も担っている。
20代から始めた洋画家の祖母の介護をきっかけに介護ジャーナリストとして活動を展開。その間、高齢者・障害者・児童のケアを行う全国の宅老所なども精力的に取材。2013年より東京都福祉サービス第三者評価認証評価者として、障害者を対象とした「生活介護」、「就労継続支援A型・B型事業所」などで調査・評価活動を多数行ってきた。 著書『世の中の扉 介護というお仕事』(講談社)が2017年度厚生労働省社会保障審議会推薦児童福祉文化財に選ばれる。現在は執筆、講演、コメンテーターの傍ら、ボランティアとして地域の小学校の特別支援教育支援員も担っている。