「褒めて育てる」はホントに正解? 「ある褒められ方」で優秀な子までダメになる衝撃の事実

中野信子「新版 空気を読む脳」#1 心理実験で教える褒め方 (2/4) 1ページ目に戻る

難しい課題を避ける褒められた子

実はすでに1990年代の終わりに、次のような実験が行われています。コロンビア大学のミューラーとデュエックによる研究です。

人種や社会経済的地位(Socio-Economic Status:SES)の異なる、10歳から12歳までの子どもたち約400人に、知能テストを受けてもらいます。テストの内容は、並べられたいくつかの図形を見て、その続きにはどんな図形がくるのかを答えるというもの。

おそらくみなさんの多くが子どものころに学校で受けたことがあるテストと近いものです。完全に同じものではありませんが、下のような感じのテストです。

『新版 空気を読む脳』より
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すぐわかってしまったと思いますが、答えは2です。

テストのあと、実験者たちは解答を集め、採点を行います。が、子どもたちには実際の成績は秘匿しておきます。その代わり個別に「あなたの成績は100点満点中80点だ」と全員に伝えるのです。

ちなみに、いつも優秀な成績をとっている子どもの中には「80点で優秀」とはなかなか感じにくい子どももいると思いますが、ここでは平均的な子どもについての分析をご紹介していきます。

テストを受けた子どもたちは、3つのグループに分けられます。そして、成績以外に子どもたちに伝えるコメントを、次のように変えていきます。

・グループ1 「本当に頭がいいんだね」と褒める。
・グループ2 「努力のかいがあったね」と褒める。
・グループ3 何のコメントもしない。

子どもを褒めることが本当に子どもの自信を育て、自己肯定感を高めるのなら、子どもは褒められれば褒められるほど、より難しい課題に挑戦したり、より困難な状況を好んで選んだりしそうなものです。

実験では、子どもたちに知能テストの成績とコメントを伝えたあと、さらに課題を与えます。この場面では、ふたつの課題のうちからひとつを選んでもらいます。

ひとつは難しく、平均的な子どもたちには問題が解けないかもしれないという水準の難易度です。しかし、やりがいがあり、正解に至らなかったとしても何かしらを学びとることができるような課題です。

もうひとつはずっとやさしいもので、さくさくと解けてしまいます。ただ、そこから学べるものはあまりない、という課題です。

3つのグループに分けられた子どもたちは、ふたつの課題のうち、一体どちらを選んだでしょうか? 難しい課題を選ばなかった子どもたちの割合を表にして比べてみます。

『新版 空気を読む脳』より

いかがでしょうか。「本当に頭がいいんだね」と褒められたグループ1の子どもたちは、何も言われなかったグループ3の子どもたちよりも、難しい課題を回避した子どもの割合が高くなりました。

褒めることが自尊心を高めると信じてきた人々にとっては、衝撃的な結果であると思います。

「頭がいいね」と褒めたことによって過半数の65%がやさしいほうの課題を選び、難しい課題を避けたのです。「頭がいいね」と褒めることが、子どもたちから難しい課題をやろうとする気力を奪い、より良い成績を大人たちに確実に見せられる、やさしい課題を選択させるという圧力として働いていたと考えることができます。

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