「正解はママが決めていい」東大医学部卒のママ医師が語る授乳の真実

教えて、もりたま先生! 「母乳とミルク」のウソ・ホント #3

育児に関する疑問を自分で解決すべく、海外の研究論文を読みあさったというもりたま先生。「ひとりで思い悩まないように、幅広い知識を取り入れるのが大切です」。  写真:村田克己

母乳かミルクか。プライベートでセンシティブな問題だからこそ、ネット上にはさまざまな情報が飛び交い、安心したり不安になったりするママが多いのかもしれません。第3回も前回(#2)に引き続き、東大医学部卒の医師で2児のママでもある“もりたま先生”こと森田麻里子先先生に、母乳とミルクに関する“噂”の真相を解き明かしていただきます。

「ミルクだと朝まで寝てくれる」はある意味ホント

――「ミルクは母乳に比べて腹持ちがよく、朝まで寝てくれる」というのは、本当でしょうか?

もりたま先生「たしかに、ミルクは腹持ちがいいと言えますね。母乳でも満足できる量をあげていれば大差はないと思うのですが、母乳の出がやや悪かったりすると、おなかをすかせて起きてしまうことは十分にあり得ます。母乳育児でも、腹持ちが不安で夜にだけミルクを足すママがいらっしゃいますが、それはそれでよいのではないでしょうか。

ただ、母乳がしっかり出ているのに、腹持ちのためだけを理由にミルクへ変えるとなると、それほど効果があるのかなと。十分な量の母乳をミルクへ変えるだけで、おなかいっぱいで朝まで寝てくれるかといったら、難しいかもしれません。たとえば、母乳の出がやや悪くて、赤ちゃんが夜中に起きておなかを空かせているようだったら、夜の授乳のとき、ミルクを足すことでよく寝てくれることはあると思います」

――ある程度大きくなると、夜中に起きるのは、空腹だけが原因じゃなくなりますよね。

もりたま先生「その通りで、夜中に起きて泣くのは、小さいうちだとおなかが空いている場合がほとんどですが、だんだんその回数は減っていきます。少なくとも生後9ヵ月を過ぎたら、日中にしっかり栄養が取れていれば、夜中は起きなくてもすむはずです。たとえば、赤ちゃんにおっぱいをくわえながら寝るクセがついていたりすると、おっぱいそのものが恋しくて、夜中に何度も起きるケースがあります」

――そういう意味では、赤ちゃんにとって愛着がある母乳は、卒乳が難しいのでしょうか?

もりたま先生「おっぱいへの執着が強い子はいますよね。ミルク育児でも哺乳瓶に執着する子は多少いますが、ママのおっぱいに比べたら、スムーズに卒乳できるかもしれません。ただ、それも赤ちゃんによるもので、おっぱいでもあっさり離す子もいますし、個人差はあるかなと思います」

小児スリープコンサルタントの活動では、「睡眠の悩みとからめて、“2歳を過ぎても母乳をやめられない”というご相談をよく受けます」と、もりたま先生。    写真:村田克己

母乳もミルクもママがよいと思う選択がいちばん

――母乳育児、ミルク育児、混合育児のメリット・デメリットや噂の真相についてお話いただきました。もりたま先生は、それぞれの育児について、どんなタイプのママにおすすめされますか?

もりたま先生「赤ちゃんが小さいうちに仕事復帰する予定がなく、赤ちゃんと一緒に過ごすことができて母乳の出も悪くない、トラブルもないというママなら、まずは母乳育児がよいのではないでしょうか。産後早々に仕事復帰するママ、赤ちゃんと離れる時間が長いママは、早い段階からミルク育児に移行することになります。母乳の出が悪い、乳頭が切れてしまってあげられない場合も、ミルクを選んでまったく問題ないと思います。

母乳が出るし続けたいけれど、少し足りない、たまに日中2~3時間預けたい、夜中の授乳はパパに代われるようにしたいといった希望があるママは、混合育児になります。母乳の出具合や状況に合わせて、母乳とミルクの割合を調整していくのがいいのではないでしょうか。

どの選択であっても、ママがつらくない方法であることが正しい答えだと思います。私自身も気を付けなければと思うのですが、授乳を含め、育児はとても個別性の高いこと。

自分が知っている育児と、ほかの家庭の育児はまるで違います。家族構成もお子さんの性格も、ママの体の様子も考え方も、ライフスタイルも違う。自分がいいと思ったことが、ほかのママにとってもいいとは、まったくもって限りません。相手の考えを尊重しないといけないですし、ママも周りから言われたことをそんなに気にしなくて大丈夫(笑)。

ママが何をよいと思うか、ママの選択がいちばん大事です。逆にいうと、誰も正解を教えてくれないからこそ、ママ自身が正解を考えなければいけないのです。どういう子育てをしたいか、正解は自分の中にしかないはずですからね」

――自分がやりたい育児。そこがしっかりしていれば、まわりに惑わされず、自分の気持ちで選ぶことができそうです。

もりたま先生「先輩ママやママ友、おじいちゃん・おばあちゃん、医師や看護師、助産師といったプロフェッショナルな人、いろいろな人の話を聞きつつも、『自分はどうだろう?』というワンクッションは常に必要です。情報にふりまわされることなく、自分の意見に、どうか自信を持っていただきたいですね」

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