【液体ミルク】「アイクレオ」「ほほえみらくらく」2大メーカー徹底取材 安全性や温め方や粉ミルクとの併用方法など裏ワザも

液体ミルクについてもっと知りたい #1 液体ミルクメーカーが語る安全面・活用法と液体ミルクQ&A編

液体ミルクは常温で長期保存できるので災害時の備蓄品としても。 写真:アフロ

2019年3月に日本で初めて発売された液体ミルク。フィンランドなどの欧米ではメジャーな商品でしたが、それまで日本では製品化されていませんでした。

液体ミルクが国内でも注目され始めたきっかけは、2016年に発生した熊本地震です。このとき、フィンランドからの支援物資として、液体ミルクが送られました。

電気やガスが使えない状況でも、スピーディーに授乳ができ、また常温で長期保存できる液体ミルクは、災害時の備蓄品としての利便性も高く、地震をきっかけに日本での製品化が進んだのです。

当初は、「江崎グリコ」と「明治」の2社のみからの製造・発売でしたが、現在では販売メーカーも増え、さまざまな液体ミルクが発売されています。

そこで、液体ミルクの安全性や、便利な使い方など、最新の液体ミルク情報を3回にわたってご紹介します。

1回目は液体ミルクについて。粉ミルクとの違いや裏ワザなど、業界のパイオニアである、「江崎グリコ」横山桃子さんと「明治」江原秀晃さんにお話を聞きました。


(全3回の1回目)

粉ミルクと液体ミルクの栄養成分はほぼ同じ

液体ミルクとはその名のとおり、液体状で販売されている調乳済みのミルクのこと。お湯や水で調乳する必要がなく、常温のまま哺乳瓶に移し替えてすぐに授乳ができるため、とっても便利です。

日本国内で販売されている乳幼児用のミルクは、食品衛生法の「乳等省令」、健康増進法の「特別用途食品制度」において栄養成分についての基準が定められています。国内で作られているミルクはすべて、赤ちゃんに必要な栄養成分を揃えており、粉ミルクと液体ミルクで栄養成分が変わることはありません。

しかし、実際に液体ミルクを使ってみると、商品によっては粉ミルクとくらべて色が濃く感じることがあります。それはなぜなのでしょうか。

明治・江原秀晃さん(以下、明治・江原さん):「明治ほほえみ らくらくミルク」の場合は、清潔な缶のなかに清潔な状態のミルクを充塡したうえで、缶ごと高温殺菌をしています。これはレトルト食品と同じ製法です。

熱がかかることで、ミルクの色みが若干茶色がかります。そのため、色が濃い印象となっています。加熱処理することを考え、粉ミルクとは配合が異なる成分もありますが、粉ミルクとほぼ同等の栄養設計となっているので安心してお飲みいただけます。

明治「明治ほほえみ らくらくミルク(缶入り・200ml)」希望小売価格232円(税込み)。  画像提供:明治

江崎グリコ・横山桃子さん(以下、江崎グリコ・横山さん):江崎グリコの「アイクレオ 赤ちゃんミルク」は、紙パックを使用しており、ミルク自体を超高温短時間殺菌してから充塡しています。ミルクだけを殺菌するので余分な熱が加わらず、粉ミルクとおなじような白さを実現しています。

「アイクレオ 赤ちゃんミルク」の場合は、粉ミルクの「アイクレオ バランスミルク」の成分に合わせて作っているので、飲んだときに感じる味や香りは粉ミルクタイプとあまり変わりません。

江崎グリコ「アイクレオ 赤ちゃんミルク(紙パック・125ml)」希望小売価格227円(税込み)。  画像提供:江崎グリコ

常温・長期保存でも安全性が高い理由

現在(2023年9月現在)発売されている液体ミルクには、缶タイプ・紙パックタイプ・パウチタイプがあります。それぞれ、商品ごとに正しい保存方法が定められていますが、高温多湿をさけ、直射日光のあたらない場所で保存すれば問題ありません。

また、液体ミルクは常温で長期間保存できることも特徴で、缶タイプの場合は約1年~1年半、紙パックタイプは約9ヵ月、パウチタイプは約1年という賞味期限となっています。

腸内環境が未発達の赤ちゃんに、常温・長期保存のミルクをあげても大丈夫? と心配になるママパパもいるかもしれません。安全性についてはどうなのでしょうか?

