子どもの「困った行動」を引き起こす食事の正体 「低血糖」「栄養不足」を専門家が徹底指導

子どもの困った行動を改善する食事 #1 低血糖

医学博士(大阪大学):野口 由美

普段の何気ない食事が問題行動を引き起こす?

私たちの身体は食べたものでできているといわれますが、最近では、体調不良だけではなく、パニック障害などの精神的な疾患も栄養不足が関係していることがわかってきています。具体的にどのような症状を訴える子がいるのか、野口先生は次のように話します。

「当クリニックを受診される子どもの中には、『いじめなどはなく、学校に行きたい気持ちはあるのに、朝起きられず、不登校になってしまう』『玄関や校門までは行くものの、その先に行こうとすると急にドキドキしてきて動けなくなる』など、さまざまなケースがあります。

そのような子に普段どのような食事をしているかを聞くと、朝食を抜いていたり、菓子パンなどで朝ごはんを済ませていたりと、食事に問題があることがほとんど。実際に血液検査を行うと、低血糖、タンパク質や鉄欠乏といった結果が見られます。つまり、栄養トラブルが関係しているのです」(野口先生)

栄養と“困った行動”の関係性

栄養トラブルの中でも、困った行動と関連しているのは低血糖と栄養不足の2つだと、野口先生は続けます。

「低血糖と栄養不足は相互に作用していますから、それぞれへの対策が必要です。しかし、まず行うべきなのは低血糖対策です。低血糖を改善しない限り、栄養を補充しても症状は良くならないからです。

そもそも血糖とは、血液中に含まれるブドウ糖のこと。ブドウ糖は、脳や筋肉のエネルギー源として利用される栄養素です。

『ブドウ糖が足りない=エネルギー不足』なので、頭が働かなくなったり、身体も思うように動かせなくなったりします」(野口先生)

大人でも、仕事をしていて夕方になると頭がボーッとしてきて、甘い物が欲しくなることがあります。こうしたときは、まさに低血糖状態に陥っている状態です。

「低血糖になると、頭にも筋肉にもエネルギーがいかなくなりますから、次のような症状が現れます。

<低血糖になると見られる症状>

・頭がボーッとする
・一つのことに集中できない
・話を聞いていても眠くなる
・頭に霧がかかったような感じがする
・難しいことを言われると、思考がストップする
・朝起き上がることができない
・じっと座っていられない
・しんどくて、学校まで歩くことができない

低血糖は、感情にも影響をもたらします。低血糖になると、身体はホルモンの一種であるアドレナリンの分泌をうながし、血糖値を上げようとします。

アドレナリンが分泌されるときというのは、緊急事態のようなモード。たとえば突然、熊やライオンに遭遇した場面を想像していただくと理解しやすいでしょう。『戦うか、逃げるか』という緊急事態ですから、一瞬で身体に緊張が走ります。

そのため、ドキドキして汗をかいたり、頭に血がのぼってイライラしたり、不安や恐怖を感じることがあります。次は、低血糖によるアドレナリン分泌で起こる感情にまつわる症状です」(野口先生)

<低血糖によるアドレナリン分泌で起こる症状>

・先生にあてられると、緊張して異常に汗をかいてしまう
・勉強でわからないことがあると、パニック状態になる
・夜中にドキドキして目が覚めて、不安でたまらなくなる

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