5つのステップで「待ち上手」になった親 子どもの驚くべき成長・子育てのイライラからの解放 「先生の先生」が解説

【子どもの才能を伸ばす「待ち上手」な親 #3】待ち上手が身についた親御さんの今

元公立小学校指導教諭、ベネッセ教育総合研究所教育イノベーションセンター主任研究員:庄子 寛之

「待ち上手」な親になるためのステップを順序よく踏んでコツを身につけていくと、子育ての悩みが薄らいでいきます。  写真:アフロ

洋服が脱ぎっぱなしだったり、ゲームをいつまでもやめなかったりするなど、子どもの悪習慣にイライラを募らせている親は多いものです。毎日のように小言をいって、𠮟ることに疲れている親御さんもいることでしょう。

元公立小学校の先生である庄子寛之先生は、親子関係が良好で子どもがのびのびと育っている家庭には「待ち上手」な姿勢があることを見出しました。

子どもの生活習慣がなかなか直らず、イライラしがちな家庭に向けて、先生が「待ち上手」になれる5つのステップを丁寧に解説します(全3回の3回目、#1#2を読む)。

◆庄子 寛之(しょうじ ひろゆき)
元公立小学校指導教諭、ベネッセ教育総合研究所教育イノベーションセンター主任研究員。
大学院にて臨床心理学科を修了し、道徳教育や人を動かす心理を専門とする。これまでに担任した児童は500人以上。「先生の先生」として教育関係者だけでなく、企業や保護者向けに、2年間で44都道府県での研修・講演を行う。

【親が「待ち上手」であることが子どもの才能を伸ばす】の連載は、全3回。
第1回を読む。
第2回を読む。
※公開日までリンク無効

子どもに何かを伝えようと思ったとき、どんな伝え方をしていますか?

元公立小学校の先生である庄子寛之先生は、子育てがうまくいっている家庭には「待ち上手」という姿勢があることを見出しています。

待ち上手とは、口出ししたくなるタイミングでもジッと我が子を見守り、子どもを追いすぎないことです。そして、その姿勢を身につけるには5つのステップをクリアしていく必要があります。

「連載1回では『自分を整える』を、連載2回では『ただ見る』と『我が子から学ぶ』を解説しました。これら3つのステップをすべて身につけられたのなら、次は4ステップ目の『伝える』という段階です。

子育て中は、子どもに何かをきちんと伝えなければならない場面もあります。とはいえ、その伝え方について普段、自分がどのような言い方をしているか思い返してみたことはあるでしょうか。

実は、これだけはいわなくちゃと思って、多くの言葉を使って、子どもを追いかけるようにして伝えていることほど何も伝わっていません。それどころか、子どもは親が追うたびにますます離れていくことでしょう。

どうしても何か伝えたいことがあるときは、子どもが親に寄ってきたときがベストタイミングです。また、言葉は短く明確に、子どもが何をいわれたか真意がつかめるように話すことも大切です」(庄子先生)

親から子どもに話すときは、主語は常に「(親である)私は」であることも重要だと先生はいいます。「普通の6年生は……」だったり、子どもの友だちを引き合いに出して「○○ちゃんは……」と伝えても、親御さんのメッセージにはなりません。

「私は(お母さんは、あるいはお父さんは)○○だと思うよ」など、I(私は)メッセージを徹底しましょう。

子どもが考えている時間を「待つ」!

親子間のコミュニケーションでは、子どもの発言を聞く場面もあります。しかし、子どもが考えている時間を待つことができず、間髪入れずに、あれこれ命令口調で指示をしてしまう親もいます。

これに対して庄子先生は、次のようにアドバイスします。

「『どうしてそう思うの?』『どうしたらいいと思う?』など、親から子どもに問いを投げかけても、我が子からはなかなか答えが返ってこないことがあります。しかし、ここで親御さんが言葉を加えて、子どもから答えを引き出してはいけません。

子どもが沈黙して考えているときは、何も話さずにじっと待ってあげてください。

そして、我が子が口を開いたら、どんなことをいっても受けとめてあげましょう。子どもが話していることが大人の世界では納得いかないことでも、それを頭から否定せず、子どもには『話してくれてありがとう』と添えて、親から子どもにすべてを受け入れるという愛を伝えてください。

それを積み重ねていくと、いつしか子どもとお互いの考えを伝え合える、いい対話ができるようになります」(庄子先生)

子どもが噓をつくのは、親に原因がある!?

子どもが噓をつく場合、実はその原因は親にあることがあります。子どもから答えを引き出す際、たとえばケンカの原因は相手にあるなど、親が聞きたい言葉を子どもの口から発するようにその雰囲気を出している(誘導している)ことがあるのです。
そのため、子どもが沈黙したなら、親は余計なことは何もせずに、ただじっと待つことが肝心です。

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