江崎グリコ・横山さん:開封後の粉ミルクには、サカザキ菌やサルモネラ菌という、広く一般的に存在している細菌が混入することがあります。これらの菌は抵抗力が弱い乳幼児には、場合によって敗血症や壊死性腸炎を引き起こす可能性があります。

ミルクの調乳が70度以上のお湯で、と決まっているのは、これらの菌を不活化するためです。

対して、液体ミルクの「アイクレオ赤ちゃんミルク」は、充塡前に高温で殺菌し、無菌化した状態で紙パックに詰めているので安心して飲んでいただけます。

明治・江原さん:「明治ほほえみ らくらくミルク」も先述したとおり、ミルクを缶に詰めた状態で滅菌しているので、乳幼児にとって危険なサカザキ菌が存在しません。開封しないかぎり、滅菌された状態を保つことができるので長期保存が可能です。

2020年10月には、賞味期限を1年から1年半に延長し、国内最長の保存期間になりました。これは、製法や栄養成分は変えずとも1年半経っても品質に影響がでていないことがわかったため、延長が実現できました。

湯せん以外の温め方/量が足りない/哺乳瓶がない 液体ミルクQ&A

液体ミルク使用時の疑問点についても、引き続きお2人に伺いしました。

Q1:外出先で液体ミルクが冷えてしまったとき、湯せん以外で温める方法はありますか?

明治・江原さん:液体ミルクは常温での授乳が可能ですが、寒い時期は冷えすぎてしまい、赤ちゃんが飲むのを嫌がる場合があります。そのようなときは少し温めるのがおすすめです。

基本的には、哺乳瓶に移し替えたあと、湯せんで温める方法が最適ですが、外出先で湯せんする手段がない場合は、紙パックや缶のままの状態で使い捨てカイロや体温で温めることができます。ママやパパの上着の内側にしばらく液体ミルクを入れておくと、体温で温まりますよ。

ちなみに、缶の状態でのミルクウォーマーの使用、電子レンジ・直火による加熱は避けてください。缶のまま加熱すると、高温になり取り出す際にやけどの恐れがあります。また、缶の内圧が上昇し破裂する危険もあるため、使用する際は必ず哺乳瓶に移してからにしてください。

江崎グリコ・横山さん:紙パックの液体ミルクも、紙パックのままでの湯せんや電子レンジでの加熱は避けてください。
電子レンジを使用すると加熱の状態が不均衡になるため、一部分だけ高熱になり赤ちゃんがやけどをする恐れがあります。
また、紙パックのまま温めるとパックの変形や中身の衛生状態の悪化などが生じる可能性があるので、必ず哺乳瓶に移し替えてから湯せんで加熱するようにしてください。

Q2:液体ミルクの量が少し足りないときはどうすればいいですか?

江崎グリコ・横山さん:「アイクレオ赤ちゃんミルク」は容量が125mlなので、お子さんの月齢によっては量が少し足りない場合があります。複数パック使っていただく方法もありますが、粉ミルクとの併用もおすすめです。

まず、必要量から125ml分を引いた量(165ml必要な場合40ml・できあがりは165ml)の粉ミルクを調乳します。そこに液体ミルクを追加すると、必要量のミルクが作れます。

この方法は、調乳した粉ミルクをすぐに人肌程度の温度にしたいときの裏ワザとしても使えます。調乳した粉ミルクに液体ミルクを入れることで、ちょうどいい温度のミルクをつくることができますよ!

明治・江原さん:粉ミルクは月齢に応じてその都度作る量を調整できますが、液体ミルクはもともと容量が決まっているのと、一度開けたあとは雑菌が繁殖する恐れがあるため、2時間以内に飲み切らなくてはなりません。「明治ほほえみ らくらくミルク」は、月齢や飲む量に合わせて使える2種の容量(120ml・200ml)を展開していますが、飲み残してしまった場合は再利用せず、必ず破棄するようにしてください。キャップ式にもなっているため、外出先で飲み残してしまった場合でも、キャップをして持ち帰って破棄することもできます。

Q3:哺乳瓶がないときに授乳する方法はありますか?

江崎グリコ・横山さん:哺乳瓶がないときでも、使い捨てコップと液体ミルクがあれば授乳が可能です。以下の手順になります。

【哺乳瓶がないときの授乳方法】
①コップ半分の高さまで液体ミルクを注ぐ。
② 赤ちゃんをおくるみやタオルで包み、赤ちゃんの手がコップにあたらないようにする。
③赤ちゃんが目を覚ましているかしっかりと確認し、たて抱きにする。
④コップを赤ちゃんの下唇に当てる。このとき、コップの縁が赤ちゃんの上唇に触れるようにした状態でコップを軽く傾ける。
⑤口の中にミルクを注がないようにして、赤ちゃんが自分で飲むようにする。

この方法は、災害時のときなどに覚えておくと役に立ちます。もしものときのために、一度ご家庭で試してみてください。

─────◆─────◆─────

安全面や、外出先での温め方や粉ミルクとの併用方法など、覚えておきたい裏ワザについて、メーカーサイドのお話をしっかり聞けたことで、液体ミルクへの安心感が増しました。

2回目では、現在販売されている5種類の液体ミルクについて詳しく紹介。また、筆者が実際に飲み比べしたレポートもお届けします。

取材・文/秋音ゆう
※価格はすべて2023年9月現在のものです。

液体ミルクの記事は全3回。
2回目を読む。
3回目を読む。
(2回目は2023年10月4日、3回目は10月5日公開。公開日までURLリンク無効)