造形作家・山形明美さん「つくることが楽しくて、羊を100体つくってしまった」
ーー「どこ?」シリーズが10冊目の刊行とのこと、おめでとうございます! 振り返ってみて、いかがですか?
「『どこ?』シリーズをはじめたころは、撮影までの時間が不安で、ずっと何かをつくっていないと落ち着きませんでした。どんなふうに写真にうつるかわからないので、小物の数を増やしたり、パターンを変えてみたり、ありとあらゆる方法で備えました。
撮影を重ね、徐々に余裕がでてきたと思います。10冊目の『どこ? ほんのなかのさがしもの』は、どのページも、つくることが楽しくて楽しくて仕方なかったです」
ーーそれは素敵ですね! 特にどんなところが、一番楽しいと感じますか?
「動物をつくることです。実は『どこ?』シリーズの最初の数冊は、生き物をほとんど登場させていませんでした。読者のお子さんたちが主人公になって、絵本のなかを冒険してほしいという理由からです。
でもだんだん、背景ばかりをつくるのが苦しくなってきた。それで、シリーズ5冊目の『どこ? ながいたびのさがしもの』から、人間以外の生き物を登場させることになりました。
もともとぬいぐるみをつくる仕事をしていたこともあって、動物をつくるが大好き。うれしくなって、羊を100体もつくったこともありました! つくりだすと、止まらなくなってしまうんですよね」
ーー山形さんは、どのようにして1つ1つの世界を考えているですか?
「最初にざっくりとした絵本のテーマを決めたら、1見開きずつ、簡単にラフを描いていきます。それができたらもう、パーツをつくりはじめちゃう。つくる途中でアイデアが生まれて、最初に描いていたラフと全然違うものが完成することもよくあります。
手を動かしながら考えたほうが、イメージが湧いてくることが多いですね。担当編集者の長岡さんが『好きなようにつくっていい』と言ってくれるので、ありがたいです」
ーーお二人の信頼関係があってこそですね。最後に、ずっと創作を続けられる理由を教えてください。
「やっぱり、実際に読んでくれる人からの反響をもらうと、うれしいです。大変な撮影があっても『どこ?』を読んでくれた子どもたちのうれしそうな顔をみると、つくってよかったぁとしみじみ感じます。
読者の方からいただいたお手紙には、大事に大事に、宝箱にしまってあります。『こんな「どこ?」をつくってください!』とリクエストをもらうこともあって、とってもおもしろいんですよ。創作意欲が湧いてきちゃいます」
「どこ?」があえて答えをのせていない理由
造形作家の山形さんも、担当編集者の長岡さんも、造形物の創作や撮影の大変さを「課題」ととらえ、楽しみながら「どこ?」をつくっていることがわかりました。
探しもの遊びが楽しめる「どこ?」シリーズには、答えのページがありません。答えがあると、答え合わせのために読んでしまうからだと、長岡さんは話します。
遠まわりに思えても、自分の目で見つけたときに代えがたい喜びのある「どこ?」シリーズ。この魅力的な「アナログ」時間を、皆さんも味わってみてはいかがでしょうか。
山形明美(やまがた あけみ)
静岡県生まれ。造形作家。おもに幼児雑誌などの、人形・ぬいぐるみやジオラマ製作を手がけている。
おもな作品に、『どこ? つきよのばんのさがしもの』『どこ? もりのなかのさがしもの』『どこ? とびらのむこうのさがしもの』『どこ? ふしぎなまちのさがしもの』『どこ? ながいたびのさがしもの』『どこ? めいろでさがしもの』『どこ? どうぶつたちとさがしもの』『どこ? クリスマスのさがしもの』『どこ? パーティーのさがしもの』がある。
記念すべき10冊目! 『どこ? ほんのなかのさがしもの』
最新刊のテーマは「本の旅」。つぎつぎとあらわれる絵本に、どんどん迷い込んでいって……?
「雲の上の世界」や「ねずみたちの台所」などの物語を味わいつつ、さがしもの遊びも楽しめる、ファン待望の最新刊。
山口 真央
幼児雑誌「げんき」「NHKのおかあさんといっしょ」「おともだち」「たのしい幼稚園」「テレビマガジン」の編集者兼ライター。2018年生まれの男子を育てる母。趣味はドラマとお笑いを観ること。
幼児雑誌「げんき」「NHKのおかあさんといっしょ」「おともだち」「たのしい幼稚園」「テレビマガジン」の編集者兼ライター。2018年生まれの男子を育てる母。趣味はドラマとお笑いを観ること。