【防災企画】赤ちゃんが非常時に困らない「乳児のローリングストック」とは

子どものための「防災と備蓄」前編〜1歳までの乳児編〜

料理研究家:井上 真里恵

そのまま使えて防災時に役立つ液体ミルク。2016年の熊本地震時に注目され、日本では2018年に初めて製品化された。 写真:須永久美
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台風、大雨、大雪、洪水、土砂災害、地震、津波、火山噴火など、日本は自然災害の多い国です。自宅に防災食などを準備している人も多いでしょう。

近年は、ふだんから少し多めに食材や缶詰など日持ちする加工品を常備しつつ、日常の食事に取り入れ、使った分だけをこまめに買い足していく「ローリングストック法」が広まっています。

防災食の備蓄でつい見落としがちなのが子ども用ごはんのこと。東京都防災部発行のパンフレット「『日常備蓄』で災害に備えよう」で防災レシピを提案している、料理研究家の井上真里恵さんは「非常時は子どもも精神的に不安定になりがち。だからこそ、食べ慣れたものを備蓄しておくべき」と話します。

子どものためにどのような準備をしておけばよいのか? 前編では、生後1歳までの赤ちゃんを対象に、ふだんから実践できる防災食の備蓄法を井上真里恵さんに伺いました。

料理研究家の井上真里恵さん。自身も6歳女児の子育て中。Zoomインタビューにて。

いつもの食事で慣らすことが「赤ちゃんの防災訓練」に

災害などの非常時に備え、赤ちゃんのためには何を準備したらよいのでしょう?

「備蓄するものは授乳期と離乳期で違ってきます。以下『赤ちゃんのための防災食』に記したような食料等を準備しておくとよいでしょう。

非常時は、いつもとは違う雰囲気に赤ちゃんも緊張しがち。そこで見慣れないものを出してもなかなか食べてくれません。

いずれも蓄えておくだけでなく、ふだんから食べさせて味に慣れさせておくことが大事です。これこそ赤ちゃんの防災訓練ですね。

どのくらいの頻度であげるかは、お子さんの特性にもよるので、様子をみながら数日に一度チャレンジしてみて。離乳食なら好みのものを探しておくとよいでしょう」(井上さん)

●赤ちゃんのための防災食●
<授乳期>
・ミルク(できれば液状、粉や固形の場合は調乳用水も備蓄) 
・哺乳瓶
・紙コップまたはガーゼ(哺乳瓶の消毒や洗浄ができないときに使用。飲ませにくいときは清潔なガーゼに湿らせても)
<離乳期>
・そのまま食べられる瓶詰めやレトルト食品
・食べ慣れているおやつ
・麦茶、好みのジュース

「食料の備蓄量の目安は3日分。食べたり飲んだりしたら、また新しいものを買い足しておく“ローリングストック法”で日常的に与え続けるのがおすすめです。

母乳で育てているときは、ママの栄養補給食も忘れずに準備しておきましょう。疲労や緊張感で、万が一母乳が出なくなることも考えて液体ミルクに慣れてもらうのも一案です」(井上さん)

ベビーフードがないときは大人の食品をアレンジ

避難所などでは非常食も広く配られますが、家に備蓄しておくべき食料品は何でしょう?

「避難所はおにぎりやパン、カップ麺など、主食の配布が多く栄養が偏りがちなので、家ではビタミンやミネラルを補給できるおかずやジュースを多めに用意しましょう。

最近はコンビニエンスストアなどにもレトルトおかずが豊富にあり購入できます。離乳期のお子さんであれば、大人用の備蓄品をアレンジしてごはんを作ることもできます」(井上さん)

大人用にもレトルトや缶詰など、日持ちする食品をローリングストック法で準備しておきましょう。野菜や肉、魚などバラエティをつけておくのが、飽きずに食べられるポイントです。

「子ども用のおかずなら煮物がおすすめ。カボチャやイモ類がつぶしやすく食べやすいです。

魚が食べられる時期なら、缶詰やレトルトの煮魚をほぐしておかゆに混ぜると即席の離乳食ができあがります。使うカップは清潔に、ない場合は紙コップなどを活用してください」(井上さん)

レトルト煮物(かぼちゃなど)を細かくつぶし、レトルトおかゆと混ぜ、お湯で食べやすい濃度に薄めたら「即席離乳食」ができあがる。 写真:井上真里恵
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