いじめ・不登校…心を守る「バウンダリー」親が意識すべきこと 精神保健師・鴻巣麻里香さんインタビュー

親子で考える「バウンダリー」①心の境界線の引き方・守り方

永見 薫

バウンダリーは個人の尊重に関わる概念

「バウンダリー」は直訳すると「境界」あるいは「境界線」という意味。

心理学や精神医療の分野で「自分と他人を区別する境界線(自己と他者の違いの認識)」とも言われています。

「バウンダリーは、個人の尊重や基本的な人権に関わる概念なんです」

鴻巣さんはこう説明します。それって、どういうことでしょうか?

例えば、友達や親、周囲の大人とのやりとりをイメージしてください。

「『あなたはそう思っているんだね。私はこう思っているよ』と、“あなたはあなた”と尊重しつつ“私は私”と、自分のことも尊重しながらコミュニケーションをする。単に、境界線で分け隔てるのではなく、境界を挟んで対話をする感じです」

「きちんとバウンダリーが保たれている状態だと、相手に自分を押し付けるのではなく、また、相手のことを取り込みすぎず、互いを尊重する関係がつくれますよね。このように「バウンダリー」を意識した考え方は、コミュニケーション全般に関わってくる考え方なのです」

あなたは、友達や親、目上の人などとのやりとりで「私はこう。あなたの〇〇ではないよ」と言えていますか。

相手にはっきり「NO」と言えない・言ってはいけないという状況は、日本社会ではよくあるシチュエーション。しかし、そのような「バウンダリー」がきちんと引かれていない状態では、個人として尊重されるべき意見や権利が守られず奪われてしまうこともあります。

権利という言葉を聞くと何かたいそうなことに思えるかもしれません。しかし、大人でも子どもでも自分の意思や権利が尊重されることはとても大切です。たとえそれが、日常の小さなことだとしてもです。

心を守るために大切な「バウンダリー」。しかし、バウンダリーが守られなかったり、侵害されてしまう(=バウンダリー・オーバー)状態になると、心にどんな影響があるのでしょうか。

鴻巣さんが体験した「バウンダリー侵害」の影響

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