オードリー・タンの「聞く力」が凄い!  「様子見社会」日本に差し込む光とは

(対談)石崎洋司×近藤弥生子

理不尽な校則と責任を取りたがらない「様子見社会」

石崎:日本では最近、中高生たちが声を上げたことがきっかけとなって、都議会で取り上げられ、ツーブロック禁止校則や下着の色を規制した校則が、都立高校ではゼロになりました。

その議論の中で驚いたのが、

ツーブロックが社会的に一般的な髪型かどうかということは、校則で禁止するかどうかには全く関係がない。世の中の9割以上がツーブロックを認めるようになれば、校則も廃止する

という主旨のことを、他県のある校長先生が言っているのを目にしたことです。

これって、校則を変える権限があるのに、自分の責任では判断しないと言っているの と同じじゃないか、と。

よく日本は同調圧力が強いと言われますが、そうではなくて、むしろ「失敗したくない」から様子を見る、様子見社会なんじゃないか、と思います。

近藤:「様子見社会」って上手い表現ですね。ほんとうにそうですよね。

石崎:不登校についても、オードリーのおばあちゃんが嘆いたように、世間に向けて恥ずかしいというような感覚、日本では今もそのまま残っていると思います。

日本には、未だにギフテッドクラスもなければ、飛び級もない。同時に授業についていけない子たちへのフォローもない。そのまま卒業させている。

多様性が大事とは日本でも言われていますが、「普通」から外れてしまう子たちを「例外だから、特殊な人だから」「しょうがない」と放り出してしまっている

でもね、もう様子見を止めるときじゃないか、と思います。

近藤:日本では不登校とホーム・スクーリングが凄く増えていると担当の編集の方から聞きました。

すごくできる子をもったご家庭が、東南アジアなどの海外に出てしまっているとも聞きます。

ハイレベル人材の海外流出にオードリーが出した、驚きの回答とは?

近藤:台湾でもハイレベル人材の海外流出はトップレベルと言われているんです。台湾は人口が2360万人ほどで、経済規模からして海外に行ったほうが稼げるので。

石崎:最近は日本の進学校の優秀な生徒が東大ではなく、海外の大学を目指すことも増えています。

近藤:オードリーさんに、ハイレベル人材の海外流出をどう思うか聞いてみたことがあります。

彼女は、「全く問題ないんじゃない。どうせ台湾は食べ物もおいしいしいし、海外で経験を積んで、もっとすごい人を連れて帰ってきてくれるよ」と。

実際、オードリーさんの活躍を見て、台湾にすごい人たちが戻ってきてくれています。

アメリカのマイクロソフトでAI開発マネージャーをされていた杜奕瑾さんが、台湾に戻って「AIラボ」を創立したんです。

石崎:それは凄い。頭脳流出したとしても、戻って来たくなるような社会にすれば良い。その視点はまだ誰もいっていなかったと思います。

目からうろこが落ちる思いです。

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