教育に「探究」が求められるワケ 好奇心を再起動する「Feel度Walk」で親子関係に変化が!
【今こそ学力観のアップデートをするとき】親子で探究実践#3「Feel度Walkの効果」
2023.08.24
探究学習実践の第一人者である市川力さんは現在、大人も子どもも一緒に行う「Feel度Walk」という活動を推進しています。
そこに参加した人たちの多くは、「楽しかった」「また参加したい」と口にし、実際に友だちをつれて再度、参加することで広がりをみせています。
「楽しい」から始まり、続けているうち習慣となり、ストレッチのように思考や発見力の可動域を広げる「Feel度Walk」。こうした活動は、子どもだけでなく「大人にこそ必要」と市川さんは話します。
「Feel度Walk」の効果と探究のつながり、大人にとっての探究の意義について、解説していただきました。
※全5回の第3回
◆市川 力(イチカワ チカラ)
一般社団法人みつかる+わかる代表理事/慶應義塾大学SFC研究所上席所員
東京コミュニティスクールの初代校長として、長年、小学生を対象に探究力を育む学びを研究・実践。現在は、全国各地の小・中・高校に赴き探究学習の支援をするとともに、地域の多様な人たちがともに好奇心を発揮できるような、学び場づくりを行っている。
探究は習慣、「Feel度Walk」はストレッチ
#2でリポートした「Feel度Walk」の参加者は、親子や家族が大半でした。そのうち、小学生の親である数人の方々に参加の理由を聞いてみたところ、「同級生のお母さんが以前、参加されて、楽しかったと聞いたので」「以前、他の場所で『Feel度Walk』に参加したことがあるのですが、すごくよかったのでまた来ちゃいました」など、楽しかったから、楽しそうだったから、と話してくれた方がほとんどでした。
また、小学校3年生のお母さんは、こんなふうに語ってくれました。
「私自身が街歩きがとても好きなんです。だから、子どもと一緒に歩いてみたいと思って参加しました。ただ何となく歩いているだけなのに、やっぱりこの街らしさを感じることができるし、すごく楽しい時間でした」
一方で、お話を聞いた方の中には「子どもの学びのためにきた」という方はいませんでした。
「Feel度Walk」や「知図」を描いている最中も、何かを学ぶため、身につけるため、といった雰囲気はありません。ワイワイとリラックスした雰囲気で、最後は大人も子どもも関係なく、それぞれの発見を真剣に聞き合い、拍手が湧き上がっていました。
市川さんは、そうした「楽しい」という感覚、時間こそがポイントだと語ります。
「楽しいからこそまたやりたいと思うし、自然に続けられるんですね。
僕は、探究って一種の『習慣』だと思っているんですよ。続けているうちに、自然とできるようになってしまう。いつの間にか発見して、知らず知らずのうちに課題や仮説などを追いかけてしまっている。そんな、日常生活と切り離せないものだと感じています。
昨今、探究が『高度な学び』や『問題解決のテクニック』のように扱われている節がありますが、それは誤解です。習慣だから、続ければ誰でもできるようになるんですよ!」(市川さん)
そして、市川さんは「Feel度Walk」の特徴について、こう付け加えます。
「僕は、『Feel度Walk』ってストレッチに似ているんじゃないか、とも思っているんですよ。やればやるほど思考の柔軟性が増して、可動域が広がっていきますからね。それに、実際に歩いて身体を動かすことで活性化する、頭ではなく身体を使うという部分も同じです!
『Feel度Walk』という名のストレッチを続けることで、楽しみながら知らない間に発見する感性が磨かれ、探究する習慣がついていくんです」(市川さん)
好奇心を「再起動する」ことがポイント
市川さんは、さらにこう続けます。
「『Feel度Walk』で磨かれる、『なんとなくに気づく感度』、言い換えれば『自分が気になることを発見する力』は、よく考えてみると、僕たち誰もが持っているものですよね。
だって、小さい子は道端で気になる草や虫を見つけると、夢中になって全然、動かなくなるでしょう。それでお父さんやお母さんがイライラしちゃう、なんてよくある光景じゃないですか。僕たち人間に、『生まれながらに身についている力』なんですよ! 苦労して新しく身につける力ではなくて、すでに備わっている力だからこそ習慣化もしやすいんです。
とはいえ、子どもたちはこれまでの生活で、『あれはダメ。こっちをやりなさい』と言われることが通常で、本来自分が持っている好奇心にフタをした状態で過ごしています。だから、毎日の中のちょっとした隙間時間、学校の行き帰りでも、週末でもいいですが、繰り返し『Feel度Walk』を積み重ねることで、少しずつ本来持っていた発見力を取り戻すことが必要になります。
元々持っていた好奇心を、『再起動』『再活性化』するイメージですね!」(市川さん)