【発達障害・グレーゾーンの子】正しい「ほめ方」はこれ 名前を呼んで具体的に
なんとなく「ほめる」はNG! 子どもをほめるときは「目を見て」「望ましい行動」を付け加える
2023.10.11
直接の指導や支援会議への参加を通じて、これまで2000人をこえる子どもの支援に関わり、さまざまな特性を持つ子どもたちと過ごしてきた、特別支援教育のエキスパート・小嶋悠紀(こじま ゆうき)先生。前回のインタビューでは、発達障害の子どもたちと接するための最も基本的なスキル「ベーシック5」から「話しかける」について教えていただきました。今回は「ほめる」について、教えていただきます。
基本のスキル「ベーシック5」については、こちら(第1回)をご覧ください。
ほめるときに気をつけることは5つ
──「ベーシック5」にある、「ほめる」について、効果的な方法があれば教えてください。
小嶋悠紀先生(以下小嶋先生):「ほめる」ことはとても奥が深いことです。私が現場で効果のあった声かけやスキルをまとめた本『発達障害・グレーゾーンの子がグーンと伸びた 声かけ・接し方大全 イライラ・不安・パニックを減らす100のスキル』でもまるごと1章使ってまとめているほどです。
大人はなぜ、子どもをほめるのでしょう? それは、次も同じような「望ましい行動」をしてほしいからです。発達障害がある子も定型発達の子と同じように、「ほめる」ことで望ましい行動ができるようになります。また、望ましい行動が増えれば、問題行動は自然と減っていきます。
ところがなかには、「刺激を受け取りにくい」という特性がある子もいます。また、何が「望ましい行動」なのか未学習の子もいますから、大人がなんとなく「すごい」「えらい」と言うだけでは、何をほめられたのかもわからず、無意味に終わってしまうでしょう。
ほめるときは、「望ましい行動」を強い刺激(はっきり聞こえる声、身振り手振りなど)で、子どもに「入力」しなければいけません。強い刺激で入力することを、行動の「強化」と呼びます。ほめることで強化された行動は、また次の機会に出やすくなり、さらに、それがいったん身につくと失われにくくなります。この現象を「強化の原理」と呼びます。行動を強化し、身につけてもらうためにも、「君は今、ここを評価されているんだよ!」と、間違いなく伝わるほめ方を心がけましょう。
①名前を呼んでほめる(特定化)
名前を呼ばれないと、子どもは「自分がほめられている」と認知できないこともあります。ほめ言葉を言う前に、「○○くん」とその子の名前を呼び、こちらに意識が向いたことを確認してからほめましょう。これだけで、伝わり方がガラリと変わります。
②すぐほめる(即時性)
ワーキングメモリが弱い発達障害の子には、「あとでほめよう」が通用しません。自分がしたことを忘れてしまう場合もあるのです。必ず「その場で」「その瞬間に」ほめましょう。素早く・スパッと・タイミングを逃さずほめるのが大切です。
③具体的にほめる(明示性)
「座った姿勢がきれいで、すばらしい」
「今のやり方が、とてもいいね」
「大きな声で発表できたのはえらい」
など、ほめ言葉のなかで具体的に何がよかったのかを伝えるようにしましょう。単に「すごい」「すばらしい」という言葉を子どもに投げかけるだけでは伝わりません。
④増えてほしい「望ましい行動」を言葉にする(言語化)
問題行動や望ましくない行動が目立つ子を前にすると、大人はどうしても「指導」「注意」をしがちですが、「××はダメ!」と伝えるだけでは、「××」という望ましくない行動ばかりが子どもに入力されてしまいます。増えてほしい「望ましい行動」を言語化して入力してあげましょう。そう心がけるだけで自然に「ほめる」機会が増えるはずです。
⑤やっていることをそのまま述べる(事実の指摘)
「ほめるところが見つからない!」という場合は、その子がやっていることを、そのまま言葉にしましょう。たとえば何かをノートに書いているときは、「書いてる! 書いてる!」
こうやって笑顔でリズムよく、2回くり返して事実を言葉にすると、それだけでほめ言葉になります。これなら、「座ってる! 座ってる!」「きれい! きれい!」など、いくらでも思いつくでしょう。