「自分がぐっすり眠れた後のわが子がこんなにかわいいなんて!」性教育YouTuberが産後ケア施設体験を語る

話題の産後ケア施設特集第2弾 #1 助産師・シオリーヌさんに聞く「産後ケアサービス」〜産後ケア施設体験編〜

助産師・性教育YouTuber:シオリーヌ

助産師であり、性教育YouTuberのシオリーヌさん。1歳のママ。  画像提供:シオリーヌ

性について、YouTubeで明るく楽しく伝えてくれる助産師のシオリーヌさんは、2022年夏に第1子を出産。同年10月に、株式会社Rine(リーヌ)を立ち上げ、産後ケア事業を始めることを動画で発表しました。

そして2023年3月には、温浴施設に助産師と看護師が出張し、託児と育児相談を利用できる「産後ケア銭湯」をテスト的に実施。ママパパがゆっくりお風呂に入り、休息ができるサービスは大好評で、現在は毎月第4月曜日に開催しています。

産後ケア施設連載1回目では、シオリーヌさんにご自身が体験した産後ケアサービスと、会社を設立した経緯についてお聞きしました。

(産後ケア施設連載全4回の1回目。)

シオリーヌ(大貫詩織)
助産師・性教育YouTuber。総合病院産婦人科、精神科児童思春期病棟で勤務ののち、全国の学校や企業で性教育に関する講演・イベントの講師を務める。性教育YouTuberとして性を学べる動画を配信中。2022年10月株式会社Rineを設立。地元にて産後ケア銭湯を開始。

「産後生活のリアル」は知識だけではわからなかった

産後わずか数ヵ月で会社を設立したシオリーヌさんは、「産後ケア事業をやりたいと思ったことが、会社を立ち上げたいちばんのきっかけだった」と言います。そこには、自身が経験した“産後生活のリアル”がありました。
 
「助産師の経験から、産後の生活がどういうものかという知識はありました。でも、いざ自分が体験してみると“大変さ”のレベルが段違いでした。

中でも大変だったのが、夜泣きや授乳の対応でまとまった睡眠が取れなかったこと。細切れ睡眠が続くと1日が終わる感覚がなくなってしまって……。“今日”が永遠に続いているような、そんな日々を過ごしていましたね」(シオリーヌさん)

産後に実家のサポートを得られなかったシオリーヌさんは、育児休暇を取得したパートナーのつくしさんとツーオペで育児に取り組みました。

YouTubeチャンネルにアップされた動画にも、深夜に眠れずにぐずってしまう赤ちゃんを抱きながら「私は眠いよ」と途方に暮れるシオリーヌさんの様子が収録されています。

「ワンオペでがんばっている方からすると、パートナーと二人で育児ができる自分は恵まれていると思うし、実際にそう言われることもありました。しかし、『私と夫のどちらも絶対に倒れるわけにはいかない』という状況は、プレッシャーにもなりました。

私は産後2ヵ月で仕事を再開したので、仕事中は夫が子どもを見てくれました。その分、仕事以外の時間は育児をしないと夫に悪いと思い込んでしまって。

保育園が決まるまでは、『仕事・子育て・寝る』という生活で、自分のために使える時間は全くなかったですね」(シオリーヌさん)

産後ケア施設利用時のわが子のかわいさにビックリ

このような状況から一時的に解放してくれたのが、産後ケアサービスでした。

産後ケア施設で赤ちゃんを預けてゆっくり眠った翌日のシオリーヌさん(右)とつくしさん(左)。赤ちゃんはベビールームにいるので、朝食もゆっくり食べられます。  写真提供:シオリーヌ

「産後1ヵ月のときに仕事で産後ケア施設を利用した際、夜泣きを気にせずぐっすり眠った後に見る我が子のかわいさにびっくりしてしまって! 子どもが泣いても『元気だねえ』と笑っていられる余裕が生まれました。

自宅ではゆっくり休めず、常に気を張って生活をしていたけど、産後ケアを利用すると、『ふ~っっ』と肩の力を抜くことができて、うまく呼吸ができるようにもなって。

実際には産後1~3ヵ月の間に、各月1回ずつ利用したのですが、『来月になれば、また産後ケアが利用できる!』と思えたのは心強かったですね。1ヵ月を乗り切る目標にしていました」(シオリーヌさん)

「産後のママパパが元気でいることが、赤ちゃんが健やかに育つことに直結している」と身をもって経験したシオリーヌさんは、改めて産後ケアサービスの必要性を実感しました。

「産後ケア事業を進めていくにあたり、私が個人で動くよりもきちんとした形があったほうがいいと思い、法人化を決めました」(シオリーヌさん)

