教育に「探究」が求められるワケ 好奇心を再起動する「Feel度Walk」で親子関係に変化が! 

【今こそ学力観のアップデートをするとき】親子で探究実践#3「Feel度Walkの効果」

「Feel度Walk」を楽しむ親子。  写真:市川力

探究学習実践の第一人者である市川力さんは現在、大人も子どもも一緒に行う「Feel度Walk」という活動を推進しています。

そこに参加した人たちの多くは、「楽しかった」「また参加したい」と口にし、実際に友だちをつれて再度、参加することで広がりをみせています。

「楽しい」から始まり、続けているうち習慣となり、ストレッチのように思考や発見力の可動域を広げる「Feel度Walk」。こうした活動は、子どもだけでなく「大人にこそ必要」と市川さんは話します。

「Feel度Walk」の効果と探究のつながり、大人にとっての探究の意義について、解説していただきました。

※全5回の第3回


◆市川 力(イチカワ チカラ)
一般社団法人みつかる+わかる代表理事/慶應義塾大学SFC研究所上席所員
東京コミュニティスクールの初代校長として、長年、小学生を対象に探究力を育む学びを研究・実践。現在は、全国各地の小・中・高校に赴き探究学習の支援をするとともに、地域の多様な人たちがともに好奇心を発揮できるような、学び場づくりを行っている。

探究は習慣、「Feel度Walk」はストレッチ

#2でリポートした「Feel度Walk」の参加者は、親子や家族が大半でした。そのうち、小学生の親である数人の方々に参加の理由を聞いてみたところ、「同級生のお母さんが以前、参加されて、楽しかったと聞いたので」「以前、他の場所で『Feel度Walk』に参加したことがあるのですが、すごくよかったのでまた来ちゃいました」など、楽しかったから、楽しそうだったから、と話してくれた方がほとんどでした。

大人も子どもも「Feel度Walk」を楽しんでいます。  写真:川崎ちづる

また、小学校3年生のお母さんは、こんなふうに語ってくれました。

「私自身が街歩きがとても好きなんです。だから、子どもと一緒に歩いてみたいと思って参加しました。ただ何となく歩いているだけなのに、やっぱりこの街らしさを感じることができるし、すごく楽しい時間でした」

一方で、お話を聞いた方の中には「子どもの学びのためにきた」という方はいませんでした。

「Feel度Walk」や「知図」を描いている最中も、何かを学ぶため、身につけるため、といった雰囲気はありません。ワイワイとリラックスした雰囲気で、最後は大人も子どもも関係なく、それぞれの発見を真剣に聞き合い、拍手が湧き上がっていました。

市川さんは、そうした「楽しい」という感覚、時間こそがポイントだと語ります。

「楽しいからこそまたやりたいと思うし、自然に続けられるんですね。

僕は、探究って一種の『習慣』だと思っているんですよ。続けているうちに、自然とできるようになってしまう。いつの間にか発見して、知らず知らずのうちに課題や仮説などを追いかけてしまっている。そんな、日常生活と切り離せないものだと感じています。

「Feel度Walk」は日常生活の中で気軽に行うことができます。  写真:市川力

昨今、探究が『高度な学び』や『問題解決のテクニック』のように扱われている節がありますが、それは誤解です。習慣だから、続ければ誰でもできるようになるんですよ!」(市川さん)

そして、市川さんは「Feel度Walk」の特徴について、こう付け加えます。

「僕は、『Feel度Walk』ってストレッチに似ているんじゃないか、とも思っているんですよ。やればやるほど思考の柔軟性が増して、可動域が広がっていきますからね。それに、実際に歩いて身体を動かすことで活性化する、頭ではなく身体を使うという部分も同じです!

『Feel度Walk』という名のストレッチを続けることで、楽しみながら知らない間に発見する感性が磨かれ、探究する習慣がついていくんです」(市川さん)

好奇心を「再起動する」ことがポイント

市川さんは、さらにこう続けます。

「『Feel度Walk』で磨かれる、『なんとなくに気づく感度』、言い換えれば『自分が気になることを発見する力』は、よく考えてみると、僕たち誰もが持っているものですよね。

だって、小さい子は道端で気になる草や虫を見つけると、夢中になって全然、動かなくなるでしょう。それでお父さんやお母さんがイライラしちゃう、なんてよくある光景じゃないですか。僕たち人間に、『生まれながらに身についている力』なんですよ! 苦労して新しく身につける力ではなくて、すでに備わっている力だからこそ習慣化もしやすいんです。

「Feel度Walk」でも、小さな子が気になるものを黙ってじっと見つめる姿がよく見られます。  写真:市川力

とはいえ、子どもたちはこれまでの生活で、『あれはダメ。こっちをやりなさい』と言われることが通常で、本来自分が持っている好奇心にフタをした状態で過ごしています。だから、毎日の中のちょっとした隙間時間、学校の行き帰りでも、週末でもいいですが、繰り返し『Feel度Walk』を積み重ねることで、少しずつ本来持っていた発見力を取り戻すことが必要になります。

元々持っていた好奇心を、『再起動』『再活性化』するイメージですね!」(市川さん)

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