アン ミカ 母の「4つの魔法の言葉」がケガをして笑えなくなった自分を変えた

【アン ミカさんと考える子どもの未来 前編】長所に気づくために今、大事なこと

親子で信じていたことがあったから

普段の生活では、家族といえども、お互いに自分たちの生活を支え合い、生きるための同志だったとアン ミカさんはいいます。

そんな一家が唯一、親子でゆっくり会話ができる日が週に一度だけありました。

家族7人で大阪暮らし、両親と過ごす時間は貴重だった(本人右下 当時5歳)。 写真提供:株式会社テンカラット

アン ミカさんの両親はキリスト教のカトリックを信仰。家族で教会の土曜学校に通っていました。

「週末に教会へ来られる方はいつも同じメンバーで、お昼の時間には教会で用意してもらう100円ほどで買える安いうどんやカレーを食べていました。

神父様のお話を聞いて、聖書の言葉から家族で感じたことを話してみる、そういう時間がとても多かったです。

家族でひとつのことを信じていたので、宗教感がとても大きかったんですね。一般の家庭ではなかなかないディスカッションだと思います」(アン ミカさん)

現在は、仏教にも関心を持って勉強をしているアン ミカさん。信仰を通して人間性を育んだことも人生の基盤になっています。

アン ミカスマイルは母から譲り受けたもの

タレントの中でも、とびきりの笑顔が印象的なのがアン ミカさん。どんなときもポジティブな言葉と前向きな姿勢が見る人を元気にさせています。

ですが、幼少期には家の階段から落ちて大ケガをしたことで、口の中に傷を負い、しばらくの間は友だちの前で笑うことさえできない時期がありました。

「私の様子を見て、母は責任を感じていました。当時はラーメン屋さん以外にも美容部員としても働いていて、職場で習ってくる『美人に見える方法』を教えてくれたんです」(アン ミカさん)

その方法をアン ミカさんは「4つの魔法の言葉」と表現します。

「母が教えてくれた魔法は、姿勢をよくすること心の目で相手を見ること口角を上げて笑顔を作ること目線を外す際は相手の胸と胸の間のラインに目線を落とすことです。

私だけでなく、姉や妹も聞いていました。姉はシャイで、話すことが苦手でしたが、母は会話上手というのは一方的に自分だけがしゃべることだけでなく、聞き手がいるからこそ会話上手になれるから、聞き手も大切だと教えてくれたんです。

人の話をよく聞き、相手が話しやすい話題や質問ができることも大切だと教わり、姉はそれをよく心がけていたと思います。私も4つの魔法をやってみようって、意識するようになったんです」(アン ミカさん)

学校で4つの魔法を実践してみると、次第に周りの様子が変わっていきました。特に変化を感じたのは友だちのお母さんたちだったとか。

「子どものときって親から『あの子と遊ぶのはやめなさい』とかいわれることがありますよね。

でも、私は4つの魔法のおかげで『ミカちゃんなら家に呼んでもいい』、『ミカちゃんとなら遊んでおいで』と、友だちのお母さん方から好印象だったんです。

友だちの家にも呼んでもらえることが次第に増えていって、友人の親など大人が私を褒めてくれたのがとてもうれしくて、初めて自分を誇らしく思えました。

そのころから自分に自信を持てるようになったんです。

母は大人になったら、目鼻立ちのいい人が美人ではなくて、一緒にいて心地よい人が美人だといい続けていましたね」(アン ミカさん)

今のアン ミカさんからはとても想像がつかないコンプレックスが当時はあり、ときにはきょうだい4人と自分を比べて落ち込んでいたといいます。

ですが、両親以外の大人に認められたといううれしさは、小さな女の子だったアン ミカさんに輝きを与えたのです。

現在、子育てをする中で、自分の子どもを周りの子と比べて、成長や学力の差についてモヤモヤを抱える方もいるかもしれません。ですが、日頃からさまざまな世代の人生相談を受けているアン ミカさんは次のように話します。

「私の場合は両親がいつも忙しかったのですが、子どもの考えや思いを尊重してくれていましたね。

子どもは自分とはまったく別の人格ですから、親の都合や感情でコントロールしてしまうと、その子の本質や輝いている部分を見落としがちになる気がします。

ただ、これはとても難しいことで、親の責任感から結果として我が子をコントロールしてしまったというようなことがあるかもしれません。

初めから、そうしようと思う人はいないと思いますが、子どもの長所や特性を見極める前に、いろいろ手を出して、失敗しないよう先に答えを出してしまうことってありますよね。

また、自分が導いたことが間違ってなかっただろうかと思い、つい他の子の様子を見てしまったり……。それが比べることにつながってしまうのではないかと思います。

我が子が何に対してワクワクするのか、何が好きなのかをよく見てあげると自然とその子“らしさ”に気づけるのではないでしょうか」(アン ミカさん)

次回は、大好きなお母さんとお別れし、成長する中で出会った素敵な優しい大人たちについてお話を聞いていきます。また、新刊絵本『スパゲッティになりたいラーメン』(KADOKAWA)についてご紹介します。

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◆アン ミカ
モデル、タレント。1972年生まれ。韓国出身。大阪育ち。1993年パリ・コレクションに出演。モデルのほか、ジュエリー・ファッションデザイナー、化粧品プロデュース、エッセイスト、歌手、バラエティー出演など幅広く活躍。

アン ミカさんが翻訳を手がけた絵本
『スパゲッティになりたいラーメン』(KADOKAWA)

取材・文/飯塚まりな

『アン ミカさんと考える子どもの未来』は、前後編。
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