子どもの英語 英会話では身につかない? 日本の親たちの4大誤解

英語教育=英会話ではない! 世界で活躍できる英語力の育て方 #2

バイリンガルスクールTLC for Kids代表:船津 徹

日本人に苦手な英会話から子どもに教えるべきだと思っている親は多いはず。 写真:アフロ

グローバル化が進んでいる現代において、その共通言語である「英語」はこれからの子どもたちには必要な技能です。そのため、幼いころから英語教育に力を入れている親御さんは多いでしょう。

ハワイにてバイリンガルスクールの代表を務め、自身も教鞭をとっている船津徹先生も子どもの可能性を広げ、これからの世の中で充実した人生を送るためにも英語力は重要だと話します。

しかし、日本の英語教育には言語習得としてのプロセスで抜け落ちているフェーズがあり、日本人の親が子どもの英語教育で思い違いしている考えもあるそう。

第二言語としての英語を子どもがよりよく学習するために、親が認識を改めておきたい、英語教育の残念な思い込みについて先生が教えてくれます(全5回の2回目、#1を読む)。

◆船津 徹(ふなつ とおる)
バイリンガルスクールTLC for Kids代表。幼児教育の権威である故・七田眞氏に師事。2001年ハワイ・ホノルルにTLC for Kidsを設立し、英語力、コミュニケーション力、論理力など、世界で活躍できるグローバル人材を育てるために独自の教育プログラムをもって指導にあたっている。2020年までに5000名以上の子どもの教育に携わり、卒業生の多くが世界の難関大学に進学し、各国で活躍している。

世界に通用する子どもの育て方」全4回シリーズを読む

これって勘違い! 子どもの英語教育で日本人の親が思い込んでいる4つのこと

勘違い① 英会話で英語が身につくと思っている

「英語の読み書きはいずれ学校で勉強するから、まずは日本人が苦手な英会話が先!」と考えて、幼いうちから英会話教室に通っている親子は多いはずです。

しかし、「英語教育=英会話」ではありません。日本人の英語力が伸び悩む原因のひとつが、実は「英語教育=英会話」と思っているところです。

確かに、幼いうちから英語に親しめば、外国人との交流や異文化理解を促して、海外や英語そのものに興味を持つきっかけにはなります。多少、リスニング力もつくでしょう。

しかし残念ながら、英会話だけでは思ったような英語力はつきません。#1でもお伝えしたように、英語力をつけるのに重要なのは「リーディング力」です。

大人に比べて言語吸収能力が高い子どものうちから英語の本を読み解く力を育てれば、期待する英語力を身につけられます。

これは韓国の例からも裏付けることができます。英語力を獲得した韓国人の多くが、英会話学校ではなく、英語学院で英語の読解技術や書く技術を学んだ人だからです。したがって、子どもに英語を身につけさせたいなら、幼いうちから英語の読解技術に重きを置くことを私はオススメします。

英会話から社会で使える英語を習得するには、何年かかる?

さて、私が「英語教育=英会話」ではないと指摘する理由は2つです。
① 学習時間が少なすぎるから
② 日常的に英語を使うことがない日本で「会話中心」の学習は技能が定着しないから


例えば①については週1回、1時間の英会話レッスンで考えてみましょう。英語習得の目安となる学習時間は「学校の勉強+1000時間」といわれていますから、+1000時間の部分を週1回1時間の英会話で習得するには、なんと20年ほどかかるのです。

一方、②については、フィリピンやマレーシアのように英語を使う日常であれば実践練習を重ねることができるので現実的です。しかし日本は、日常会話は日本語ですから、実践を重ねることができず、結果的にスキルが身につきません。

だからこそ、リーディング力の向上をオススメします。この力があれば、+1000時間の部分を英会話教室でのレッスンを待たずに自主学習で補うことができますし、英語を読むということは頭の中で会話をしているのと同じ作用があるのです。

英会話ができても、リーディング力がないためにつまずいたケース

日本人の両親を持ち、ハワイで生まれ育ったA君は、日本語も英語もペラペラのバイリンガル。しかし、ハワイの小学校に入学後、担任の先生からA君は英語力が弱いので授業についていけないと連絡がありました。
先生がいうには「会話は問題ないけれど、英語を読み書きする力が足りない」とのことでした。

いくら英語が流暢に話せても、すぐにテキストを読み解く力や文章で自分の意見を表現する機会がきます。そのためにも、最初からリーディング力をゴールに据えた英語習得が有効です。

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