赤ちゃん・子どもの【ウイルス性胃腸炎】 飲んで良いクスリ・悪いクスリ 母乳・ミルクは飲んで良い? 「9つの疑問」に専門医が回答
消化器病、消化器内視鏡専門医・髙橋裕太先生に聞く「ウイルス性胃腸炎」 #2 ~胃腸炎Q&A~
2024.09.19
消化器病専門医、消化器内視鏡専門医:髙橋 裕太
──今回は胃腸炎について9つ質問したいと思います。まず1つ目、胃腸炎のときに市販の下痢止めを飲んでもよいですか?
髙橋裕太先生(以下、髙橋先生):ウイルス性胃腸炎の場合、体がウイルスを排出しようとして下痢を起こしています。無理に止めてしまうと回復が遅れることもあるので、自己判断での服用は控えたほうがいいですね。
嘔吐についても同じことが言えますが、水分が取りづらいほど吐き気が強い場合は、市販の吐き気止めを飲んでもいいと思います。整腸剤は症状の強さにかかわらず服用して問題ありません。
いずれの薬も、夜間や休日など受診が難しい場合を除き、基本的には病院で処方されたものを服用するのがベストです。
2.薬を飲んですぐ吐いた場合はまた飲んでよい?
──薬を飲んだ後、時間をおかずに吐いてしまいました。もう一度、同じ薬を飲ませていいのでしょうか?
髙橋先生:錠剤の場合、嘔吐物の中に明らかに錠剤が残っているようであれば、もう一度飲ませていいと思います。問題は粉薬ですよね。服用してから15分程度なら、まだ体に吸収されていないはずなので、追加で飲ませて構いません。30分程度たっていたら、次の服用時間まで待ったほうがいいですね。
3.脱水症状になっていないかの確認方法は?
──きちんと水分がとれているか心配です。脱水症状になっていないか確認する方法はありますか?
髙橋先生:「ツルゴール反応」という脱水の診断に使う方法があります。前腕(肘から手首の間)、または手の甲の皮膚をつまんで離してみてください。元気なときはすぐに皮膚が元に戻りますが、2秒以上皮膚が戻らない場合は脱水を起こしている可能性があります。
また、顔色が悪い、まばたきが遅い、横になってぐったりしている、泣いているのに涙が出ない、排尿が極端に少ない、呼びかけても反応が鈍いといった様子が見られるときも脱水が疑われます。
脱水症状が進むとさまざまな臓器に影響を及ぼし非常に危険なので、おかしいなと思ったらすぐに病院で診てもらうようにしましょう。
4.赤ちゃんに母乳やミルクは飲ませてよい?
──赤ちゃんが感染した場合、母乳や粉ミルクは飲ませてもいいのでしょうか?
髙橋先生:大丈夫です。粉ミルクも希釈せず通常の割合で問題ありません。ただし、一気に飲んでしまわないように調節してあげてください。
5.コインランドリーで汚れたものを洗ってもよい?
──汚れてしまった布団やカーペットを丸洗いしたいのですが、コインランドリーに持ち込むと感染を広げてしまいますか?
髙橋先生:コインランドリーでの洗濯・乾燥は感染リスクが低いことがわかっています。ただし、目に見える汚れはできるだけ落とした上で、袋に入れて密封して持ち込み、洗濯槽以外の部分に触れないよう十分に気を付けましょう。
6.登園・登校の目安は?
──登園・登校の目安はあるのでしょうか?
髙橋先生:胃腸炎はインフルエンザなどのように、明確な出席停止期間はありません。ただ、厚生労働省の「保育所における感染症対策ガイドライン」では、「嘔吐、下痢等の症状がおさまり、普段の食事がとれること」が登園・登校の目安とされています。
ただ、園や学校によっては登園・登校許可証の提出を求める場合もありますので、その際には嘔吐や下痢が落ち着いたら受診するようにしましょう。
7.ペットにも感染する?
──ペットにも感染しますか?
髙橋先生:犬や猫などのペットが感染するウイルスは、人が感染するノロウイルスやロタウイルスとは別物で、今のところ感染例は報告されていません。
8.食欲が出てきたら普通食に戻してもよい?
──下痢が続いていますが、食欲が出てきました。普通の食事に戻してもよいのでしょうか?
髙橋先生:食欲が出てきたということは、回復してきたということです。普段の食事に戻しても構いませんが、脂の多い食事や辛い食べ物は弱った胃腸に負担をかけ、下痢を悪化させてしまう恐れがあります。できるだけ消化に良い食材を選び、あっさりしたメニューを心掛けましょう。
9.日頃からの感染予防法は?
──感染しないために日頃から気を付けることはありますか?
髙橋先生:手洗いをきちんとして、流行している時期には人込みを避けるようにしましょう。ノロウイルスにはワクチンがありませんが、ロタウイルスはワクチンが定期接種の対象になっています。3回接種のうち(※2回接種のワクチンもある)、初回を遅くとも生後14週6日までに打たなければならないため、タイミングを逃さないようにしてください。
予防接種期間を過ぎてしまった場合は、安全性の観点からおすすめしていません。幼児は重症化しやすいので、できる範囲で予防しつつ、感染してしまった場合は早めに小児科を受診するようにしてください。
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今回は、ウイルス性胃腸炎にまつわるさまざまな疑問にお答えいただきました。突然の下痢や嘔吐にも落ち着いて対応できるよう、覚えておきたいですね。
取材・文/北 京子
ウイルス性胃腸炎に関する記事は全2回。
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北 京子
フリーライター。 藤沢市在住。食の月刊誌の編集者を経て独立。食を中心に、SDGs、防災、農業などに関する取材・執筆を行う。 3児の母。自然の中で遊ぶこと、体を動かすこと、愛犬とたわむれることが好き。
フリーライター。 藤沢市在住。食の月刊誌の編集者を経て独立。食を中心に、SDGs、防災、農業などに関する取材・執筆を行う。 3児の母。自然の中で遊ぶこと、体を動かすこと、愛犬とたわむれることが好き。
髙橋 裕太
消化器病専門医、消化器内視鏡専門医。仙台消化器・内視鏡内科クリニック・長町院 院長。 1999年福島県立医科大学附属病院第2内科(現・消化器内科)、2007年公立相馬総合病院消化器科を経て、2021年9月より現職。 仙台消化器・内視鏡内科クリニック 長町院
消化器病専門医、消化器内視鏡専門医。仙台消化器・内視鏡内科クリニック・長町院 院長。 1999年福島県立医科大学附属病院第2内科(現・消化器内科)、2007年公立相馬総合病院消化器科を経て、2021年9月より現職。 仙台消化器・内視鏡内科クリニック 長町院