しかし、バーもマッキーが期待したオシャレなムードとはほど遠いさびれた雰囲気である。観葉植物の葉はくったりしおれているし、カウンターに置かれたランプもホコリが積もったままだ。
マッキーがビールのグラスを片手に、落ち着きなくバーの中を見回していると、これまた陰気なバーテンダーが口を開いた。
バーテンダー
「これ、召し上がります?」
皿にのっているのはかんぴょうののり巻きとナスのつけもの。
バーには不似合いだ。
バーテンダー
「夜食にするつもりがあまっちゃって。」
キリさん
「じゃ、いただきます。かんぴょうは栃木の特産品でしたね。」
キリさんはかんぴょう巻きがあまり好きではなかったが、これも旅の縁。
バーテンダーはキリさんたちを好奇心に満ちた瞳でながめる。
バーテンダー
「お仕事ですか? ひょっとしてマスコミの人?」
キリさん
「ちがいますよ。なんでそう思ったんですか?」
バーテンダー
「このホテルに若い人が来るのは久しぶりなんでね。ミイラ騒ぎのあとは、東京から雑誌の編集者や記者がよく話を聞きに来たもんだが。」
マッキー
「ミイラ騒ぎ? なんだそりゃ?」