【試し読み連載】5分で読める都道府県ミステリー!「疾走するミイラ男」(栃木県)

『日本一周ナゾトキ珍道中』[3]

粟生 こずえ

しかし、バーもマッキーが期待したオシャレなムードとはほど遠いさびれた雰囲気である。観葉植物の葉はくったりしおれているし、カウンターに置かれたランプもホコリが積もったままだ。

マッキーがビールのグラスを片手に、落ち着きなくバーの中を見回していると、これまた陰気なバーテンダーが口を開いた。

バーテンダー

「これ、召し上がります?」

皿にのっているのはかんぴょうののり巻きとナスのつけもの。

バーには不似合いだ。

バーテンダー

「夜食にするつもりがあまっちゃって。」

キリさん

「じゃ、いただきます。かんぴょうは栃木の特産品でしたね。」

キリさんはかんぴょう巻きがあまり好きではなかったが、これも旅の縁。

バーテンダーはキリさんたちを好奇心に満ちた瞳でながめる。

バーテンダー

「お仕事ですか? ひょっとしてマスコミの人?」

キリさん

「ちがいますよ。なんでそう思ったんですか?」

バーテンダー

「このホテルに若い人が来るのは久しぶりなんでね。ミイラ騒ぎのあとは、東京から雑誌の編集者や記者がよく話を聞きに来たもんだが。」

マッキー

「ミイラ騒ぎ? なんだそりゃ?」

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