児童養護施設出身モデル・田中れいか 内閣官房の有識者会議に参加する理由

児童養護施設出身モデル・田中れいかさんに聞く「なりたい自分になる」 #4~いま思うこと編~

モデル:田中 れいか

今後の夢は社会的養護のさらなる啓発

田中さんは今、新たな目標に向かっています。生い立ち関係なく、みんななりたい“自分”になれるというメッセージを伝えたい、という軸は変わらないまま、モデルの一歩先へ夢は進化しました。田中さんは力強く語ります。

「これまでモデルの仕事など自分の姿を通して、施設で暮らす子どもたちにメッセージを伝えてきましたが、自分の法人(一般社団法人「たすけあい」)を作ったので、今後は『生い立ち関係なく、なりたい自分になれるんだ!』ということをより強く伝えていきたいと思っています。

同時に社会的養護と呼ばれる分野の啓発をさらに頑張って、情報不足といわれる世界の土台を上げていきたいです」

地域の大人に求めることは“小さな優しさ”

全国に612ヵ所、約2万5000人(2022年3月末現在)の子どもたちが児童養護施設に暮らしています。地域の大人として私たちはどんなことができるでしょうか。田中さんに伺いました。

「寄付なども一つの方法だと思いますが、地域の大人としては、もしお子さんのお友だちで施設に暮らしている子がいれば、おうちに招くとか、小さなことでいいと思うんです。

そこで一緒におやつやごはんを食べたり、駅まで送ったり。そういう日常的なことが施設の子どもにとっては貴重な経験になるんです。

私自身もそうで、『好きなもの食べていいよ』『持ち帰っていいよ』『そろそろ帰る時間だよ』とか、友だちのお母さんからの小さな関わりがすごくうれしかった思い出があります。

親と離れて暮らす子どもたちにとって、親以外の大人からも大切にされる経験はすごく大事なんです。大人になってから忘れられない思い出になるんです。そういう積極的な関わりを地域の保護者に求めたいですね」

2021年に出版した初の著書『児童養護施設というわたしのおうち』(旬報社)では、施設のネガティブなイメージを払拭したいと、自身の経験をもとに生活や進学事情をリアルに綴った田中さん。

施設出身というひとりの当事者から、社会的養護の世界を俯瞰(ふかん)して考えられるほどに成長をとげ、確実に一歩前へ進んでいます。

◆◆◆◆◆
さまざまな事情で親と一緒に暮らせず、児童養護施設で共同生活を送る子どもたちが、全国で2万5000人います。にもかかわらず、施設での暮らしぶりはあまりにも知られていません。

田中さんは言います。「いまだに施設におさがりのランドセルを送ってくる人がいる」と。ランドセルなど学用品の購入費は、国から予算が下りているので保障されています。

新1年生にとって、新しいランドセルを自分で選んで買うことは、一生の思い出になります。だから中古品は不要なのです。こうした当事者目線の支援が求められています。

まずは正しく知って理解することが、支援の第一歩です。等身大で生きる田中さんの存在が、社会を変えるきっかけになるかもしれません。

取材・文/大楽 眞衣子

2021年12月に出版された初の著書『児童養護施設という私のおうち』(旬報社)。田中れいかさんの生い立ちから、児童養護施設や社会的養護について詳しくわかる1冊。世田谷区長・保坂展人氏との対談も掲載。
18 件
たなか れいか

田中 れいか

Reika Tanaka
モデル・一般社団法人たすけあい代表理事

親の離婚をきっかけに、7歳から18歳までの11年間世田谷区にある児童養護施設で暮らす。退所後、短期大学へ進学し保育士資格を取得。その後、モデルの道に。ミス・ユニバース2018茨城県大会準グランプリ・特別賞受賞。 モデル業のかたわら、自らの経験をもとに、親元を離れて暮らす「社会的養護」の子どもたちへの理解の輪を広げる講演活動や情報発信をしている。 2020年4月社会的養護専門情報サイト「たすけあい」を創設。同年12月より、児童養護施設や里親家庭から進学する子たちの受験費用をサポートする団体、一般社団法人ゆめさぽ代表理事に就任。 著書に『児童養護施設という私のおうち』(旬報社)がある。 ●田中れいか 公式ホームページ ●インスタグラム tanaka_reika ●ツイッター @tanaka_reika ●社会的養護専門情報サイト「たすけあい」 ●進学応援プロジェクト「ゆめさぽ」

親の離婚をきっかけに、7歳から18歳までの11年間世田谷区にある児童養護施設で暮らす。退所後、短期大学へ進学し保育士資格を取得。その後、モデルの道に。ミス・ユニバース2018茨城県大会準グランプリ・特別賞受賞。 モデル業のかたわら、自らの経験をもとに、親元を離れて暮らす「社会的養護」の子どもたちへの理解の輪を広げる講演活動や情報発信をしている。 2020年4月社会的養護専門情報サイト「たすけあい」を創設。同年12月より、児童養護施設や里親家庭から進学する子たちの受験費用をサポートする団体、一般社団法人ゆめさぽ代表理事に就任。 著書に『児童養護施設という私のおうち』(旬報社)がある。 ●田中れいか 公式ホームページ ●インスタグラム tanaka_reika ●ツイッター @tanaka_reika ●社会的養護専門情報サイト「たすけあい」 ●進学応援プロジェクト「ゆめさぽ」

だいらく まいこ

大楽 眞衣子

社会派子育てライター

社会派子育てライター。全国紙記者を経てフリーに。3人の育児で培った生活者目線を活かし、現在は雑誌やWEBで子育てや女性の生き方に関わる社会派記事を執筆している。大学で児童学を専攻中で、保育士資格を取得。2歳差3兄弟の母。昆虫好き。イラストは三男による「ママ」 ●公式HP「my luck」

社会派子育てライター。全国紙記者を経てフリーに。3人の育児で培った生活者目線を活かし、現在は雑誌やWEBで子育てや女性の生き方に関わる社会派記事を執筆している。大学で児童学を専攻中で、保育士資格を取得。2歳差3兄弟の母。昆虫好き。イラストは三男による「ママ」 ●公式HP「my luck」