絵本「読み聞かせ習慣」 子どもの豊かな成長を後押しする「ことばの力」とは 国立小の元司書教諭が解説
【「絵本」でことばを育み心を耕し国語力の素地を養う#1】親子で一緒に楽しむことから始まる読書習慣
2024.10.07
「国語力」は、豊かな成長や他教科の学び、社会生活に不可欠
「小学校に入ると同時に学び始める国語。教科書に書かれた文章(物語)を読んで理解したり、考えたり、話し合ったりするなど、たくさんのことを学びます。これら、国語の授業での学びは、他の教科の学びにも密接に関わっています」と齊藤先生。
「例えば、算数や理科の問題文を理解し解くためには、時間的な順序や推移を捉え、具体的に問題場面をイメージすることのできる読解力が求められます。
また、社会科では過去に生きた人々の思いや苦しみを共感し、自分たちの社会や生活を支えてくれている人々の工夫や努力を捉えるとともに、批判的に分析する能力が求められます。
これらを可能にするのは、ことばを理解する、ことばを使って考える(想像する)、ことばを媒介にして他者と話し合うことのできる『ことばの力』があるからです。このことから考えても、国語力は生きるための基盤といえます。そして、国語力は、子どもたちの豊かな成長に欠かせない要素といえるでしょう」(齊藤先生)。
齊藤先生は、「国語力は個人の社会生活にも直結します」と続けます。
「適切なことばで思考や感情を表現することは、コミュニケーション能力を高めるだけでなく、他者との関係を築くための重要な力となるからです。
社会生活は、一方的に自分を発信するだけでは成り立ちません。他者のことばを受け止め、寄り添い、場合によっては対立するところを話し合い、折り合いをつけながら、他者を理解したり協力して問題解決を図ったりすることが求められます。
このような他者との関わりは、家族や友達といった身近なところから、やがては国を超えたグローバルな関係にまで及ぶこともあるでしょう」(齊藤先生)。
絵本は、子どもたちの「栄養」となり「ことばの力」を引き出す
情報化やグローバル化、価値観の多様化が急速に進む「これからの時代」を生きる子どもたちは、親世代が経験してきた以上に高度な判断を求められることも多いでしょう。そんな時代において、「ことばの力」は、これまで以上に必要となるでしょう。
「『ことばの力』を引き出すために、絵本の力は決して小さくありません。また、ストーリーはもちろん、文字と共に、絵やデザインを楽しむことができる絵本は、ことばを育むだけでなく、心を耕してくれます。
絵本は子どもたちの栄養となり、安定剤となるでしょう。まだ絵本を一人で読むことができない未就学児や読書習慣がない小学生も、ことばの力を育み、心を耕すために、まずは親子で、絵本の読み聞かせを始めてみてはいかがでしょうか」(齊藤先生)
齊藤先生は続けます。「読み聞かせは、少しずつ未就学児から始めるのが理想的ですが、小学校低学年、中学年になってから取り入れても、決して遅くはありません。実際、私が小学校教諭時代に、低学年、中学年、高学年になってからも、絵本の読み聞かせによって、読書習慣が身に付いた子どもも多くいました。
6年生でも絵本の読み聞かせが大好きな子も珍しくありません。自分で本を読めるからといって、読み聞かせに興味をもたないというものでもありません。自分で読む読書と他者に読んでもらう読み聞かせは退け合うものではないのです」
ふだん本をあまり読まないという子どもでも、親や学校の先生が寄り添いながら、絵本の読み聞かせを習慣化していくことで、その魅力に気が付き、やがて自主的に読書を楽しむようになっていくと言います。
「絵本の読み聞かせの積み重ねにより、子どもたちは、絵本を読むことの楽しさを知るでしょう。楽しいと思う気持ちは継続性と結びつき、絵本の読み聞かせは習慣化し、やがては読書習慣へとつながっていきます。そのために、まずは親子で、絵本の読み聞かせを始めてみてはいかがでしょうか。
大人がきっかけをつくってあげることが必要です。そして、子どもによって、年齢によって、絵本との出会わせ方を工夫することが大切です」(齊藤先生)