水面を水無しで表現!? 造形作家とジオラマ撮影の奥深き「アナログ」世界

累計発行部数75万部「どこ?」シリーズ 造形作家と編集者に製作秘話を聞いた

編集者・ライター:山口 真央

長岡さん「水をつかわないで『水』を表現。撮影は課題の連続でした」

ーーおもちゃの背景ジオラマから、「どこ?」シリーズを製作することになった経緯を教えてください。

「『ミッケ!』(作/ジーン・マルゾーロ 絵/ウォルター・ウィック 訳/糸井重里 小学館)という絵本シリーズがあります。撮影された一枚の写真のなかから、指示されたものを探して遊ぶ絵本です。当時、私も山形さんもこの絵本が大好きで、探しもの遊びをするだけではなく、写真がどのように撮影されたのかを想像して楽しんでいました。

私が幼児誌から絵本の編集部へ異動になったとき、山形さんに写真絵本をつくりませんか、と提案したんです。丁寧な創作物をつくる山形さんとなら、できるという確信がありました」

ーーミニチュアの模型を、一発で撮影するのは、大変だったのではないでしょうか?

「そうですね。最初は試行錯誤の繰り返しでした。たとえばこの写真、どうやって撮影したか、わかりますか?」

『どこ? つきよのばんのさがしもの』の1シーン。

ーーうーん……。水のなかにパーツを浮かべて、針金で固定する、とかでしょうか?

「実はこれ、水は一切つかっていないんです。水面は波模様のステンドグラス、泡は透明な芳香剤で表現しています。

最初は、ジオラマの上に巨大な水槽を置いて、ばしゃばしゃと水面を揺らし、その影を映しこもうと試みたのですが、写真にはまったくうつらない。水の揺れなどの自然現象は、水そのものを使うのではなく、強調して表現しなければいけないとわかりました。

このように、『どこ?』シリーズの最初の撮影は、撮影の『課題』が絶えずありました。物が浮いているようにみえるにはどうしたらいいか、ぐにゃぐにゃにみえる世界はどう表現できるか、などなど。その都度、山形さん、カメラマンさんと相談し、技術を獲得してやってきました。

最近はどういう絵を撮るか決まったら、山形さんがご自宅でシミュレーションをして、仮撮影したものを送ってきてくださいます。20年の経験の蓄積のおかげで、だいぶ撮影がスムーズになりました」

『どこ? ほんのなかのさがしもの』の撮影中。海底を表現するために、ライトに工夫を凝らしています。

ーー水をつかっていないとのこと、驚きました! 20年間撮影していると、カメラや画像処理の技術も進歩したのではないですか?

「5冊目の『どこ? ながいたびのさがしもの』をつくっているときに、フィルムカメラからデジタルカメラにかわりました。それまではポラロイドを何枚も撮っては、拡大コピーしてチェックするということをくりかえしていたので、撮影したものをすぐにパソコンで確認できるのは、画期的でした。

変わったことはそれくらいで、基本的にCGはつかっていません。驚かれることが多いのですが、山形さんも私も『課題』があることの楽しさを知っているからだと思います。

撮影当日は、山形さん、カメラマンさんといっしょに、何時間もかけて一枚の「絵」を目指していきます。完成した写真をみたときの喜びは、何ごとにも代え難いものがありますね」

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