【医師監修】うちの子「発達障害」? 診断、療育、就学…まずは正しい知識を知ろう!
「発達障害」について小児科医・児童精神科医・療育の専門家がわかりやすく解説
2024.03.18
「発達障害」ということばは多くの保護者の方の中にかなり定着してきた感があります。ですが、ほんとうに「発達障害」についての正しい知識が浸透しているかというと、そうとも言えない現状も見受けられます。コクリコでは小児科医、児童精神科医、療育の専門家などによる正しい知識と専門家からの子育てのアドバイスをお届けしています。
発達障害とは自閉症スペクトラム障害・注意欠陥多動性障害・学習障害などの総称
小児科医であり、発達障害研究の第一人者である榊原洋一先生に「発達障害」についての基本の知識を教えていただきました。
「発達障害」とはそもそも何か?
「発達障害」というのは、いくつかある障害の「総称」で診断名ではありません。発達障害の主要なものは
・自閉症スペクトラム障害(ASD)
・注意欠陥多動性障害(ADHD)
・学習障害(LD)
の3つです。
これらの障害が1人の子どもの中に2つ、3つと併存することがあるため、「発達障害」と一括りにして診断する医師もいますが、じつはそのような診断名はないのです。
そして、発達障害の診断には、障害ごとにしっかりした診断基準があると榊原先生は力説します。あいまいな「発達障害グレーゾーン」という言葉にむやみに振り回されないためにも、「なんとなく不安」「うちの子は発達障害かも?」と悩む保護者の方は、まずこちらの記事で正しい知識を確認してみてください。
「発達の遅れ・ばらつき」「育てにくさ」「遊び方」など発達障害の3つのおもな特徴
児童精神科医としてさまざまなお子さんを診ていらっしゃった三木崇弘先生に発達に不安を感じたときの第一歩をうかがいました。
発達障害は大きく3つに分けられます。とても簡単に説明をすると、自閉スペクトラム症(自閉症スペクトラム障害)は、こだわりや感覚過敏があり、社会性やコミュニケーションに困難があります。注意欠如・多動症(注意欠陥多動性障害)は、落ち着きのなさや衝動的な行動、不注意さがおもな症状です。限局性学習症(学習障害)は「文字・文章を書くこと」「計算すること」など特定の領域だけがうまくできない状態をいいます。
発達障害の特徴を見るポイントをとても簡単に挙げると3つあります。
1.発達の遅れ・ばらつき
「発語が少ない」「目が合わない」など、当該月齢の発達より明らかに遅れているときや、発達の度合いにばらつきがある場合は発達障害の可能性があります。
2.育てにくさ
0歳から「カンが強い」「置くと泣く」「反り返り方がすごい」などの特徴をもつお子さんもいます。
3.遊び方
独特の遊び方をすることがあります。例えば、定型発達の子どもはミニカーを手に持って走らせて遊ぶことが多いですが、発達障害の特性のある子は、ひたすらタイヤを回し続けたり、ミニカーを並べて正面からじっと見ていたり……。
気になる症状があったら、専門家に相談してみましょう。くわしくはこちら。
また、発達障害や発達特性のあるお子さんの療育とご家族の支援に長く携わっていらした療育の専門家であり、言語聴覚士・社会福祉士の原哲也先生は、「発達障害は症状が生活障害を引き起こしているかどうかが問題」とおっしゃいます。
生活のしにくさがあったとき、親がくり返し伝えたり、𠮟ったり、ときにどなったりすることがあるかもしれません。ですが、これらの方法では、発達障害の子どもはほとんど何も学ぶことができません。生活のしにくさを軽減するには、発達障害の子どものことを理解し、その子に必要なことを、その子に適した方法で教える必要があります。発達障害であると診断がおりることと、支援が必要かどうかは別の話ですので、生活のしにくさを感じたら、専門家に相談することも考えてみては? と先生からのアドバイスです。くわしくはこちら。
保護者の関わり方について
「ベーシック5」見つめる・微笑む・話しかける・触れる・ほめる
発達障害の子に接するときに大切なのは、「安心感を与えること」です、と教えてくださるのは、2000人を超える子どもの支援に関わり、さまざまな特性を持つ子どもたちと過ごしてきた、特別支援教育のエキスパート・小嶋悠紀先生です。
小嶋先生は著書『発達障害・グレーゾーンの子がグーンと伸びた 声かけ・接し方大全 イライラ・不安・パニックを減らす100のスキル』の中で、発達障害のお子さんと接するときの基本的なスキルとして、「ベーシック5」を提唱しています。それは、「見つめる」「微笑む」「話しかける」「触れる」「ほめる」。そしてさらに大切なのは、「一時一事」の原則。ひとつの時に、ひとつの事だけを伝えるのがポイント。
発達障害のある子、ここが心配 ここが大変
・言葉が遅い➔言葉の発達をうながす関わりをしてみましょう。方法はこちら。
・偏食がひどい➔じつは食べられない理由があることも。無理強いせず、「家族と一緒に、おいしく、楽しく食べる」を目標に。
・こだわり行動が続く➔「こだわり行動」は発達障害のある子の安心のもと。変えなくてもいい「こだわり行動」もあります。