【子どもの嘔吐・下痢】ホームケアの新常識 「絶食させる」は間違い! “お粥より普通の食事”がいい理由〔医師が解説〕
令和の子どもホームケア#2~嘔吐や下痢への対処法~
2024.11.19
小児科専門医:森戸 やすみ
脱水症状の予防・治療には経口補水液
嘔吐や下痢があるときに重要なのが、水分補給をすること。ガイドラインでは、経口補水液を飲ませることを推奨しています。吸収が早く、ナトリウムやカリウムといった塩分、糖分がバランスよく含まれる経口補水液は、失われた水分と電解質を補うのに最適です。
経口補水液を飲ませる「経口補水療法」は、嘔吐や下痢の治療にとてもよい方法で、軽症から中等度の脱水がある場合でも点滴と同程度の効果が得られます。
中でも、WHO(世界保健機構)が推奨する塩分濃度にいちばん近いのが「OS-1(オーエスワン)」。薬局などの医療機関で見かけたことがある人も多いでしょう。胃腸炎の症状は突然現れるものなので、家に常備しておくと安心ですね。
お子さんに嘔吐や下痢の症状があったら、できるだけ早急に経口補水液を飲ませましょう。目安は、5ml(ティースプーン1杯分)を5分おき。嘔吐が続いていても、口の中を湿らせる程度でいいので与えます。乳児など自分で飲めない場合、上体を起こして支えながらスプーンで与えましょう。
1日に与える量の目安は、例えば「OS-1」の場合、乳児なら体重1kgあたり30~50ml、幼児は300~600ml、学童以降は500~1000ml。一度にたくさん飲ませると嘔吐の原因になるので、少量ずつ小まめに与えるのがポイントです。
市販のスポーツ飲料は糖分が多く、体に必要な塩分濃度は低いことから、脱水時の水分補給には不向きです。ただ、いちばん心配なのは水分をまったく摂れないこと。経口補水液を飲めない子が「スポーツ飲料なら飲める」なら与えてもよいと思います。ほかに、薄めたりんごジュースやぶどうジュースでもいいでしょう。
胃腸炎の際に下痢を止める薬は子どもに使われることが少なく、吐き気止めは効かないこともあります。痛みをやわらげる解熱鎮痛剤の効果も期待できません。自宅で安静にしながら、自然治癒を待ちます。もし、食事や水分が摂れない状態が続いたり、尋常ではない痛がり方をしたりする場合は受診が必要です。
また、目が落ちてくぼんでくる、落ち着かない、呼吸が早い・荒い、手足が冷たいなどの症状は脱水のサインです。早急に医療機関を受診して、点滴や入院など必要な処置を受けてください。
【子どものホームケアの新常識 その2】
嘔吐や下痢があるときは経口補水液を飲ませ、食べられるならいつもどおりに食べていい。
取材・文/星野早百合
星野 早百合
編集プロダクション勤務を経て、フリーランス・ライターとして活動。雑誌やWEBメディア、オウンドメディアなどで、ライフスタイル取材や著名人のインタビュー原稿を中心に執筆。 保育園児の娘、夫、シニアの黒パグと暮らす。
編集プロダクション勤務を経て、フリーランス・ライターとして活動。雑誌やWEBメディア、オウンドメディアなどで、ライフスタイル取材や著名人のインタビュー原稿を中心に執筆。 保育園児の娘、夫、シニアの黒パグと暮らす。
森戸 やすみ
小児科専門医。1971年、東京都出身。一般小児科、新生児集中治療室(NICU)などを経験し、現在は都内のクリニックに勤務。『子育てはだいたいで大丈夫』、共著に『やさしい予防接種BOOK』(共に内外出版)など、医療と育児をつなぐ著書多数。『祖父母手帳』(日本文芸社)の監修も手がける。子どもの心身の健康や、支える家族の問題について幅広く伝える活動を行っている。
小児科専門医。1971年、東京都出身。一般小児科、新生児集中治療室(NICU)などを経験し、現在は都内のクリニックに勤務。『子育てはだいたいで大丈夫』、共著に『やさしい予防接種BOOK』(共に内外出版)など、医療と育児をつなぐ著書多数。『祖父母手帳』(日本文芸社)の監修も手がける。子どもの心身の健康や、支える家族の問題について幅広く伝える活動を行っている。