ジャーナリスト・なかのかおりさんによる“子どもの居場所”についてのルポルタージュ連載。東京都小平市にある『ケアタウン小平』の取り組みついて、これまで2回にわたって伝えてもらいました。
最終回となる3回目は、ケアタウンでのイベント「集まれ! こども広場」に長く参加しているお母さんに問いかけながら、子育てとケアタウンのかかわりがもたらすことは何かを考えます。 (全3回の3回目。1回目を読む。2回目を読む)
許容される自由さが新鮮
1回目、2回目で「集まれ! こども広場」の様子はお伝えしてきました。このイベントが始まったころから参加している、近所に住むママのりえさん(55)に詳しくお話を伺いました。
りえさんの息子さんは、当時小学生で、イベントにはほぼ毎月来ていました。しかし、中学生になったぐらいから息子さんは来なくなり、りえさんだけはずっと参加を続けています。息子さんが成人した今も、ボランティアスタッフとして今度は活動のサポート側に。
「息子が小学1年生のときに、学校から『こども広場』のチラシをもらってきたのがきっかけで、『なんか面白そう』と思って、親子で参加してみました。
夫は、平日夜遅くまで仕事で、土日の午前中はだいたい寝ていました。ですので、その時間、息子と出かけられる場所があるのは、ありがたかったですね。
ここでは、学校とかで『ダメ』と言われてしまうようなことも、許容される自由さがあって、とても新鮮でした」(りえさん)
子どもたちのアイデアで四季を楽しむ
こども広場では、定番の企画がたくさんあります。しかし同じテーマでも、参加者が違うと、その時々で自由に変わっていくので、飽きません。
毎年4月には、その年1年間何をやりたいか、参加者やスタッフも含め、みんなで意見を出し合います。
新緑の季節には、自分たちでゴルフコースを作って、ケアタウンゴルフ大会。暑い時期は、水遊び。本気の水かけっこで、びしょ濡れに。
「コロナ禍の今は難しいですが、夏はそうめん流しも人気でした。そうめんだけでなく、ゼリーやグミ、金米糖、ポテトチップス、スルメイカ、ミニトマト、きゅうりなど、持ち寄った意外な物が流れてきてすごく盛り上がりましたね」(りえさん)
運動会をやりたいという子どもの声にこたえ、秋には「おかしな運動会」が始まりました。
植え込みの枝先に、糸でマシュマロをぶら下げる マシュマロ食い競争や、チョコレートをラップにくるんで庭に隠し、それを見つける種目も。フェイクで、本物の小枝を包んだものも混ぜてありました。
晩秋の庭には、落ち葉が積もります。みんなで落ち葉をたくさん集めて、葉っぱのふとんの上で丸まってみたり、落ち葉の山に飛び込んだり。また、落ち葉をかけ合い、チームに分かれて葉っぱの種類を数え、遊びがどんどん広がります。
新年は、子どもと大人が作った大小の獅子舞いで、近所を練り歩き、はっぴを着て、約束したお宅へ。頭をガブリと嚙んで無病息災を願います。コロナ禍の今でも、人数を制限してですが続けています。
「年度終わりの3月には、タイムカプセルを埋めます。1年前に埋めたタイムカプセルを、埋めたときに書いた暗号や、ヒントの歌などをもとに発掘します。
また新しいメッセージを書いてタイムカプセルに入れ、ケアタウンの庭のどこかに埋めます。何年か後に発掘されたタイムカプセルもありましたよ」(りえさん)
コロナ禍の前には、ケアタウンの庭は平日も開放していて、子どもが出入りしていました。夏休みに1日だけ、キッズボランティアとして、真剣に活動するイベントも。「ボランティアってなぁに?」の講義のあと、1年生~4年生は食堂で、5年生~6年生はデイサービスで、レクリエーションのお手伝いや昼食の配膳など、ボランティア体験をしました。