妊娠中のお腹の張りはなぜ起こるの? 病院に行くポイントを名専門医が語る

産婦人科医・安達知子先生に聞く「妊娠中に注意したい症状」 #2 妊娠中のお腹の張りについて

総合母子保健センター愛育病院名誉院長:安達 知子

お腹の張りを感じたときは、すぐ病院に行ったほうがいいのでしょうか?  写真:アフロ
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妊娠中に一度は「おなかが張る」と、感じたことのあるママも多いのではないでしょうか。

ただ、妊娠初期や中期にお腹が張る場合には、なんらかの異常が隠れていることも。

おなかが張る理由や、注意したいお腹の張り方、おなかが張ったときの対処法などについて、愛育病院名誉院長・産婦人科医の安達知子先生にお話を伺いました。

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安達知子(あだち・ともこ)
総合母子保健センター 愛育病院名誉院長。東京女子医科大学客員教授。東京女子医科大学医学部卒業後、同大学産婦人科学教室入局。米国ジョンズ・ホプキンス大学研究員、東京女子医科大学産婦人科助教授を経て、2017年より愛育病院院長、2022年名誉院長に就任。日本の産科学界を担う中心的存在の一人。

妊娠初期や中期におなかが張る場合も

出産が近づくと、おなかの張る頻度が増えるのは正常な経過ですが、妊娠初期や中期におなかの張りや違和感を覚えることもあります。

妊娠12週から妊娠18週ぐらいの間ですと、子宮が大きくなって子宮を支えているじん帯などが引っ張られることや、子宮の血流による影響が原因として考えられます。

特に、子宮が後屈している人の場合、妊娠すると子宮が大きくなって前屈の方向に移動してくるため、妊娠初期から中期の初めに軽い痛みや張りのような症状が出ることもあります。

また、子宮筋腫がある人は、筋腫を中心に軽い痛みやおなかの張りを感じることも。実は、子宮筋腫は妊娠20週まで大きくなることが知られています。子宮筋腫が大きくなると酸素や栄養がさらに必要になりますが、妊娠中は赤ちゃんに優先して酸素や栄養を送るため、子宮筋腫は血流不足から酸素不足に。正座を続けていて足先が痛くなった経験のある人も多いと思いますが、血流が悪くなって酸素が足りなくなると痛みが出ます。同様のことが子宮筋腫でも起こる場合があるのです。

子宮筋腫が妊娠中に大きくなることも

近年、高齢妊娠が増えているため、子宮筋腫がある状態で妊娠するケースも多くなっています。妊娠初期に3~4cm大だった子宮筋腫が、妊娠経過とともに大きくなって8~9cm大になることもよくあります。この大きくなった子宮筋腫によって子宮が軽く捻転することもあり、するとさらに血流が悪くなって酸素が行きにくくなり、痛みがかなり強く出るケースも。筋腫が変性、壊死を起こすと、発熱や子宮の痛みのみならず、子宮収縮が誘発されます。

まれですが、子宮内に感染が生じている場合にも、おなかの張りがみられます。おなかの張りだけでなく、発熱の症状がある場合にはなんらかの感染が疑われます。

痛み/発熱/出血などがあれば要注意

基本的に、おなかの張りがあっても安静にして治まるものは心配ないでしょう。

しかし、おなかの張りが痛みとして感じられるぐらい強くなってくる場合には、出産が近づいている可能性があります。妊娠37週以降であれば正期産(37~41週台での出産)なので問題はありませんが、妊娠37週未満でおなかの張りと痛みが続いたり、増したりする場合は、病院に連絡しましょう。これは、妊娠22週未満の場合には「切迫流産」、妊娠22週以降37週未満の場合には「切迫早産」と呼ばれる状態です。

また、おなかの張りとともに、発熱や出血、粘り気のあるおりものが増える、トイレが近いなどの症状がある場合にも、なんらかの異常が起こっている可能性が考えられます。

特殊なケースですが、子宮頸管がゆるみやすい「頸管無力症」の場合、少しのおなかの張りで子宮口が開いて、破水してしまうこともあります。流産や早産の原因になるため、早期発見できるように妊婦健診は定期的に受けましょう。

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