産後ケア施設で実感した「人の手を借りる練習」

産後ケア施設の託児を利用して、二人でドライブも。「助手席久しぶり」というコメントが印象的でした。  写真提供:シオリーヌ

シオリーヌさんが産後1ヵ月のころに利用した産後ケア施設には、助産師や保育士など有資格者が数多く在籍しており、24時間いつでも赤ちゃんを預けることができます。にもかかわらず、最初は赤ちゃんを預けることに抵抗があったと言います。

「それまでは子どもとずっと一緒にいたので、離れることに対する不安や申し訳ない気持ちが先立ってしまって。でも、いざ預けてみると、自分がどんどん元気になっていくのを感じましたね」(シオリーヌさん)

次第に、仕事や用事があるときだけでなく、「ボーッとしたい」という理由だけで預けていいと思えるようにも。スタッフの対応も、その気持ちを後押ししてくれました。

「食事の時間などタイミングを見て、スタッフの方が『赤ちゃん預かりましょうか?』『ゆっくり食べてくださいね』と声をかけてくれて。すごくうれしかったですね。

預けたときには『この絵本を一緒に読みました』と託児の様子も伝えてくれるので、しっかり構ってもらえていることがわかると、不安も解消されました。

あと『子どもを預かってほしい』と連絡すると、どんなときでも助産師さんが明るい声で『すぐに伺いますね!』と答えてくれたことにも、すごく救われましたね」(シオリーヌさん)

ツーオペで子育てしているときには、つくしさんとゆっくり話をする時間を取ることも難しかったですが、預けている間はその悩みも解消されました。

「夫婦で交代しながら育児をしていると、どうしてもすれ違いの生活になってしまいます。交代のタイミングも、授乳やオムツ替えについての事務的な連絡ばかり。コミュニケーションというより、申し送りみたいな感じで。

でも産後ケア施設に滞在している間、子どもを預けて、夫とカフェでお茶をする時間がとれました。二人ともぐっすり眠り、回復した状態で、『最近の育児について、どう思っている? しんどいと感じる部分はある?』と話す機会を持てたのは、本当にありがたかったですね」(シオリーヌさん)

シオリーヌさんは、産後ケア施設で過ごした期間について「人の手を借りる練習をさせてもらった」と振り返ります。

子どもを預けて自分のための時間を過ごし、時間になると子どもが帰ってくる。このやりとりを繰り返すことで、誰かに子どもを見てもらうことのハードルが少しずつ低くなっていくことも、産後ケアサービスを利用する良さの一つなのでしょう。

2回目では、シオリーヌさんが始めた「産後ケア銭湯」について伺います。

取材・文/畑 菜穂子

産後ケア施設特集のシオリーヌさんインタビューは全2回。
2回目を読む
(※2回目は2023年11月29日公開。公開日までリンク無効)

シオリーヌ

助産師・性教育YouTuber

助産師、性教育YouTuber。株式会社Rine代表取締役。 総合病院産婦人科、精神科児童思春期病棟で勤務ののち、全国の学校や企業で性教育に関する講演・イベントの講師を務める。性教育YouTuberとして性を学べる動画を配信中。2022年10月性教育の普及と子育て支援に取り組む(株)Rineを設立。 主な著書:『CHOICE 自分で選びとるための「性」の知識』(イースト・プレス)、『こどもジェンダー』(ワニブックス)、『やらねばならぬと思いつつ ~超初級 性教育サポートBOOK~』(ハガツサブックス)など多数。 X:@shiori_mw

助産師、性教育YouTuber。株式会社Rine代表取締役。 総合病院産婦人科、精神科児童思春期病棟で勤務ののち、全国の学校や企業で性教育に関する講演・イベントの講師を務める。性教育YouTuberとして性を学べる動画を配信中。2022年10月性教育の普及と子育て支援に取り組む(株)Rineを設立。 主な著書:『CHOICE 自分で選びとるための「性」の知識』(イースト・プレス)、『こどもジェンダー』(ワニブックス)、『やらねばならぬと思いつつ ~超初級 性教育サポートBOOK~』(ハガツサブックス)など多数。 X:@shiori_mw

はた なおこ

畑 菜穂子

ライター

1979年生まれ。編集プロダクション勤務を経てフリーに。主にWEBメディアで活動中。子育て、性教育、グルメ、企業の採用案件などの取材・執筆を行う。多摩地域で、小学生の娘(2012年生まれ)、夫と暮らす。 Twitter @haricona

1979年生まれ。編集プロダクション勤務を経てフリーに。主にWEBメディアで活動中。子育て、性教育、グルメ、企業の採用案件などの取材・執筆を行う。多摩地域で、小学生の娘(2012年生まれ)、夫と暮らす。 Twitter @haricona