子どもを「あそびの中で育てる」アート×教育を実践できる簡単な方法

『こころと頭を同時に伸ばすAI時代の子育て』を読破!

ライター:筒井 裕子

非認知能力とアートの実は深い関係性

親の私たちがとるべき対応は分かったところで、それが子どもの才能を伸ばすことにどう繋がるのかまだ曖昧ですよね。
実は、アートという世界を通じて、子どもたちのこころと頭を同時に解放し、強力に「非認知能力」を育成できる、ということにあるようです。(……イマイチ分かりませんよね。育児書を読むと度々登場する非認知能力という言葉)

過去の記事でも触れたことがありましたが、IQやテストで目に見えて分かる能力=認知能力、とは区別される能力で、気質、性格的な特徴のことを言います。
例えば「忍耐力」「自制心」「協調性」「計画性」「好奇心」など。これらは子どもたちが生きていくにあたり、とても重要なものだという科学的根拠が示されています。

この非認知能力をアートを通じて伸ばすことができる、ってことなんですね。
これからのAI時代は自分の得意とすること、好きなことを生かしていく時代。求められるのはIQや学力ではなく、個々のオリジナリティ、非認知能力の部分です。

専門的なアートという小さな入り口から、子どもの中で眠っている無限の可能性・能力を引き出せるなど、にわかには信じがたい話ですけど、確かに、大人の関わり方によっては目の前の創作活動以外の部分にやたら影響をもたらすことになるということは、本書を読んで理解できました。

創作活動から生まれる人生に役立つ生きる力とは

本書の著者である「花まる学習会」の井岡由実さんが主催する子どものための創作ワークショップで子どもたちにいつも伝えているグランドルールが紹介されています。

一見何の変哲もないルールですけど、実は子どもたちのその後の人格に大きく影響するであろう、いわば人生のレシピのようなメッセージが込められていました。要約すると下記の3つになります。

『自由にやりたいようにつくってください』
自由の中でこそ、子どもは本来の力を発揮し、自信を得ていくもの。自由な創作活動を通して自分自身と心ゆくまで対話した子はその後の自分の人生を自ら選択し、デザインしていける。

『うまくいかなくてもくじけない』
葛藤する経験は柔軟に発想して工夫する創造力を与えてくれるチャンス。失敗は失敗じゃない、別の何かが生まれる瞬間! と気持ちを切り替えられる人は、どんな状況でも楽しさを見つけ出して生きていけます。

『時間が来たらおしまい』
人生は有限であり、何事にも終わりがあるもの。たとえ誰かが決めた時間に従わなくてはいけないときでも、時間内に自分のベストを尽くせる人は自ら納得して終わりを迎えられ、自分の人生を自分でつくっているという感覚を持てるのです。それは時間に振り回されないということ。頭とこころが切り替えられる人はたくさんのものを生み出す人。

どうです? 完全にアートの世界を飛び越えていますよね。このワークショップの目的はあくまで創作活動だというのに、真のねらいは人格育成、教育にあるのだから驚きです。「アート×教育」の計り知れない可能性を感じます。

自分の人生を自ら切り開いていける人間になるように

最後に少々余談ですけど、この本の著者が所属する「花まる学習会」の代表、高濱正伸氏は「メシが食える大人」を育てることを掲げ長く教育現場に携わってきた方。『絵も人生も本当に好きなように描ける子どもに』というタイトルで、本書のあとがきを書いています。

高濱氏の教育に持つ考え方は、個性的な印象ながらも私自身とても共感でき、以前から気になる存在の一人です。
教育に関していいことを言う人って共通して、とにかく心から子どもファーストの考えを持っているんですよね。子どもの言う事、する事全てをしっかり尊重して、受け止める。決して大人目線で子どもを見下したりしない。全力で子どもという存在を楽しんでいるように思えます。

経験豊富な大人がいくら助言したって、実際に生きていくのは子ども自身。自分の頭で考え、自分の人生を自ら切り開いていける力を育んであげることが、子どもの幸せを願う親の使命と感じます。
自分らしく生きていける人こそ幸せな人。子どもの、“楽しい!”という心に寄り添い、その子の芽を大切に育てていける親でありたいものです。

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つつい ゆうこ

筒井 裕子

ライター

ViVi、FRaUなどの女性誌出身ライター。小二、年中、2歳の3児の子育てに奮闘中。

ViVi、FRaUなどの女性誌出身ライター。小二、年中、2歳の3児の子育てに奮闘中。