「宿題したくない」にどう答える? 子どもが心から納得できる声かけを専門家が伝授
シリーズ「子どもの声をきく」#1-3 子どもアドボカシー協議会理事長・相澤仁さん~子どもの声に困ったら~
2022.10.19
NPO法人子どもアドボカシー協会理事長・大分大学福祉健康科学部教授:相澤 仁
「子どもは親の言うことを素直に聞くべき」と考えている大人へ
一方で、「子どもは親や学校の言うこと、決めたことを素直に聞くものだ」と考えている親もいるでしょう。
実は「素直」には2つの意味があります。ひとつは「素直に親の言うこと、学校の言うことを聞く」という「聞く素直」。もうひとつは「自分の言いたいことをそのまま話す」という「話す素直」です。
日本の文化は、前者の「聞く素直」にウエイトを置いているため、どうしても言うことを聞く素直さを求めてしまう。親自身も子ども時代、言いたいことを「正直に話す素直」よりも、「親の言うことを聞く素直」を推奨されて育ってきている人が多いですから、仕方ないことだと思います。
振り返ってみれば自分が子どものころ、先生や親からていねいに自分の話を聞いてもらったうえで、「それならしょうがない」「ならばこうしよう」などと納得感を得ながら大きくなってきたと言いきれる大人はどのくらいいるでしょう。
すべての要望を叶えてもらえなかったとしても、「この範囲なら自分で選んで」と制限付きでも常に選ばせてもらうことができたかというと、そうでもなかった親も多いのではないでしょうか。
学校や家庭で意向を聞かれても尊重してもらえなかった経験、もっとはっきり言えば、自分たち子どものことを、子ども抜きで決められてしまった経験を多くの人はもっているのではないでしょうか。
そうした背景からも、子どもの意見を尊重して決めるというよりは、「子どものことは親の私が一番よくわかっているから」「この子にはこれがいい」と判断して子どもの意見を聞かず、聞いたとしても説得して親が選んだ方向へ導いている面もあるのではないでしょうか。
進路、習い事、子どもが着る洋服などは特に、そういった傾向があります。
しかし、子どもには自分の意見を表明する権利があることは、覚えていてほしいです。そして、子どもが素直に自分の意見を言える人間に育つように、日常生活の中でできるだけ耳を傾けてほしい。
そうすることで、親も子も幸せな人生を歩みやすくなります。
親は子どもから発する些細なSOSにも気づきやすくなり、例えばいじめや不登校といった深刻な事態なども、初期段階で防ぎやすくなるでしょう。
また、多少負担に感じてもお互いに合意と納得を得る作業を積み重ねていくことで、子どもは「自分の意見を尊重してもらえた」と思え、ひいてはそれが、何があっても自分の存在を認められる「自己肯定感」、自分ならできると前向きになれる「自己効力感」につながっていきます。
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得てして大人は教育やしつけの延長で、「約束」という名の一方的な指示を子どもに押し付けてしまいがち。
とはいえ、その習慣を断ち切ること、さらに忙しい日常で、一つ一つのことを「納得して合意」してもらうのは非常に骨が折れる作業でもあります。子どもに意思決定をさせることで周りに迷惑をかけるリスクなども頭をよぎるでしょう。
まずはできる日にできることから少しずつ、試してみてはいかがでしょうか。
相澤 仁(あいざわ・まさし)
全国子どもアドボカシー協議会理事長。1956年埼玉県生まれ。立教大学大学院文学研究科教育学専攻博士課程後期課程満期退学。国立武蔵野学院長を経て、2016年4月より、大分大学福祉健康科学部教授。専門は、子ども家庭福祉と非行臨床。1982年から約30年間、児童自立支援施設にケアワーカーなどとして勤務。長年子どもたちと寝食をともにする生活を送り、実践研究を重ねてきた。
現在、日本子ども家庭福祉学会会長、厚生労働省社会保障審議会児童部会部会長代理、全国家庭養護推進ネットワーク共同代表、全国子ども家庭養育支援研究会会長も兼任。
取材・文/桜田容子
桜田 容子
ライター。主に女性誌やウェブメディアで、女性の生き方、子育て、マネー分野などの取材・執筆を行う。2014年生まれの男児のママ。息子に揚げ足を取られてばかりの日々で、子育て・仕事・家事と、力戦奮闘している。
ライター。主に女性誌やウェブメディアで、女性の生き方、子育て、マネー分野などの取材・執筆を行う。2014年生まれの男児のママ。息子に揚げ足を取られてばかりの日々で、子育て・仕事・家事と、力戦奮闘している。
相澤 仁
1956年埼玉県生まれ。立教大学大学院文学研究科教育学専攻博士課程後期課程満期退学。国立武蔵野学院長を経て、2016年4月より、大分大学福祉健康科学部教授。専門は、子ども家庭福祉と非行臨床。1982年から約30年間、児童自立支援施設にケアワーカーなどとして勤務。長年子どもたちと寝食をともにする生活を送り、実践研究を重ねてきた。 現在、日本子ども家庭福祉学会会長、厚生労働省社会保障審議会児童部会部会長代理、全国家庭養護推進ネットワーク共同代表、全国子ども家庭養育支援研究会会長も兼任。 『おおいたの子ども家庭福祉──子育て満足度日本一をめざして』(編著:井上登生、河野洋子、相澤仁/明石書店刊2022年)、『みんなで育てる家庭養護シリーズ全5巻』(編集代表、明石書店刊2021年)、『やさしくわかる社会的養護シリーズ全7巻』(編集代表明石書店刊2012~2014年)、『社会的養護Ⅰ』(共編、中央法規刊2019年)など。
1956年埼玉県生まれ。立教大学大学院文学研究科教育学専攻博士課程後期課程満期退学。国立武蔵野学院長を経て、2016年4月より、大分大学福祉健康科学部教授。専門は、子ども家庭福祉と非行臨床。1982年から約30年間、児童自立支援施設にケアワーカーなどとして勤務。長年子どもたちと寝食をともにする生活を送り、実践研究を重ねてきた。 現在、日本子ども家庭福祉学会会長、厚生労働省社会保障審議会児童部会部会長代理、全国家庭養護推進ネットワーク共同代表、全国子ども家庭養育支援研究会会長も兼任。 『おおいたの子ども家庭福祉──子育て満足度日本一をめざして』(編著:井上登生、河野洋子、相澤仁/明石書店刊2022年)、『みんなで育てる家庭養護シリーズ全5巻』(編集代表、明石書店刊2021年)、『やさしくわかる社会的養護シリーズ全7巻』(編集代表明石書店刊2012~2014年)、『社会的養護Ⅰ』(共編、中央法規刊2019年)など。