『ふぶきのあした』全ページ無料公開! 380万部の国民的ベストセラー「あらしのよるに」20年ぶり新シリーズがスタート!

「あらしのよるに」シリーズより『ふぶきのあした』を全ページ無料公開!

児童図書編集チーム

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作:きむらゆういち 絵:あべ弘士
※全ページ公開は4月10日(木)をもって、終了いたします。

ドウドウと ながれる かわを、まんてんの ほしぞらが しろく てらして いる。
その かわらに 一ぴきの オオカミが うちあげられた。

「お、おいら……いきてたでやんすか……。」
ぬれた からだが、さむくて たまらない。
やっとの おもいで からだを おこすと、オオカミは ちからの かぎりに さけんだ。
「メイ〜、メイ〜。」
こたえる ものは、だれも いない。
「あいつ……この ながれに のまれて……。」
オオカミは りょうてで かおを おおった。
どうやら この オオカミ、メイと いう ともだちと、この かわに とびこんだらしい。

オオカミの なまえを ガブと いった。
ガブは、メイと いう ヤギと ひみつの ともだちだった。
しかし、その ひみつが もりじゅうに ばれて しまい、
おいつめられた 二ひきは、この かわを わたって にげようと したのだ。
「ああ、メイ、こんな ことに なるなら、おいらと であわなければ よかったのに。」
ガブが かたを ふるわせて そう つぶやいた ときだ。
いきなり、うしろで こえが した。 

「わたしは であって よかったですよ。」
ガブが おどろいて ふりむく。
「メ、メイ、いきてたでやんすか!!」
「わたしも おんなじ ことを おもって、このかわらを さがしあるいていたんです。」
「ああ、おいら、もう あえないかと……。」
「ええ、ほんとうに よかった。」

二ひきは メイの あつめて きた ほしくさに くるまり、
なんどもよかったを くりかえし、ふかい ねむりに ついた。
しかしよかった と いえたのは、その ときだけだった。

二ひきが いく ところ すべて、かぜも ないのに こだちが ゆれた。
しげみが カサコソと なった。
リスや、サル、いろんな どうぶつたちが、かくれて 二ひきを のぞいて いるのだ。
「ねえ、あの 二ひきじゃ ないの。」
「ああ、きのう、かわに とびこんだ やつらか」
「いきて いたんだね。」
あちこちから ひそひそごえが きこえて くる。
二ひきの ことが もりじゅうに しれわたって いるからだ。
しかし、その ひそひそごえを 二ひきが そっと きいてみると もっと おそろしいことが わかった。

それは なかまを うらぎった ガブを オオカミたちは ぜったいに ゆるさない。
どこまででも おいかけて やつざきに する。
いっしょに いる ヤギも、その おいわいの ごちそうだ。
そういって さがしまわって いると いうのだ。

「どう しよう、ガブ。これじゃ すぐに みつかって しまいますよ。」
「ああ、もう だめでやんす。あいつら、ほんとうに そう するでやんす。
おいら、まえにも うらぎりものが ころされるのを……。」
ガブは あたまを かかえた。
あしが かすかに ふるえて いる。
「にげよう ガブ、あの やまの むこうに。」
メイが ひがしの そらによこたわる あおい やまなみを ゆびさした。
しかし、その やまの むこうの はなしを きいた ことが ない。
てっぺんは まっしろい ゆきで おおわれて いるのだ。
「きっと あの やまの むこうにも ありますよ。みどりの もりや、ふかふかの くさはらが。」
「おうっ、あるに きまってやす。」

二ひきは、どんな ところかも わからない やまの むこうに むかって あるきはじめた。
ほかの どうぶつに みつからないように、できるだけ やみの なかを すすみ、
ねむる ときは しげみの おくや いわあなに かくれた。
どうやら オオカミたちに きづかれてる ようすは ない。

二ひきは いつも いっしょに いられる ことが たのしかった。
いっしょに ねて、いっしょに おきて、いっしょに あるいた。
ただ、ガブには ひとつだけ つらい ことが あった。
いつも いっしょに いると、はらが へった ときも、となりに ヤギが いるのだ。
おいしそうな においは、かってに はなから しのびこんでくる。
メイにも ひとつだけ きに いらない ことが あった。
メイが ねてる ときに ガブが そっと でかけて いくことだ。
そして、かえって きた ときには かならず ちの においが した。
おそらく、のねずみや とりなんかを たべに いっているのだ。
そう しなくては ガブは いきて いけない ことも、メイに きを つかって
そっと でて いく ことも わかっている。
わかって いても すきには なれないのだ。

きょうも ガブが そうっと しげみの なかに もどってきた。
また、うしろで ちの においが する。
しばらく だまって よこに なって いた メイは、とうとう こう いって しまった。
「きょうは、なんびき、ころして きたんです?」
メイの ことばに、ガブは カチンと きた。
「おいらだって あんたを……。」
たべずに がまんして いると、いいかけた ときだ。
「おい、ガブたちを みたって いうのは この へんか。」
しげみの そとで オオカミたちの こえが した。
「ああ、サルを つかまえて ききだしたんだから まちがい ないさ・」
「もっと よく さがして みようぜ。」

二ひきは いきを ひそめた。
さいわい、かざしもだ。
においで きづかれる ことは ない。
オオカミの かずが どんどん ふえて、あたりを うろうろと さがしまわって いる。
しげみの なかに、オオカミが 二ひき、ザザッと はいって きた。

「このあたりが あやしいぜ。」
「おう、ぜったい みのがすなよ。」
おちばの なかに もぐりこむように かくれている 二ひきの はなさきに、
オオカミのあしが みえる。
「お。おい! ここに……。」
一ぴきの オオカミが さけんだ。
二ひきの しんぞうが やぶれそうに なる。

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