全国6000ヵ所「子ども食堂」コロナ禍の闘いの実態〔千葉発〕

子どもの居場所 ルポルタージュ #1-3 千葉県「TSUGAnoわこども食堂」アフターコロナの心のケアと支援方法

ジャーナリスト:なかの かおり

2年半できていないみんなでの「いただきます」

子ども食堂は、コロナ禍にも増えて、今では全国に6000ヵ所ほどあるといいます。地域にもよりますが、盛んに活動するところもあれば、コロナ禍で食堂が開けない、人手や資金が足りない、といった悩みも聞きます。

「TSUGAnoわこども食堂」がある、千葉市若葉区は、ほぼ中学校区ごとに子ども食堂があり、協力し合っています。例えば、どこかの食堂で人が足りないときは、田中さんが駆けつけておかずを作る日も。

子ども食堂は、曜日を変えて毎日、どこかで開かれているのが理想と言いますが、田中さんに、これからの課題について聞きました。

「この2年半、みんなで『いただきます』ができていません。以前は食事を70食用意し、そのうち子どもは40人ぐらい来て食べ、残りはボランティアが食べて、ほとんどなくなりました。食事は2回にわけて入れ替えして、あとは、わっと遊んで、みんなで楽しい時間を過ごしていました。

今はお弁当に切り替えて、120食を配布しています。数が増えましたが、それだけ、必要とする子が増えたということです。でも、ここで食事する方式に戻す場合、120人は入れない。どうやって回せばいいのか、まだ答えは見つかっていません。

なぜなら、ここは単なる食堂ではないから。食はツールで、食を介したコミュニケーションの場なんです。子どもたちひとりひとりとつながりを持ち、ケアできるように、地域で温かく、優しく見守っていきたいと思います」(田中さん)

子育て世帯が多い地域に支え合う場がもっと増えてほしい

大阪府立大学大学院の山野則子教授が中心となって調査を進めてきた、コロナ禍における子どもへの影響に関する研究(2021年4月発表)によれば、①高いストレスを持つ子どもが約3割強、②休校解除後に学校に行きづらいと感じる子が約3割、③精神的・身体的・その他の負担が増えた保護者が4人に1人、とわかりました。

2020年の休校時から、子育て家庭や、子どもを支援する団体に取材してきた筆者も、同様の話を聞いています。

筆者自身、高齢出産後に、孤独な子育てをしました。娘が小学生になり、預かりやスポーツ活動などで、地域のつながりができてきたと思ったら、コロナ禍に。行くところも、集う機会もなくなって……。

緊急事態宣言が出るたび、子どもの命と生活を支え続けるプレッシャーで、胸のドキドキが止まらなくなりました。

「TSUGAnoわこども食堂」のような居場所があって、気軽に話せる人がいたら、親も子も救われます。このたびの取材で、その温かさに触れ、心からいいなと思いました。

また、ひと手間かけたおやつや、おしゃれな窓ガラスのペイントのように、気分が上がる仕掛けも、今時のママには大事。都心部でこうした場を作るのは簡単ではないかもしれませんが、全国各地で子ども食堂やフードパントリー、学習支援が始まっています。

親子が歩いて行ける距離に、1つはできてほしい! 誰かのために何かしたい、という人が活躍できて、助けが必要な人と支え合う場が増えますように。

取材・文/なかのかおり

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なかの かおり

ジャーナリスト

早稲田大参加のデザイン研究所招聘研究員。新聞社に20年あまり勤め、独立。現在は主に「コロナ禍の子どもの暮らし」、「3.11後の福島」、「障害者の就労」について取材・研究。39歳で出産、1児の母。 主な著書に、障害者のダンス活動と芸能界の交差を描いたノンフィクション『ダンスだいすき!から生まれた奇跡 アンナ先生とラブジャンクスの挑戦』、『家庭訪問子育て支援ボランティア・ホームスタートの10年「いっしょにいるよ。」』など。最新書『ルポ 子どもの居場所と学びの変化: 「コロナ休校ショック2020」で見えた私たちに必要なこと』が2022年10月22日発売。 講談社FRaU(フラウ)、Yahoo!ニュース個人、ハフポストなどに寄稿。 Twitter @kaoritanuki

早稲田大参加のデザイン研究所招聘研究員。新聞社に20年あまり勤め、独立。現在は主に「コロナ禍の子どもの暮らし」、「3.11後の福島」、「障害者の就労」について取材・研究。39歳で出産、1児の母。 主な著書に、障害者のダンス活動と芸能界の交差を描いたノンフィクション『ダンスだいすき!から生まれた奇跡 アンナ先生とラブジャンクスの挑戦』、『家庭訪問子育て支援ボランティア・ホームスタートの10年「いっしょにいるよ。」』など。最新書『ルポ 子どもの居場所と学びの変化: 「コロナ休校ショック2020」で見えた私たちに必要なこと』が2022年10月22日発売。 講談社FRaU(フラウ)、Yahoo!ニュース個人、ハフポストなどに寄稿。 Twitter @kaoritanuki