「母」になった久保田智子 【特別養子縁組】は“特別“じゃない 私たちは子育てをしたい“普通“の夫婦だった

養親当事者・久保田智子(兵庫県姫路市教育長、元TBSアナウンサー)インタビュー【1/3】~養子縁組を決意するまで~

兵庫県姫路市教育長:久保田 智子

「夫は『養子縁組を進めるにあたっては、僕は妻より2歩も3歩も遅れていた感覚がある』と話していました。

それを聞いて改めて、私たちは迷いながら進んできたんだよねと思い返しました。変な感覚かもしれませんが、夫にとても共感できたんです。

こうして養子縁組のよさばかりを発信し続けていると、自分たちが特別な何かをもった夫婦だから養子縁組を選択できたのだろうと思われてしまうかもしれませんが、それは本意ではありません。立派でも特別でもない夫婦だから迷ったし、いっぱい悩みましたから。

私たちはあくまでも普通の夫婦が普通の選択肢のひとつとして、養子縁組で長女を迎え入れた普通の家庭だと伝えていくことが大切なのだと実感した出来事でした」

元人気アナウンサーで養子縁組をして母になった久保田智子さん。  提供:姫路市教育委員会
すべての画像を見る(全5枚)

家族みんなで子どもを育てると決意

夫のニューヨーク赴任が終わり、帰国する少し前からインターネットで養子縁組のあっせん団体を探し始めた久保田さん。いろいろな団体を調べる中で、同時に考えていたのが自分たちの家族への報告だったそうです。

「夫婦が子どもを産んで育てる場合、事前に親や家族に意見を聞くということはあまりないような気がします。そこは基本的には夫婦の選択ですから。

でも、養子縁組の場合は、親や家族も驚いたり、戸惑うこともあるでしょうから、事前に家族にていねいに説明をして、理解を得られるほうがいいといわれます。

正直、そこに違和感がなかったわけでもありません。私たち夫婦で決めて、ふたりで育てるのになって思っていました。でも、今振り返ると、はじめにきちんと相談をしたのは重要なことでした。

いちばんよかったのは、家族の中で子どもを迎えようと合意ができたことです。これは、養子に限らず、実子だとしても子育てをするうえで必要なことなのかなと感じます。

やはり、子育てって本当に大変で両親や親戚の助けを借りないと辛い場面はたくさんありますから。

助けてもらうことは決して当たり前じゃなく、家族として一緒にこの子を育てていこうという気持ちのつながりがあるからこそ、お願いできることですよね。我が家は、みんなで育てていこうねって最初に合意したことで、とても助けられたと思います」

とはいえ当初、久保田さんの母は養子を迎えることに諸手を上げて賛成というわけでもなかったといいます。

「父はわりとすぐに『じゃあ一緒に育てていこう!』と思ってくれたようです。ただ、母は『あなたが子どもを育てられるの? 本当に大丈夫?』という反応でした。

でも、それは養子縁組がどうというよりも、私個人に対する不安だったみたいです(笑)。

ただ、あのときに相談したことが、母にとっても覚悟を決めるきっかけになったのだと思います。孫の成長を見届けるためにも自分も元気でいなくてはと、思ってくれたようです」

夫婦での決断、家族への相談を経て、久保田さん夫妻は2019年、特別養子縁組制度を利用して、長女となるハナちゃん(仮名)を迎え入れることになります。

次回は、あっせん団体探しやハナちゃんがやってくることが決定したときのことなどについてお話を伺います。

●久保田智子PROFILE
1977年生まれ。東京外国語大学卒業後、2000年TBSに入社しアナウンサーとして活躍。2015年に結婚、2016年に退社を発表し、その春に夫と渡米。2018年に帰国後、TBSの報道局に復職。2019年には特別養子縁組制度にて、1児の母となる。2024年4月からは兵庫県姫路市の教育長に就任した。


取材・文/関口千鶴

この記事の画像をもっと見る(全5枚)
20 件
くぼた ともこ

久保田 智子

Tomoko Kubota
兵庫県姫路市教育長、元TBSアナウンサー

1977年生まれ。東京外国語大学卒業後、2000年TBSに入社しアナウンサーとして活躍。2015年に結婚、2016年に退社を発表し、その春に夫と渡米。2018年に帰国後、ジョブリターン制度を利用してTBSの報道局に復職。 2019年には特別養子縁組制度にて、女児の母となる。2024年4月からは兵庫県姫路市の教育長に就任した。

  • x
  • Instagram

1977年生まれ。東京外国語大学卒業後、2000年TBSに入社しアナウンサーとして活躍。2015年に結婚、2016年に退社を発表し、その春に夫と渡米。2018年に帰国後、ジョブリターン制度を利用してTBSの報道局に復職。 2019年には特別養子縁組制度にて、女児の母となる。2024年4月からは兵庫県姫路市の教育長に就任した。

せきぐち ちづる

関口 千鶴

Sekiguchi Chizuru
編集者・ライター

大学卒業後、出版社にて編集者として数多くの雑誌・書籍を手掛ける。その後、親子カフェ経営を経て、独学で保育士免許を取得。現在は、幼児教育・子育て支援・絵本などを中心としたフリーランスの編集者・ライターとして活動中。 ●Instagram chise_kanon

大学卒業後、出版社にて編集者として数多くの雑誌・書籍を手掛ける。その後、親子カフェ経営を経て、独学で保育士免許を取得。現在は、幼児教育・子育て支援・絵本などを中心としたフリーランスの編集者・ライターとして活動中。 ●Instagram chise_kanon