【子どもの嘔吐・下痢】ホームケアの新常識 「絶食させる」は間違い! “お粥より普通の食事”がいい理由〔医師が解説〕

令和の子どもホームケア#2~嘔吐や下痢への対処法~

小児科専門医:森戸 やすみ

子どもに多い不調のひとつ、嘔吐や下痢。子どものころ、吐いたり下痢をしたりすると、親から「食事はやめて、水分だけにしておこうね」と言われたママパパも多いのでは? 

ひと昔前はそうした症状があるときに絶食するのが常識でしたが、現在はどのような対応がよいとされているのでしょうか。森戸やすみ先生に伺います。
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ウイルスや細菌などによって消化管に炎症が起こり、吐いたり下痢をしたり、お腹が痛くなったりする「胃腸炎」。「お腹の風邪」「嘔吐下痢症」などと呼ばれることもあります。冬から春にかけて多く見られる「ノロウイルス感染症」、毎年乳幼児に流行する「ロタウイルス感染症」も胃腸炎の原因になります。

従来は胃腸炎になった場合、何も食べさせずに水分補給だけすればいいと言われていました。「消化管を休ませないと、胃腸炎は治らない」と考えられていたためです。

ただ、子育て中の親御さんなら経験があると思いますが、子どもはちょっとしたことでよく吐きます。小さいお子さんだとげっぷがうまく出せないだけで吐きますし、鼻水や咳とともに吐いたり、お腹が張ったり体が揺れたり、食べすぎ・泣きすぎで吐いてしまうこともあります。

下痢も同じで、水分の摂りすぎやお腹の冷えによって下痢になることも。体が成長する時期、嘔吐や下痢があるたびに食事や授乳を中断していては、体重が減ってなかなか戻らないリスクがありました。

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今の常識は「食べられるなら食べさせる」

現在、胃腸炎の対処法として一般的なのが「食べられるなら、早期に普通の食事を食べさせるべき」という考え方です。

ある臨床研究によると、絶食した場合と治療食を食べさせた場合、早期に普通食を再開させた場合では、嘔吐や下痢の頻度・程度に差はなく、治るまでの期間も変わらないことがわかりました。

それどころか、早くに普通食を再開したほうが、回復期の体重増加がよいことが明らかになっています。水分だけを与えて絶食していると、かえって消化管の機能の回復を遅らせてしまうのです。

こうした考え方は2000年代後半ごろから医療関係者の中で言われるようになり、現在、ネット上で公開されている『小児急性胃腸炎診療ガイドライン2017』にも記されています。

エビデンスに基づいた子どもの腹部救急診療ガイドライン2017/日本小児救急医学会診療ガイドライン作成委員会

ガイドラインでは、乳児の場合、母乳は飲みたい分だけ飲ませ、ミルクは治療用ではなく、通常のミルクを薄めずに普段どおり与えることを推奨しています。離乳食から普通食に進んでいるなら、離乳食に戻す必要はありません。

基本的には、お子さんが食べたいものを食べさせて大丈夫。よく胃腸炎のお子さんにお粥を作って食べさせる親御さんがいますが、早く普通食にしたほうが消化管の回復が早いのですから、お粥じゃなくても構いません。もちろん、お子さんがお粥のほうが食べやすかったり、好きだったりしたらあげてください。

心配なら脂肪の多い肉や魚、繊維類の多い野菜類、糖分の多いジュース、酸味の強いフルーツなどは避けて、消化のいいものをあげるといいでしょう。

ただし、吐き気があって食欲のない子、食べてもすぐに吐いてしまう子に無理やり食べさせるのは禁物です。だいたい激しく吐くのは半日から丸1日程度なので、お子さんが「お腹が空いた」「何か食べたい」と言ったり、食欲が出てきた素振りを見せたら与えはじめましょう。

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