赤ちゃんのギャン泣き〜イヤイヤ期 “怒るより共感”が上手くいく理由

保育・子育てカウンセラー井桁容子さん「ノンストレス育児のススメ」#1〜親のアンガーマネージメント編〜

保育・子育てカウンセラー井:井桁 容子

イヤイヤは寄り添わないとますます悪循環に

子どもは2歳頃になると、第一次反抗期とも呼ばれる「イヤイヤ期」を迎えます。

この時期になると、子どもは親の言葉や意図をある程度は理解できるようになりますが、そのうえで「イヤだ」とダダをこねるのです。そんなイヤイヤ期を、上手く乗りきるためのコツを井桁さんに教えてもらいましょう。

「子どもは1・2歳を迎えると自我が出てくるため、大人の思いとズレを感じると、『ダメ』『ヤダ』と拒否するようになります。

子どもがイヤイヤをしたときは、叱るよりも、「何がイヤなの?」「どうしたかった?」と、ワケを考えてみることが大切なのです。

本来、子どもが『イヤ』と自分の気持ちを言えるのは大切なこと。大人でも、なんでも受け入れて、『イヤ』と言えない人は社会的に信用されません。それは、意思がないのと同じだからです。子どもが自分の気持ちを表現できたことを、まずは喜んで受け止めてあげましょう。

そのうえで、子どもがイヤイヤをするのには必ずワケがあるので、わかろうとしてあげましょう。全部受け止めるということではなく、どんな気持ちだったのかをわかってあげるだけでいいんです」(井桁さん)

ここで井桁さんが、イヤイヤ期の親子エピソードを教えてくれました。

「あるお母さんが男の子(2歳)に靴下をはかせていたところ、その子が『イヤだ! 痛い!』と言って泣き出したんです。すると、そのお母さんは『痛くないでしょう!』と息子さんを𠮟りつけました。

おかしな話ですよね。痛いと言っているのは子どもなのに、どうしてお母さんが“痛くない”と言えるのか?

これは、『靴下をはいているだけなのだから痛くない』というお母さんの思い込みのため。では、なぜ子どもは『イヤだ! 痛い!』と怒りだしたのかというと、足の指の爪に靴下の糸が引っかかっていたので、痛い思いをしていたというわけです。

このようなことが起きると、子どもは親に対して『わかってくれない人』と思うようになります。

はじめはボリューム2くらいで言っていた『イヤ』が、『この人にはこれくらいで言わないと通じない』と感じることで、ボリューム10くらいの『イヤ』になってしまう。そして、親の方も『余計に手のかかる子だ』と感じて負のループが生まれるんですね」(井桁さん)

ネットで検索をすればすぐにほしい情報が手に入り、必要な物が届くなど便利な世の中になったことで、今の親は手のかかるものを嫌う傾向があると井桁さんは警鐘を鳴らします。

そのため、正解のない子育てで、なかでも子どもの「イヤ」に対して、「めんどくさい」と感じてしまう。

親からすると、「イヤ」と言わず親の指示通りに従う子どもの方が、手のかからない良い子に見えてしまうのかもしれませんが、イヤイヤ期は人として幸せに生きていくうえで、大切な意味があるのです。

「大人は『イヤイヤ期』と言いますが、私からすれば『イヤと言える期』ですし、子どもにとっては『わかってもらえない期』。子どもの気持ちをわかろうとすることで、親子の信頼関係がだんだんできていくのです」(井桁さん)。
写真:アフロ
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