
「相談先がわからない…」子ども・親・保育士を救う子育て支援“キンダーカウンセラー”とは
幼稚園にいる心の専門家「キンダーカウンセラー」第2回~園児・保護者との関わり~ (2/3) 1ページ目に戻る
2026.05.28
園が直面した深刻な事態を救った専門家の視点
幼稚園は「教育」の場ですが、ときには「福祉」の専門性が必要な家庭の危機に直面することもあります。
たちばな幼稚園(大阪府門真市/幼保連携型認定こども園)の邨橋(むらはし)智樹副園長は、「かなり前の話にはなりますが、保護者が子どもの問題について、どの機関に連絡すれば、対応してもらえるのかわからないといった相談を受けたこともあったそうです」と振り返ります。
「園として話を伺うと、確かに子どもの生活環境に大きな不安があることがわかり、当時は、正直なところ園としてどう動けばいいのか迷ったということです。子どもを守る必要がある。しかし、スムーズにどう行政につなげればいいのか……」
そんなとき園と保護者を支えたのが、キンダーカウンセラーの存在でした。
「保護者と園、行政の間に入り、状況を整理しながら児童相談所や自治体などとの連携を進めてくれました」
子どもの問題は、園の中だけで完結するものではありません。家庭、地域、行政など、さまざまな機関とつながることで初めて支えられることもあります。キンダーカウンセラーは、そうしたつながりをつくる役割も担っているのです。
先生+キンダーカウンセラーが連携して子どもを安全へ導く
子どもの発達に関する悩みは、多くの場合、日常の中の小さな違和感から始まります。
落ち着きがない、友だちとの関わりがうまくいかない、活動に集中できない。そうした変化に最初に気づくのは、担任の先生です。邨橋さんは言います。
「担任の保育者(園の先生)は毎日子どもを見ていますから、ちょっとした変化には本当によく気づきます。ただし、その変化をどう理解すればいいのかは簡単ではありません。
成長の過程なのか、一時的なものなのか、それとも専門的な支援が必要なのか。判断は難しいものです。保育者の知識で、この子は発達特性があるとかを断定することはできません。我々はそういったことの専門的な勉強をしているわけではないので」
そんなとき、臨床心理士であるキンダーカウンセラーの視点が加わることで、子どもの姿をより多面的に理解し、確実な支援に結びつけることができるようになります。
キンダーカウンセラーの仕事は「観察」から
大阪府の幼稚園でキンダーカウンセラーをしている臨床心理士の田近文(たぢか・あや)さんに、園での業務について聞きました。
「キンダーカウンセラーの仕事は、子どもの観察がメインです。カウンセリングと聞くと、相談室で向き合って話を聞く場面を想像する人も多いかもしれませんが、それとは少し違います。
子どもたちは保育室や園庭で遊び、友だちと関わりながら一日を過ごしています。臨床心理士はそうした日常の場面に入り、子どもの姿を観察します。どんな遊びを選ぶのか。友だちとどのように関わるのか。どんな場面で困りやすいのか。逆に、どんなときに安心しているのか。
日常の環境の中で見ていくことで、その子の特徴や困りごとが見えてくることがあります。医療機関での面接とは違い、幼稚園では子どもの“普段の姿”を見ることができる。それが園での支援の大きな特徴でもあります」
観察後、キンダーカウンセラーは担任の先生に見立てを伝え、その子にはどんな関わり方が合っているのか、どういった工夫ができるのか、安心につながる方法を一緒に考えます。
「園の先生って、本当に子どもたちのことをよく考えていて、いろいろなアイデアを持っていらっしゃるんです。なので、そこにキンダーカウンセラーがサポートすることで、先生の自分の考えを整理でき、その子に合った支援を自信を持って行えるようになればと考えています」
田近さんは毎月1回キンダーカウンセラーとして幼稚園を訪問します。幼稚園という子どもの日常が見える場所にいることで、保護者は気軽に話をしやすくなる。「ここ(幼稚園)にいることに大きな意味を感じる」と田近さんは言います。
「わざわざカウンセリングに行くっていうのは、やっぱりハードルが高いと思うんです。相談すること自体に不安を感じる保護者も少なくないんじゃないでしょうか。我々が幼稚園で行うカウンセリングでも最初は緊張している保護者の方が多いです。
それでも話しているうちに、『こんなふうに悩んでいるのは自分だけじゃなかったんですね』『子どもの相談って言いながら、結局は自分の話を聞いてほしかったのかも』と、カウンセリングの最後にはホッとしたような笑顔をみせてくれることがあります。そんなときキンダーカウンセラーの重要性を実感しています」
































