子どもの夢に親がすること・できること 「指導より明るさを」と児童書作家が説く理由 

シリーズ「子どもの声をきく」#2‐4 児童書作家・杉山亮さん~子どもの夢への向き合い方~

児童書作家・ストーリーテラー:杉山 亮

将来の夢はたくさんあっていいし、失敗もしていい、サポートはしても親が導く必要はないと、児童書作家・杉山亮さんは語ります。  写真:アフロ

「子どもの声をきく」ことが昨今重要視されている中、26年前に一人の子どもの声を聞いてまとめた本『子どものことを子どもにきく』(杉山亮著・岩波書店刊)があります。

同書は、子どもが3歳から10歳までの8年間、年に1回ずつ父が息子にインタビューを続け、その内容を記録したもの。

著者の児童書作家兼ストーリーテラーの杉山亮さんは、当時4歳の隆さんとの会話の記録から、「今」につながる言葉を見出しました。

※全4回の4回目(#1#2#3を読む)

杉山亮(すぎやま・あきら)PROFILE
1954年東京生まれ。保父、おもちゃ作家を経て、児童書作家兼ストーリーテラーに。『もしかしたら名探偵』『いつのまにか名探偵』など23冊に及ぶ「あなたも名探偵」シリーズ、『ばけねこ』(原作・ポプラ社)などのおばけ話絵本シリーズなど、数多くの児童書を執筆。

将来の夢はいくつあってもいい

インタビュー相手だった子どもの隆(たかし)は37歳になりました(2022年11月現在)。今は「ネイチャーガイド」として、働いています。

前回(#3)もお話ししましたが、隆はネイチャーガイドとして、登山者などを連れて山道を案内する日もあれば、小学校などで自然について講義する日もあり、一つの職業の中で多様な仕事をしています。

それはいわば「二足のわらじ」に近いことだと思っていて、柔軟性を持って仕事をしていることを、いいなと思っています。

僕は、将来の夢は一つに絞る必要はないと考えています。一つに絞ると、それが上手くいかなかったときに挫折する恐れがあるから。実際、子ども時代に野球選手やバレリーナを夢見た子どものほとんどが挫折しますよね。

僕自身も、仕事をどんどん変えてきています。20代で保父を始め、それからおもちゃ作家になり、今は児童書作家とストーリーテラーをしています。

保父になって保育園で子どもと接するようになって初めて、おもちゃを作るのがおもしろそう、と思えて転職しました。そしておもちゃを作ってまた子どもたちと触れ合ううちに、今度は児童書を書くのも楽しそうだって思えてきました。

これを山登りにたとえると、頂上まで登って初めて向こう側の山が見えてきたことになります。登らなかったら、きっと見えていなかった。そして向かいの山に行きたくなったから、またそこを目指す、ということを繰り返しているわけです。

隆も、それでよかったと思っています。

子どもに将来の夢を聞くとき、大人は「大きくなったら何になりたい?」と聞くことが多いですよね。その質問の裏には、「大きくなって就く職業は一つであって、それを一生続けることが大事」という大人の固定観念が潜んでいるように思います。

それを取っ払って、「まず何になりたい?」という聞き方をしたい。「まずはどこから目指しますか?」「まずどこから登りますか?」という聞き方ですね。そのあと気が変わったら変わったでいい。

最初から“正解”へと続く設計図を引いて、そのとおりに歩く必要はない。ある程度進んでからコース変更をするのは悪いことではないし、それまで歩いてきたコースも全く無駄ではないんです。

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