2日で9時間 「探究学舎」のリアル講座で「元素にハマる子」続出! 子どもが前のめりになる「仕掛け」をスゴ腕講師が明かす

【今こそ学力観のアップデートをするとき】好奇心の種をまく探究学舎の学び#3 探究スペシャル・参加ルポ

「探究スペシャル」に参加した子どもはみな「もっと知りたい」と好奇心が高まります。  写真:川崎ちづる

子どもの興味や好奇心に火をつける探究学舎。その授業には、連載第2回で紹介したオンライン教室に加えて、不定期・リアル会場(東京・三鷹市内)で実施している「探究スペシャル」があります。

探究スペシャルにはオンラインコースとは違った魅力、学びがあるという声も多く、全国から子どもたちが集まります。満席でなかなか受講できないコースもあるなか、今回はライターが娘(当時小学3年生)とともに探究スペシャル「元素編」に参加してきました。

参加した子どもたちはみな、2日間エネルギー全開。大人でもしり込みしてしまう「元素」という難解なテーマにもかかわらず、夢中になって学ぶ姿に圧倒されました。

授業の一部を紹介するとともに、そのおもしろさの理由に迫ります。

※全5回の第3回、#1を読む、#2を読む。

【探究学舎】
「探究学舎」は2005年に設立。独自に設計された「子どもが夢中になる授業」が評判を呼ぶ。以来、オリジナルの授業は80種類を超え、2023年の総受講者数は約1万人を数える。国語や理科など、学校の勉強を教えない独特のカリキュラムが注目を集め、「情熱大陸」(代表の宝槻泰伸氏出演)、「世界一受けたい授業」(カタチの秘密や科学実験を紹介)などメディア露出も急増中の話題の「塾」。

【探究学舎講師 森田太郎氏】
森田氏は2006年から都内の小学校に教諭として13年勤務したのちに、2019年に探究学舎講師へと転身。「海のいきもの」や「植物」の授業が評判。現在は公立小学校の非常勤講師でもある。「探究学舎講師」「公立小学校の非常勤講師」「4児の父親」という立場から、子どもの興味や関心を引き出すための考え方や行動について語っていただいた。

【好奇心の種をまく探究学舎の学び:第1回 第2回 第4回 第5回を読む】
※公開日までリンク無効

「探究スペシャル」ってどんな授業?

探究スペシャルは、1コマ90分の授業を1日3コマ、2日間で合計6コマ分(9時間)を学んでいく特別授業です。今回参加したのは、探究スペシャルの中でも人気があり、すぐに満席になってしまうという「元素編」

受講した探究スペシャル「元素編」。  画像提供:探究学舎

参加者は36名で、小学校1年生から中学生まで年齢はまちまち。6人が一つのグループとなってテーブルを囲み、2日間を通して同じグループで学んでいきます。

会場後方には保護者席があり、見学が可能です。見学といっても、ただうしろから眺めているだけではなく、子どもの近くで様子を見たり、一緒に参加したりすることもできます。

授業開始前の教室。スタッフが子どもたちと話すなど、なごやかな雰囲気です。  写真:川崎ちづる

この日のメイン講師は森田太郎氏、大崎映葉(うるは)氏。そのほかに探究学舎のスタッフが1テーブルに1人ついて、子どもたちをフォローします。

そもそも「元素」と聞いて、親世代は何を思い浮かべるでしょうか。「スイへーリーベ」というフレーズ(元素の周期表を覚えるための文言)が頭に浮かぶ方、必死に「元素周期表」を覚えた記憶を思い起こした方もいるでしょう。

こうしたイメージから、受講前は「小学生には難易度が高すぎるのでは?」という意見も多いそうですが、実際に授業を受けると元素にハマる子が続出するといいます。2日間の取材で、実際に子どもたちが「おもしろい!」「もっと知りたい」と変化していく姿を目の当たりにしました。

そもそも「元素」とは?

探究学舎の「元素編」1日目には、親世代が元素といわれて真っ先にイメージする「元素周期表」は一切出てきません。まずは、「元素って何?」という問いからスタートします。

「みんな、チームで元素だと思うものを机に並べてみて!」という森田氏の声に、子どもたちは必死に自分の持ち物などから“元素らしきもの”を探します。その後、チームごとに集めたものを発表。鉛筆や消しゴム、ペットボトルのキャップ、缶バッチ、空気、中には「人間」など、おもしろ回答が次々に飛び出します。

子どもたちの声を積極的に聞いていく講師の森田氏。  写真:川崎ちづる

森田氏が「発想がおもしろい」「お~、いいじゃないですか」などとコメントしていくと、「空気って元素なの?」「空気じゃなくて酸素じゃない?」と疑問をぶつけてくる子も現れます。それに対して森田氏は、「空気って元素なのかな?」「空気の中に入っているものが元素なんじゃないかという意見、すばらしい」など、それぞれの発言をしっかりすくい上げながら進めていきます。

次に、代表的な元素の紹介に入ります。その内容も、単にそれぞれの名前や特徴を伝えるだけではありません。「炭素は人の体の中にもあるんです!」「硫黄はオナラの匂いに近い(笑)」「銅は初詣に必須(10円玉の原料)」など、身近でちょっと笑える例などを交えて説明します。

子どもたちも楽しそうに合いの手をいれながら学びが進みます。  写真:川崎ちづる

「今紹介したものは、すべて『元素』。一つひとつが私たちの住んでいる、地球の材料です。でも、昔の人たちは、どの元素が何を作っているのかまではわからなかったんだ」。森田氏がこう話すと、今度は一気に古代ギリシャへとタイムスリップ。当時、水や空気、土、火が元素だと哲学者によって考えられていたことをコミカルに説明します。

古代の人々がそれぞれ主張を繰り広げます。  写真提供:探究学舎

「2000年以上もの長い間、この『水、空気、土、火が元素』という考えが変わることはありませんでした。が、ついに! 疑問を持った科学者が現れたんです。その名もロバート・ボイル。彼は、空気の中には、地球の材料となるもっと細かい何かが隠れているんじゃないか、と考えました」(森田氏)

それを確かめるためにボイルが行った、実験やその結果を紹介。さらにその後も多くの科学者たちが空気に注目し、「空気中にはいくつかのものが存在している」と考えるようになった経緯を説明していきます。

「でも本当に、空気にはさまざまな性質を持ったものが入っているのかな? 今日は実際にここで解き明かしたいと思います! 実験ターイム開始」と森田氏が言うと、子どもたちから「イェーイ!」「やったー」などの歓声が上がりました。

実験タイムを前に盛り上がる子どもたち。  写真提供:探究学舎
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