キリさんはまゆをひそめた。
キリさん
「考えられないなぁ。ミイラを盗もうとするなんて。」
マッキー
「世の中には、変わったもののコレクターっていっぱいいるんだよ。で、犯人はつかまったんですか?」
マッキーはバーテンダーに水を向ける。
バーテンダーはもったいつけてビールを一口飲み、口元を軽くぬぐった。
バーテンダー
「いいえ。しかしね、その晩、何人もの人が、走るミイラ男を目撃したんですよ。白い包帯をなびかせて走る姿を……。」
マッキー
「ミイラを盗み損なったどろぼうがミイラになっちゃったってこと? これがホントの『ミイラ取りがミイラになる』かぁ!」
「ミイラ取りがミイラになる」ということわざは、「ミイラ探しに行った人が帰ってこず、自分がミイラになってしまうこと」に由来する。転じて、「人を説得したのに逆に説得されて相手と同意見になる」という意味もある。
キリさんはマッキーの言葉をスルーして、バーテンダーの顔をのぞきこんだ。
キリさん
「でも、日本のミイラは包帯なんて巻いてないんでしょ?」
バーテンダーはニヤッとした。
バーテンダー
「いい指摘ですね。この事件を受けて、オカルト研究者が雑誌に発表した説はこうです。その走るミイラは、はるばるエジプトからやってきたミイラではないかと。エジプトのミイラが、大谷寺のミイラを迎えにやってきたんじゃないかと。」
キリさん
「あははは! 都市伝説ってのはそうやってできるんですね。」
キリさんは切り口がだいぶ乾燥したのり巻きを口に放りこんで、おかしそうに笑った。
キリさん
「ぼくには走るミイラ男の正体がわかりましたよ。だれだったかまではわかりませんが、からくり自体は見当がつきましたね。」
【Q】
走るミイラ男の正体はなんだったのだろうか?