「日本のムーミン」多様性を描いて 10周年を迎える「はりねずみのルーチカ」シリーズが生まれるまで

作家・かんのゆうこさんインタビューはりねずみやもぐらや妖精たちの物語「はりねずみのルーチカ」の魅力

児童図書編集チーム

ー「はりねずみのルーチカ」シリーズがうまれた生まれたきっかけはなんですか?

作家のかんのゆうこさんに聞きました。

2011年に東日本大震災が起きたとき、私の心は、悲しみと不安でいっぱいになり、すっかり元気がなくなってしまいました。私と同じように、毎日悲しみに暮れ、不安な気持ちで過ごしている人たちの心に、小さな灯をともすような物語が書けたらいいな……という思いから、ルーチカの物語を書きはじめたんです。

「はりねずみのルーチカ」シリーズ第1作、『はりねずみのルーチカ』。はりねずみのルーチカは、もぐらのソルと大のなかよし。ある日ふたりは、おいしいジャムをつくるためにあかすぐりの実を探しに森へ出かけます。そこでふたりが出会うのは……。ふしぎなフェリエの国のふしぎないきものたちがくりひろげる、優しい友情の物語。

──物語を書くときに、決めていることはありますか?

3つのことを決めています。

1 ルーチカたちに、武器を使わせたり、暴力でけがをさせたり、命をうばうようなことをさせないこと。

2 登場人物たちが、性格的にけしてやりそうもないことを、書き手や、物語展開の都合でやらせたりしないこと。

3 登場人物ひとりひとりの存在を尊重(大切にして敬うこと)し、彼らが私に語ってくれる物語に耳をかたむけること。

『はりねずみのルーチカ カギのおとしもの』。ルーチカは、みおぼえのない小さなカギをひろいます。カギに導かれて、新しい冒険がはじまります。

──読者からの思い出深い感想がありましたら、教えてください

読者カードの項目の一つに、好きなキャラクターと、その子を好きな理由を書く欄があります。ルーチカを好きだと言ってくれる子どもたちの、好きな理由のほとんどが、「ルーチカの心がやさしいところ」と書いてくれるのを見ると、いつも胸がいっぱいになります。

『はりねずみのルーチカ ふしぎなトラム』ルーチカたちが妖精の魔法で小さくなって、フェリエの国の小さい生き物たちと助け合いながらミクロの世界を探検します。

ー読者の皆様へメッセージをお願いします。

「はりねずみのルーチカ」を書きはじめて、今年で10年。たくさんの読者のみなさんがルーチカたちを愛してくださったおかげで、ここまで書き続けることができました。

フェリエの国は、どこにあるのかといえば、本当はみなさんの心の中にあります。世界で一番近い場所だから、いつでも、どんなときでも、いくつになっても、会おうと思えばいつでも会うことができるのです。

これからもみなさんの心のなかに、ルーチカたちが生き続けますように。

クリスマスがちかづいて、フェリエの国にすむ、はりねずみのルーチカは、いいことを思いつきました。ひとびとの国からもちかえってきた「キラキラ」を夜空にかざって、仲間たちに星空をみせてあげるのです。

「優しい気持ち」になれるのが物語の魅力

「はりねずみのルーチカ」にでてくるルーチカやいきものたちは、こころやさしいものたちばかりです。読むと、穏やかな気持ちになります。作家のかんのゆうこさんがおっしゃっているように、心に明るい「灯」がともります。

学校や家庭、職場でちょっといやなことがあったとき、元気になりたいときに手にとってみたらいかがでしょうか。シリーズ13作のなかから、ぜひ気になるものがありましたらご覧ください。

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