
【子どもの口のケガ】 治療後のホームケアと回復の目安 予防法を〔小児歯科専門医指導医〕がわかりやすく解説
子どもの口のケガ〔宮新美智世先生〕#3
2025.08.14
日本外傷歯学会副理事長:宮新 美智世
スポーツ外傷を減らすためのマウスピースを子どもに着け続けさせるわけにはいかない
──スポーツ外傷を防ぐためのマウスガードの使用についてはどうお考えですか?
宮新先生:高校生以上では、スポーツ中の外傷を防ぐためにマウスピース(マウスガード)を使う生徒も増えています。
特にラグビー、バスケットボール、空手など接触が多い競技では有効です。ただし、これはあくまで歯の破折や唇の裂傷というケガの重症度を軽減するためのもの。ケガそのものを完全に防ぐことはできません。
実際は、多くの口のケガがスポーツ活動以外の日常生活で発生しています。例えば、室内での転倒や遊びの中での不意の事故です。
またマウスガードの普及にも課題があります。成長期の子どもは歯列が変わるため、マウスガードも年に数回の調整や作り直しが必要。これが経済的な負担となり、導入が進まない理由のひとつになっています。
──お話を伺っていると、やはり「完全にケガを防ぐ」というのは難しいですね。
宮新先生:そうですね。でも、日常のちょっとした親子の心がけでケガのリスクを減らす下げることはできます。
たとえば、親がスマホに夢中になっているあいだに、子どもが注意を引こうとして無茶な動きをすると警告している報告があります。
まずは大人自身がスマホ依存で注意散漫になることなく、落ち着いた生活態度で手本を示すことも、子どもにとっては安全な環境要素です。
また、バランス感覚や筋力を育てるには、体を動かす遊びの習慣や危険なことについての教育、正しい姿勢作りが基本です。口のケガも「突然の事故」と思われがちですが、実は普段の生活習慣や生活態度、注意力、バランス感覚や運動能力が大きくかかわっています。
だからこそ、日々の暮らしの中でも安全に少し意識を向けるだけでも違いが出てくることでしょう。
もし万が一ケガをしてしまっても、慌てず、そして適切に対応すれば、回復もスムーズになります。
気になることがあれば遠慮なく歯科医院にご相談、ご質問をください。私たちは治療だけでなく、保護者の方の不安にもしっかり寄り添っていきます。
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取材を終えて感じたのは、ケガは避けたいできごとでありながら、家庭の習慣や暮らしを見直すきっかけにもなるということ。小さな習慣の積み重ねこそが、子どもの安全と健康を支える大切な土台になるのだと、あらためて実感しました。
取材・文/山田優子
子どもの口トラブルは全3回。
1回目 〈タイプ別「緊急度と受診の目安」〉を読む。
2回目 〈症状別「応急処置」〉とは?読む。
※公開時よりリンク有効

山田 優子
フリーライター。神奈川出身。1980年生まれ。新卒で百貨店内の旅行会社に就職。その後、拠点を大阪に移し、さまざまな業界を経て、2018年にフリーランスへ転向。 現在は、ビジネス系の取材記事制作を中心に活動中。1児の母。
フリーライター。神奈川出身。1980年生まれ。新卒で百貨店内の旅行会社に就職。その後、拠点を大阪に移し、さまざまな業界を経て、2018年にフリーランスへ転向。 現在は、ビジネス系の取材記事制作を中心に活動中。1児の母。
宮新 美智世
日本外傷歯学会副理事長・小児歯科専門医指導医・歯学博士。 東京医科歯科大学歯学部歯学科卒業。1991年に歯学博士を取得。2014年10月より東京医科歯科大学大学院小児歯科学分野 分野長(准教授)、2020年には同大学歯学部小児歯科外来の臨床教授に就任。 2021年よりLabo M代表、日本小児歯科学会専門医指導施設「はなここどもの歯のクリニック」指導医としても活動している。 2025年現在は、専門医指導医・認定医指導医としての臨床・研究指導に加え、子ども虐待防止に関する講演活動、「天然歯根管模型」を用いた実習研修会を手がける。 主著書に、歯科医師向けの『歯の外傷で小児が来院したら』(クインテッセンス出版)、パラデンタルや一般向けの『子どもの歯と口のケガ』(言叢社)。 ブログ:https://ammlog.hatenablog.com/ はなここどもの歯のクリニック:https://hanoclinic.com/
日本外傷歯学会副理事長・小児歯科専門医指導医・歯学博士。 東京医科歯科大学歯学部歯学科卒業。1991年に歯学博士を取得。2014年10月より東京医科歯科大学大学院小児歯科学分野 分野長(准教授)、2020年には同大学歯学部小児歯科外来の臨床教授に就任。 2021年よりLabo M代表、日本小児歯科学会専門医指導施設「はなここどもの歯のクリニック」指導医としても活動している。 2025年現在は、専門医指導医・認定医指導医としての臨床・研究指導に加え、子ども虐待防止に関する講演活動、「天然歯根管模型」を用いた実習研修会を手がける。 主著書に、歯科医師向けの『歯の外傷で小児が来院したら』(クインテッセンス出版)、パラデンタルや一般向けの『子どもの歯と口のケガ』(言叢社)。 ブログ:https://ammlog.hatenablog.com/ はなここどもの歯のクリニック:https://hanoclinic.com/