子どもを叩く親を見たらどうすべき? もしやと感じたら「189(いちはやく)」
子育てアドバイザー・高祖常子氏「叩かない&どならない子育て2022」#4~子どもを叩く、どなるを親を目撃したら?~
2022.11.11
子育てアドバイザー・キャリアコンサルタント:高祖 常子
国や行政の子育てに関連した多数のプロジェクトで委員を務め、全国で講演なども行っている、子育てアドバイザーの高祖常子(こうそ・ときこ)さん。
子育ての専門家でもある高祖さんが、10年以上、強く言い続けていることは、「叩かない、どならない」子育て。暴言もNG。それらは子どもの成長に悪影響を及ぼすことが明らかになっていると教えてくれました。
ではもし、外出先で親が子どもを強くどなっていたり、叩くシーンを目撃した場合、私たち大人はどうすればいいのでしょう? 近所の家から大きな怒鳴り声が聞こえてきたら?
「虐待とわかったわけじゃないし」「おせっかいかも」とためらう気持ちはあるものの、もし大変なことにつながったら……と考えると罪悪感も残ります。
適切な対応を高祖さんに伺いました。
※過去の記事を読む
高祖常子(こうそ・ときこ)PROFILE
子育てアドバイザー・キャリアコンサルタント。2005年に育児情報誌『miku』編集長に就任し14年間活躍。Yahoo!ニュース公式コメンテーター。子育てにまつわる各NPOの理事や、国や行政の委員を歴任。子育てと働き方などの著書も多数で、全国で講演も開催。東京家政大学第9回渡邉辰五郎奨励賞受賞。3児の母。
どなったり叩いている親の心境は……
「どなる・叩く親を見た場合どうしたらいいのでしょうか」というのは、講座などでもよく出る質問です。通りがかりの場合は、どうしたらいいかと戸惑う方も多いのではないでしょうか。
路上だと一瞬で通り過ぎてしまったり、1回だけどなった(叩いた)親を目撃したとしても、声をかけるのはなかなか難しい。でも、かなりの時間どなり続けている、子どもを何度も叩く様子が見られたら、ぜひ何かアクションを起こしていただけたらと思います。
前の記事(#3)にも書きましたが、どなったり叩いたりしている親は、イライラが爆発している状態です。
#3=子どもへの怒りは第2次感情! 専門家が教える「どなる・叩く」をやめる方法
さらに、多くの親は「人前で子どもをどなって(叩いて)いる様子を見られたくない」「見られると恥ずかしい」などという気持ちを持つものです。そのようなこともあり、人前では感情を抑えている親も多いと思われます。
それでも子どもをどなったり、叩いている親はこの自制心を超えてしまっているということです。子どもをどなり続けている、叩き続けている場合は、親自身が、心を制御できなくなってしまっている状態と言えるでしょう。
怒りの中にいる親の気持ちをそらす
このときの親の気持ちは、怒りの爆発を抑えられなくなっている状態です。人目を気にする余裕もなくなって、怒りを子どもにぶつけているということですから、怒りに包まれてしまって周りが見えなくなっている親が「我に返る」よう、気づきを手伝うことも有効です。
「あ!」と言いながら、ちょっとつまずいてみたり、カバンを落としそうになったりすると、親も「えっ?」とあなたに注目するでしょう。そのときに、「あ、こんな場所だった」と少し冷静になれることもあります。
もちろん、この方法が絶対有効とは言えませんが、少しでも怒っている親の意識をそらすことにはなり、どなったり、叩いたりが収まる可能性はあります。
もうひとつは、子どもの気持ちを代弁することです。
状況が多少把握できていれば「おもちゃ買いたかったんだね」「眠くなっちゃったから、ぐずったのかな」など、子どもの気持ちや状況を客観的に伝えてみましょう。
親自身、いっぱいいっぱいの中、どうしても言うことを聞かないわが子に怒りが爆発している状況で、子どもの気持ちを考える余裕がなくなっています。
子どもの気持ちを伝えられることで、「そうか、そうだよね」とちょっと冷静になれるかもしれません。
親の行動を否定するのは基本的にNG
子どもをどなったり、叩いている場面に遭遇したとき、その親に対して「叩いちゃダメでしょ」「子どもをどなってもしょうがないよ」などと言いたくなるかもしれませんが、それは得策ではありません。
このように言われると、親は自分の非を見知らぬ相手から注意されたと感じ、恥ずかしさや怒りがさらに大きくなる可能性があります。
その場では暴力をやめるかもしれませんが、家に帰ってから「お前のせいで、私まで恥をかいた」などと、子どもへの暴力がエスカレートしてしまう可能性があります。
ただし、子どもを執拗(しつよう)に叩いたり蹴るなどして、子どもがケガをしそうな場合は、もちろん割って入りましょう。
児童相談所に連絡してもすぐに駆け付けてくれるわけではありませんから、子どもが危険と感じたら、間に入って、「○○だったんだね」と子どもの気持ちを代弁しながら、親の暴力を遮(さえぎ)りましょう。
ただし、あなた自身が無理するのはよくありません。その場で声をかけるのはとても勇気がいることです。声をかけられなかったからと言って、自分を責めないでください。