いろんな年齢の子や大人とのかかわりは貴重な体験
子どもを外で遊ばせたくても、最近では安全面で心配なことも。こども広場は、四季折々の楽しい企画があるだけでなく、大人が見守ってくれて、様々なかかわりが生まれます。
「小さいころ、息子自身は、純粋に楽しかったと思います。ひとりっ子なので、こども広場で、いろんな年齢の子どもや大人とかかわりが持てたことは、貴重な経験になったと思います。私も、自分が子どものころに、こんな場所があったら楽しかっただろうな、とよく思っていました。
皆さんが子どもたちと、温かく大らかに関わってくれるので、親としてでなく、一個人として場を楽しむことができました。他の場所だと、どうしても自分の子のことは自分が見なきゃ、息子が外れたことをしたら注意しなきゃという意識が働きがちです。ケアタウンでは、皆が見てくれるから大丈夫という安心感がありました」(りえさん)
子どもの成長を継続して見守ってくれる人がいて、それは心強かったことと思います。年齢や経験、立場も違う、いろいろな人達とかかわることで、りえさん自身も視野が広がり、得たものがあるといいます。
「息子が成長してからは、サポート役として参加しています。ケアタウンの誰でもウェルカムな雰囲気や、子どもが好きで、今はこども広場に参加することが純粋に楽しいです。お手伝いしながら、実は、自分のストレス解消になっています。
コロナ禍の今の子育ては、本当に大変だと思います。どの年代の子も、今まで普通に体験できていたことができなくなったり、行動に管理や制限がかかったり。
親も、今まで見なくても良かった部分まで見なきゃいけなくなってしまった。こんな状況だからこそケアタウンでは、できるだけ今までと変わらない、自由な遊びやかかわりが続いてほしいな、と思います」(りえさん)
子どもと高齢者、そばにいるだけで
りえさんは、ここに高齢者が住んでいて、在宅医療やデイサービスを提供していることは、初めは知りませんでした。今は建物の中から見ている入居者と、子どもたちが手を振り合い、さりげないかかわりがあります。
「子どもたちが直接、利用者さんとかかわる機会は、特にコロナ禍になってからはほとんどありませんが、子どもにとっても、高齢者にとっても、側にいるだけで、よい効果があるのではないかと思います。
私自身、ここ数年は、親の看取りや介護を体験している最中です。
子どもの遊びをきっかけにケアタウンと関われたことで、ボランティアに来ている年配の方々に、子育ての悩みだけでなく、介護の悩みなども聞いていただける機会があります」(りえさん)
こうしたかかわりが、ケアタウンの目指す、子どもも大人も高齢者も支えていく地域作りなのでしょう。今は子育てに必死でも、いずれは子どもが自立し、自分や家族は老いていきます。
「子育てについても、人生の終わりについても、迷うことは多いですが、身近な人には話せない場合もある。ちょっと愚痴をこぼせる第三者がいるのは、救いになります。いろんな年齢や状況の人たちを、温かく受け入れてくれるケアタウンは、そんな関わりが自然に持てる場所ではないかと思います」(りえさん)
子育ても人生のしまい方も…… 多世代の居場所の温かさ
終末期医療の取材で、緩和ケア医の山崎章郎さんに出会い、何度か訪れていた『ケアタウン小平』。筆者自身、子育てと仕事の両立が大変すぎて、しばらく終末期の現場から遠ざかっていました。「ワンオペ育児当事者」として、子育てや福祉・医療の取材を続けて感じたのは、さまざまな世代・状況の当事者が、分断されていることでした。
でもコロナ禍に、居場所や人間関係が持てなくなり、みんなが辛い状況に陥りました。そこで、子どもから、患者さん、高齢者まで支え合っている『ケアタウン小平』に、何かヒントはないかと、今回取材をお願いしました。
こども広場のイベントには、取材時に初めて参加しましたが、氷を触ったり、パワーワードを発表したり、次から次へと即興で出てくる遊びに大笑いし、温かいコミュニティの一員に迎えてもらって、リフレッシュしました。小学生の娘にも、四季を感じる遊びを体験させてあげたいなとしみじみ。
もしかすると、介護とか終末期というワードに、ひいてしまう人もいるかもしれません。子育てに必死のときは、考えられないでしょう。でも、家族も自分も老いていくのです。
2021年、父が亡くなって、「人生を肯定して閉じること」「残された人のグリーフケア」というテーマがより身近になりました。コロナ禍の中で思うように会えないまま、家族を亡くした人も少なくありません。
終末期と子育てを通して、命を考える。そんな視点を教えられる、『ケアタウン小平』はとても貴重な居場所なのです。
取材・文/なかのかおり
なかの かおり
早稲田大参加のデザイン研究所招聘研究員。新聞社に20年あまり勤め、独立。現在は主に「コロナ禍の子どもの暮らし」、「3.11後の福島」、「障害者の就労」について取材・研究。39歳で出産、1児の母。 主な著書に、障害者のダンス活動と芸能界の交差を描いたノンフィクション『ダンスだいすき!から生まれた奇跡 アンナ先生とラブジャンクスの挑戦』、『家庭訪問子育て支援ボランティア・ホームスタートの10年「いっしょにいるよ。」』など。最新書『ルポ 子どもの居場所と学びの変化: 「コロナ休校ショック2020」で見えた私たちに必要なこと』が2022年10月22日発売。 講談社FRaU(フラウ)、Yahoo!ニュース個人、ハフポストなどに寄稿。 Twitter @kaoritanuki
早稲田大参加のデザイン研究所招聘研究員。新聞社に20年あまり勤め、独立。現在は主に「コロナ禍の子どもの暮らし」、「3.11後の福島」、「障害者の就労」について取材・研究。39歳で出産、1児の母。 主な著書に、障害者のダンス活動と芸能界の交差を描いたノンフィクション『ダンスだいすき!から生まれた奇跡 アンナ先生とラブジャンクスの挑戦』、『家庭訪問子育て支援ボランティア・ホームスタートの10年「いっしょにいるよ。」』など。最新書『ルポ 子どもの居場所と学びの変化: 「コロナ休校ショック2020」で見えた私たちに必要なこと』が2022年10月22日発売。 講談社FRaU(フラウ)、Yahoo!ニュース個人、ハフポストなどに寄稿。 Twitter @kaoritanuki