【試し読み連載】5分で読める都道府県ミステリー!「疾走するミイラ男」(栃木県)

『日本一周ナゾトキ珍道中』[3]

粟生 こずえ

キリさんはまゆをひそめた。

キリさん

「考えられないなぁ。ミイラを盗もうとするなんて。」

マッキー

「世の中には、変わったもののコレクターっていっぱいいるんだよ。で、犯人はつかまったんですか?」

マッキーはバーテンダーに水を向ける。

バーテンダーはもったいつけてビールを一口飲み、口元を軽くぬぐった。

バーテンダー

「いいえ。しかしね、その晩、何人もの人が、走るミイラ男を目撃したんですよ。白い包帯をなびかせて走る姿を……。」

イラスト:井出エミ
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マッキー

「ミイラを盗み損なったどろぼうがミイラになっちゃったってこと? これがホントの『ミイラ取りがミイラになる』かぁ!」

「ミイラ取りがミイラになる」ということわざは、「ミイラ探しに行った人が帰ってこず、自分がミイラになってしまうこと」に由来する。転じて、「人を説得したのに逆に説得されて相手と同意見になる」という意味もある。

キリさんはマッキーの言葉をスルーして、バーテンダーの顔をのぞきこんだ。

キリさん

「でも、日本のミイラは包帯なんて巻いてないんでしょ?」

バーテンダーはニヤッとした。

バーテンダー

「いい指摘ですね。この事件を受けて、オカルト研究者が雑誌に発表した説はこうです。その走るミイラは、はるばるエジプトからやってきたミイラではないかと。エジプトのミイラが、大谷寺のミイラを迎えにやってきたんじゃないかと。」

キリさん

「あははは! 都市伝説ってのはそうやってできるんですね。」

キリさんは切り口がだいぶ乾燥したのり巻きを口に放りこんで、おかしそうに笑った。

キリさん

「ぼくには走るミイラ男の正体がわかりましたよ。だれだったかまではわかりませんが、からくり自体は見当がつきましたね。」

【Q】
走るミイラ男の正体はなんだったのだろうか?

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