浜野謙太は息子の前で光った!? しまおまほが取材で気づいた「ミュージシャンの子育て」とは?

エッセイスト・しまおまほインタビュー #1「人気ミュージシャンの子どもたち」 (2/3) 1ページ目に戻る

エッセイスト:しまお まほ

ミュージシャンの子どもと聞くと、どこか特別な存在に思えますが、実際はどうだったのでしょうか。

「最初は、『うちの親はスターなんだ!』といった自覚がある子もいるのかなと思っていたんです。あとはCMに出てくるようなロックな親と子とか、そんなイメージ。でも、実際に会ってみると、子どもたちからそういう意識は感じなかったですね」と、しまおさんは話します。

むしろ印象的だったのは、“ふつうの親子”としての日常の近さでした。

「どのミュージシャンも、自分の子どもの生活についてすごくよく知っているんです。習い事や学校での出来事、“あそこの公園でさあ”みたいなローカルな話まで。忙しい生活を送っていても、普段からよくお子さんと話しているのが伝わってきました。

インタビュー後に『あの……うちの子、大丈夫でしたか?』って不安そうに聞いてこられるのも含めて(笑)、どのおうちも“ふつうの親子”という印象でした」(しまおさん)

浜野謙太さんは「バカにする担当」!?

「朝ごはんはトト(父)が作る」と話すのは、7人組ファンクバンド「在日ファンク」浜野謙太さんの息子、ロクくん(取材当時9歳)。

父・浜野さんのことを「オレをバカにする担当」としつつも、帰りを待ちわびているという、ちょっと反抗するようでいて、実は大好き、という思いが隠しきれないところが印象的です。

「ロクくんは、小さいころに『トトは光って見える』と言っていたそうです。物心ついたときにコロナ禍でライブに行けなかったり、実はおうちにテレビがなかったりで、表舞台に立つハマケン(浜野さんの愛称)さんの姿はあまり知らない。

だから、“スターとして”というよりも、“家族のお父さんとしてまぶしい”という感覚で出てきた言葉なんだろうなと感じました」(しまおさん)

2025年10月には絵本『さいしょのにんげん』(堀道広共著/三輪舎)も出版した、しまおまほさん。
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ミュージシャンの親以上に個性豊かな子どもの面々

一方で、“創作仲間”のような親子もいました。3人組アコースティックパンクバンド「水中、それは苦しい」のジョニー大蔵大臣さんと、息子の俊太郎くん(取材当時9歳)です。

「もはや親子を超えた関係性を感じましたね。お父さんから『一発ギャグはここで一拍置いたほうがいい』とか、学芸会では『恥ずかしがってたら、逆に恥ずかしいから』みたいなプロ直伝のアドバイスをもらって、俊太郎くんがそれをちゃんと実践しているんです。

師匠のような感じで子どもを支えつつも、創作の相棒のような一心同体感がありました」(しまおさん)

ウェブメディア『音楽ナタリー』の連載を書籍化。ミュージシャンの中には取材依頼をすると「待ってました!」という声もあったという。

3人組のHIPHOPユニット「FNCY」のG.RINAさんの娘、万葉(まは)ちゃん(取材当時13歳)は「とにかくパワフルで、すごい女の子」ながら、意外な一面も印象深かったといいます。

「万葉ちゃんは、テンション高くてグイグイくる女の子だったけど、『怖いもの』を聞いたときに『友だちと気まずくなったときの空気』と答えたのがすごく印象的でした。彼女の、繊細な一面が見えた気がして。

取材場所の回転寿司店では、カニ味噌の軍艦巻きを何皿もリピートした後に、黒糖わらび餅、3色だんご、ミルクレープ、大学芋ときて最後にマグロという信じられない食べかたも忘れられません(笑)。

一方、お母さんのG.RINAさんは、大根おろしのみの皿をおかわりしていたり。そういうのもすごくおもしろかったですね」(しまおさん)

しまおさんの視点で一人ひとり違う子どもの語りを追っていくと、「案外、わが家とそう変わらない」と感じる場面がいくつも出てきます。“ふつうの親”と“ミュージシャン”という二つの顔が同時に見えてくるところもこのインタビューならではのおもしろさです。

「虫酸が走る」も時間が育てるおかしみ

書籍化にあたり、しまおさんは、インタビューした子どもたちに、“今”を探る「追加アンケート」を実施。そこには「おもしろさは、時間が経つとより熟成される」というしまおさんの狙いがありました。

「年月に勝るおもしろいものってないんですよね。数年たつと“あのときの発言”が別の意味を帯びてきたり、本人も読み返せば別の感情がわき起こったりする。その熟成感を出したかったんです」

たとえば、3人からなるラップグループ「スチャダラパー」Boseさんの娘、ゲバたんは取材当時は小学3年生(9歳)でしたが、書籍化のタイミングでは小学6年生になっていました。思春期の入り口に立つ絶妙なお年ごろです。アンケートには「読んでいてかなり虫酸が走りました」「不愉快極まりない」といった、“小6らしい”コメントも。

「小6って、学校で一番上だから大人の意識もすごくあって。でも中学生になると、また“赤ちゃん”に戻るといいますか。制服もブカブカで、上級生に囲まれてまたちょっと謙虚になる。数年前の自分を振り返って『さむー』『こわー』とか言っちゃうのって、小6くらいの子どもならではなのかなと。

以前、道端で小学3年生くらいの子が『アンパンマン好きだったのが黒歴史』って言っていて、思春期に向けてとがり始めてるなーと微笑ましかったです。アンパンマンは黒歴史ではないだろうと(笑)。これも成長なんですよね。やなせたかしさんもビックリな発言ですよね」(しまおさん)

取材してわかった“ミュージシャンの親”の特徴とは?

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